WE Love 女子サッカーマガジン

WEリーグ5位以上、観客動員2千人 もっと激しく速く美しく ちふれASエルフェン埼玉が次の挑戦へ

女子サッカーの新たな魅力をどのように育て、誰に伝え集客していくのか WEリーグ4シーズン目が始まる

昨シーズンに躍進を遂げたちふれASエルフェン埼玉が、今シーズンは更なるステップアップを誓います。2024年8月17日に熊谷市立文化センター文化会館で202425ちふれASエルフェン埼玉新体制発表会を開催。目標と新スローガンを披露しています。発表会の終了後に、岸みのり選手、吉田莉胡選手、そして、代表取締役社長の鈴木康之さんに、今シーズンの抱負をお聞きしました。特に、鈴木社長には、WEリーグ運営とクラブ経営の課題にまで踏み込んでお話していただきました。

ファン・サポーターの熱気と選手の情熱がクロスした

「ドーベルマンディフェンス」に加わる「美しく」とは何なのか?

202324 WEリーグでちふれASエルフェン埼玉は変身しました。池谷孝監督が就任し「ドーベルマンディフェンス」を武器に力強さを身につけました。5バックで守備ブロックを形成。奪うと速攻。カウンターアタックから得点を重ねました。2シーズン連続最下位だった順位は8位に浮上。皇后杯 JFA第45回全日本女子サッカー選手権大会はベスト4に進出しています。

「ドーベルマンディフェンス」を支える最終ラインのファイター・大沼歩加選手の愛称は「ヌーマン」

今シーズンはリーグ戦の5位以上、そして、初タイトルを狙います。 観客動員に関しては1試合あたりの平均入場者数2千人以上を狙います。主将は、昨シーズンに続き吉田莉胡選手。副主将はベテランの瀬戸口梢選手と大卒2シーズン目(1年目)の栃谷美羽選手が務めます。

化粧品のちふれのサポートで活動しているチームということもあり、ちふれの美容スタッフが施したメイクで照明に美しく浮かび上がった3選手の姿は凛々しく、かつ美しく感じました。

主将の吉田莉胡選手(中央)、副主将の瀬戸口梢選手(左)と栃谷美羽選手(右)

リーグ戦5位以内とタイトル獲得にために必要なこと

まず、リーグ戦の5位以上と初タイトルという目標について確認していきましょう。202324 WEリーグはビッグ3(三菱重工浦和レッズレディース、INAC神戸レオネッサ、日テレ・東京ヴェルディベレーザ)にアルビレックス新潟レディースを加えた上位争いとなりました。ちふれASエルフェン埼玉は第18節まで5位と大健闘していました。最終順位が8位になったのは、そこから5連敗したからです。今シーズンにリーグ戦の5位以上を目標とする資格は十分にあります。

昨シーズン後半から怪我で離脱している祐村ひかる選手も元気な笑顔を見せた

池谷孝監督は新たな戦い方を加えると宣言

池谷監督は新体制発表会の壇上で、このように話しました。

「昨シーズンは激しく、速くを追求して順位を上げることを考えました。今シーズンは『美しく』の道も歩みたいと思います。ボールをつないで崩してシュートを打つサッカーにもチャレンジします。」

客席が少しざわめきました。新たな戦い方の宣言です。新体制発表会の終了後、吉田選手と岸選手に聞いてみました。「美しく」とは何なのか?

パスをつないだり蹴ったり、状況に合わせた変幻自在なサッカーの追求が信条と語っていた池谷孝監督

「ドーベルマンディフェンス」で評価を高めた岸みのり選手

昨シーズンの岸選手はディフェンダーとしての評価を高めました。「ドーベルマンディフェンス」は厳しく食らいつくディフェンス。一対一の局面で攻撃的にボールを奪いに行くことが必要です。このやり方が、岸選手の特性にマッチしました。

「一対一でボールを奪う場面はすごく増えました。守備デュエルの数が上位にランクインしています(1位から3位はちふれASエルフェン埼玉の選手で岸選手は3位)。昨シーズンは、私の良さが出せるサッカーだったと思います。得意とするプレーは粘り強い守備です。一対一のところで交わされることもありますが、そうなっても最後まで食らいつく。それを自分の持ち味としているのを見てほしいです。

トップレベルの選手と対峙すると『自分はまだまだだな』と感じることも多いです。でも、そうした経験をすると『練習を頑張らなきゃ』と思います。アジリティを速くするとか、もっと筋力つけるとかトレーニングに活かされていきます。」

