JFAアカデミー福島出身 山守杏奈さん(大宮V) WEリーグのフィジカルコーチは何がベストなのかを探す仕事
山守杏奈フィジカルコーチが考える女子サッカーの「強化」と進化
「サッカー王国・埼玉でサッカーに関わることができ嬉しく思います。サッカーにはインテリジェンスがもちろん大事ですが、一方で今シーズンは、アグレッシブなサッカーで上位に食い込んでいくためにフィジカルも『強化』しながら進化しなければならないと思います。最後まで戦うことができるチームになれるようにサポートしたいと思います。」
今シーズンから大宮アルディージャVENTUSのフィジカルコーチとなった山守杏奈さんは少し変わった経歴の持ち主です。小学生まで愛知県で過ごし、中学生、高校生の6年間はJFAアカデミー福島で学んだのです。同期は成宮唯選手(INAC神戸レオネッサ)の第2期。大宮アルディージャVENTUSの主将・乗松瑠華選手(第3期)の1学年先輩となります。つまり、世界レベルで活躍する選手を輩出してきた、日本女子サッカー界のエリートコースを歩んできました。しかし、若くして選手を引退してしまいます。
乗松選手は、山守コーチについて、このように話しています。
「たくさんお世話になりました。すごく長い期間に一緒にプレーして生活し、いろいろな思いもしてきました。(当時とは)違う選手とスタッフ(の立場)ですけれど、こうやって、また一緒にチームでプレーできることが嬉しいですし、なんだかすごく不思議な感じもあります。」
小学生のとき、名古屋FCレディースで山守さんと一緒にプレーした吉野有香さん(KYOTO TANGO QUEENS代表)は当時の山守さんを「サッカーが上手いし賢そうだけど、笑顔がとってもかわいい印象」と思い出します。オルカ鴨川FC 取締役社長 北本綾子さんは現役時代の印象をひと言「実直スピードアタッカー」と表現します。まっすぐな性格、そして、持ち味のスピードが印象に残っていると言います。
オルカ鴨川FCで現役生活を終えた山守さんは、なぜ、フィジカルコーチになろうと思ったのでしょうか。そして、フィジカルコーチをどのような仕事と考えているのでしょうか。何が人生の転機になったのかについても教えていただきました。
若い選手にはフィジカル面の進化や引き出しを増やすことが必要
—ご自身のお仕事を初対面の方に説明される際、どのような表現をされますか?
山守—「フィジカルコーチです」とお伝えした上で「強化の部分に携わっています」と説明しますね。
—やはり、ご自身の中では「強化」がポイントですか?
山守— そうですね。本来、トップチームのお仕事としてはコンディショニングがメインになると思います。しかし、WEリーグ自体が世界と戦うためにもっと強くなっていかなければいけないリーグです。それから、大宮アルディージャVENTUSには若い選手が多いので今シーズンは「強化」をメインにやっていくべきだと思っています。
今のままの力ではトップ3に簡単には入れない。それは、おそらく全員が認識している。チーム力の向上にはフィジカルがベースになってくる部分があるのですが、何もしなければ力の維持もできないと思います。むしろ退化してしまう。だから、フィジカル面の進化や「強化」の引き出しを増やすことが必要だと思っています。
WEリーグの誕生が人生を変えた
—山守さんは、なぜフィジカルコーチへ進む道を選んだのでしょうか?
山守— プレーヤー時代の私は、所属クラブであまりフィジカルコーチと関わったことがありませんでした。現役生活の最後に所属したオルカ鴨川FCでフィジカル面での丁寧な指導を受け、フィジカルコーチの仕事を知りました。オルカ鴨川FCでプレーした2年間は、私にとって、とても意味のある2年間でした。
オルカ鴨川FCで得られた貴重な経験
—ちょうど、WEリーグが始まる直前の2020年シーズンに26歳で選手を引退されましたね。
山守— 私はやるからにはトップを目指したいプレーヤーでした。何度も怪我をしてしまい、最後は、なでしこリーグ2部(当時)のオルカ鴨川FCでしっかりプレーして引退しようと思っていたのですが、プレーすること自体は楽しくて、やはり引退の決断をすることができませんでした。でも、明確な目標がないまま良いプレーを続けられるような性格ではなかったので、メンタル面の難しさを感じていたときに、日本に女子プロサッカーリーグができると聞きました。
すると、日本のトップリーグでプロのコーチとして活躍したいという気持ちが芽生えました。そこで、私は選手を引退することを決めました。私にとって、WEリーグが生まれたことは、とても良かったと思います。大きな転機になりました。
筑波大学で学べたことが大きい
—フィジカルトレーニングについて大きく影響を受けた事柄はありますか?
山守—筑波大学に所属していた際に、初めてフィジカルトレーニングを知り、多くの学びを得たことでサッカー選手として、アスリートとして大きく成長することができました。筑波大学で学んだ影響がすごく大きかったと思います。
(残り 2191文字/全文: 4672文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