WE Love 女子サッカーマガジン

次のWEリーグへ 一つになるために新ビジョンが必要だった三菱重工浦和レッズレディース

三菱重工浦和レッズレディースの決意をレッズレディース本部長 藤倉佳子さんに聞いた

今シーズンの三菱重工浦和レッズレディースはWEリーグ三連覇、そして、初代のAWCL(女子ACL)チャンピオンの座を狙っています。2024年9月24日に開催された202425 SOMPO WEリーグ 第2節、ホーム開幕となったINAC神戸レオネッサ戦には3千551人のファン・サポーターが集まりました。

若いパワーがみなぎるホーム開幕戦に

浦和駒場スタジアムのバックスタンドの一角には小中生のチームが招待されたため、応援の声に若いパワーがみなぎっていました。その音はメインスタンドの記者席にまで届きました。

開幕したばかりの今シーズンですが、すでに三菱重工浦和レッズレディースに変化を感じた人はいると思います。何が変わったのか、なぜ変えたのか……レッズレディース本部長を務める藤倉佳子さんにお聞きしました。

ファン・サポーターとの接点を拡大する三菱重工浦和レッズレディース

試合前、試合後、丁寧なファンサービスに驚いた

「今シーズンに新しいファンサービスを始めました。今回はウォーミングアップで選手が入場する際に実施した『選手サイン入りボールをプレゼント!』、そして、試合後の場内一周のときの『選手とハイタッチしよう! 』は、特にお子さんに喜んでいただけたと思っています。選手と触れ合うことが次にスタジアムに来てもらうきっかけになればと思います。いろいろな方のご理解を得ながら、少しずつブラッシュアップしていければと思っています。」

三菱重工浦和レッズレディースは、早速、ホーム開幕戦で二つのファンサービスを開始していました。

お子さん向けを重視したファンサービスで新たなファン層の開拓を狙う

これまでの試合後は、選手・スタッフからファン・サポーターへの挨拶の色合いが強い印象でしたが、今シーズンからはファンサービスでありファン・サポーターとのコミュニケーションの意味を強めました。    

「運営スタッフの負担は増えるのですが、子どもたちがすごく喜んでくれている顔を見ると、私たちも癒されます。レッズレディースなりの方法でやっていきたいと思います。

浦和駒場スタジアムは、ちふれさんのような広いスペースがスタジアムの目の前にある施設ではありません。ベレーザさんのようにピッチとスタンドが近いわけではありません。メインスタンドの位置は高いので、グラウンドレベルからファン・サポーターにサインをすることもできない。でも、このスタジアムでできることを見つけて進めていきたいです。」

20周年の節目に新ビジョン「Beyond WE!みんなで想像の先へ」を発表

ホーム開幕戦から遡ること約1ヶ月、2024年8月30日にレッズランドで行われた開幕会見の冒頭で田口誠代表が登壇しました。三菱重工浦和レッズレディースの新ビジョン「Beyond WE!みんなで想像の先へ」を発表したのです。なぜ、新ビジョンは必要だったのでしょうか。新ビジョンとな何なのでしょうか。振り返ってみましょう。

浦和レッズ 田口誠代表

三菱重工浦和レッズレディースの新ビジョン

Beyond WE!みんなで想像の先へ

 

超えよう。今までの自分たちを。
超えよう。すべての人の想像を。
超えよう。WEリーグをアジアを。

女子サッカーだからこそ生み出せる
驚きと歓喜があるのだから。
誰よりも強く楽しくかっこよくいるのが、
レッズレディースなのだから。

さあ、選手、スタッフ、ファン・サポーター、
レッズレディースに関わるすべての人たちで、
女子サッカークラブ以上の存在へ。
まだ世界が見たことのない
スポーツの未来をひらけ。

 

開幕会見で発表された新ビジョン

さいたまレイナスFCが浦和レッズレディースになって20年

新ビジョン「Beyond WE!みんなで想像の先へ」は、今シーズン末でチーム発足20周年を迎える節目に生まれました。1998年に誕生したさいたまレイナスFCの運営が、2005年に浦和レッズに移管され20年が経つのです。県立浦和西高校のグラウンドを借りる等、県内を転々としながら週6日のトレーニングを続けてきた市民チーム(とはいえ、すでにタイトルを獲得していた)は、その年から浦和レッズの傘下の女子チームとして活動をはじました。今では、三菱重工浦和レッズレディースはWEリーグ屈指の強豪となりました。日本を代表する女子サッカーチームとして世界と戦う機会も掴み取りました。

三菱重工浦和レッズレディースは、もっと大きな存在になれるはず

ただ、それは女子サッカー界の中だけのポジション評価です。近年、多様な価値が認められる時代が到来しましたが、100億円企業の浦和レッズの中で三菱重工浦和レッズレディースとしての収入は4億円以上程度。事業規模だけではなく、女子サッカーの存在価値、そして、競技人口をもっと大きくしていかければなりません。なぜなら、そのポテンシャルが三菱重工浦和レッズレディースにはある。そして、社会からの要請が必ず強まってくるからです。

田口代表のプレゼンに込められた「女子サッカークラブを超えていく」という意志

田口代表は新ビジョン「Beyond WE!みんなで想像の先へ」発表の背景に強い決意があることを示しました。

「到達したいゴールに向けて、あらゆるステークホルダーの皆さんと一体になって進みたいと考えて作成をいたしました。このビジョンには、WEリーグを牽引し、アジアや世界を目指し、女子サッカークラブを超えていくという意志を込めております。

また、我々だけではなく、レッズレディースに関わる全ての皆さんと共に、枠組みにとらわれず様々なチャレンジを行い、想像を超えたものを実現していく思いを表現いたしました。

女子サッカー界においては、事業規模や環境など厳しい状況であるといわれておりますが、そのような状況を打破し、男女関係なくスポーツ界全体に影響力のある存在になることを目指しております。

20周年という節目の年に、先人が築いてきたベースに、新たな思いを込めて、前進をしていきます。三菱重工浦和レッズレディースは浦和が掲げる理念(浦和レッズ理念)を、女子サッカーを介して体現する存在であります。

レッズの理念には、スポーツの感動や喜びを伝え、次世代に向けて豊かな地域社会を作るという宣言(浦和レッズの宣言)があります。また、あらゆる分野でアジアNo.1を目指すというビジョンも含まれております。レディースも男子トップチーム同様、これらを体現し、女子サッカー界を牽引するリーディングチームになると強い意気込みのもとに、そこに到達するためには一体となれるワードが必要になると考えて、新しいビジョンを作成いたしました。」

浦和レッズレディース(当時)は、なでしこリーグ1部で最後に戦った2020年シーズンの観客数がリーグ1位でした。202324 WEリーグの入場者数はサンフレッチェ広島レジーナ、セレッソ大阪ヤンマーレディースに次いで3位。藤倉さんはレッズレディース本部長として「浦和レッズの優位性がなくなってきている」強い危機感を抱いていました。

20周年の節目に加え、こうした状況も、三菱重工浦和レッズレディースが新ビジョンを導入することにつながっています。

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