抜群のトーク力で客席を沸かせる岸みのり選手

岸選手は、努力を重ね、 WEリーグ3シーズンの全試合に出場しています。そして、今シーズンはチームとしても、さらなる進化の必要性を感じている様子でした。 

「継続しなければいけないところと、新たにチャレンジしていくところがあります。チャレンジしないと昨シーズンより上に行けない。新しい挑戦のために、今、この時期に必死で頑張っています。選手はいろいろコミュニケーションをとって、どうしたら良いのかを話し合っています。」

若き闘将・吉田莉胡選手は自ら希望し主将を継続

吉田選手は、今シーズンも主将としてチームを牽引します。WEリーグ1シーズン目は、あどけなさの残るヤングプレーヤーとして注目を集めていましたが、昨シーズンの途中からは闘将の顔となりました。背番号10も背負い、周囲からは重圧を心配されましたが、本人は「楽しかった」と語ります。プレッシャーを感じることはなかったそうです。今シーズンも監督から依頼があれば主将を務めようと心に決めていたところ依頼があり、2シーズン連続の主将就任となりました。選手のコミュニケーションの中心となっています。

吉田莉胡選手は自分の良さを「見かけによらず泥臭いプレー」と話す

吉田選手に「もっと激しく、速く、美しく」の「美しく」の意味を聞くと、少し笑いながら謎を漂わせ「まだちょっとわからない」と答えました。

「昨シーズンは守備の粘り強さで失点が減りました。少ないチャンスをショートカウンターにつなげて決め切ったゲームが自然と結果につながっていきました。シンプルに素早く攻撃するサッカーがチームに浸透したからだと思います。

今シーズンは池谷さんがパスをつないで崩すサッカーもチームに流し込んでいる。昨シーズンとは違う強みも出てくると思います。

オフにはトレーニングマッチを数多くやっています。いろいろなパターンで得点シーンが生まれています。毎日の練習の成果が出てきました。開幕後も、そういうサッカーができたら楽しいと思いますね。

違うフォーメーションも試しています。対戦相手のやり方によるとは思いますが、こちらから積極的に前から行くこともできるチームになると思います。」

十八番となった5バックだけではなく、複数のシステムで戦うことになるかもしれません。「美しさ」が加わる池谷EL埼玉の2シーズン目が始まります。なお、吉田選手の個人的な今シーズンの目標は記事の最後でご紹介します。

ファン・サポーターにハイタッチしてお見送りする選手たち

独自性を打ち出すクラブ運営 WEリーグの抱える課題も

ここからのお話は観客動員とクラブ経営に関してです。代表取締役社長の鈴木康之さんにじっくりとお聞きしました。

鈴木さんは2023年11月1日に代表取締役社長に就任しました。これまで、ちふれホールディングス株式会社の取締役としてちふれASエルフェン埼玉に関わってきました。例えば、ちふれASエルフェン埼玉のクラブハウスとして使用されている「ちふれ化粧品飯能研修センター」の誕生は、鈴木さんが携わったプロジェクトの一つです。

株式会社エルフェンスポーツクラブ 代表取締役社長 鈴木康之さん

「私が代表になる前からスタッフは一人ひとり一生懸命やってくれていました。そこで、就任後に2つの決意を発表しました。『どこのクラブよりも強固なワンチームになる』と『どこのクラブよりも果敢にチャレンジする』です。実際に目に見える形で成果が出てくると、皆、自分のやることに自信を持てるようになります。『こうやれば結果はついてくるんだ』と感じられる状況をなるべく早く作りたいと思っています。 

入場者数の目標は平均2千人以上 

WEリーグは2シーズン目(202223 YogiboWEリーグ)に入場者数を減少しました。しかし、ちふれASエルフェン埼玉は数少ない入場者数が増えたチームでした。平均1千39人から1千211人に増加します。その原動力はファミリー層の増加です。しかし、昨シーズンにちふれASエルフェン埼玉は入場者数を平均968人に減らしてしまいます。

今シーズンは目標を倍増の平均2千人以上と定めました。どのように達成しようとしているのでしょうか。

熊谷駅の階段の中央には大沼歩加選手のビジュアル

熊谷市での活動をもっと増やす

「熊谷市での活動を増やすことが第一歩だと思います。まだまだ地域での活動が足りていない……ということは、まだ、熊谷市に開拓の余地があるはずです。

ちふれASエルフェン埼玉はWEリーグへの参入によりホームゲームを熊谷市で開催することになりました。熊谷市での活動の歴史が浅く、当初は、熊谷市内の街角でちふれASエルフェン埼玉の名前を見ることはあまりありませんでした。

国民的なスター選手や新スタジアムがあるわけではありません。しかし、ちふれASエルフェン埼玉には3シーズンで確立してきた、ローカルコンテンツとしてのユニークな魅力があるはずです。

接客水準とスタジアムの楽しさは武器になる

では、何が必要なのでしょうか。試合運営に関して来場者からの評判が高いのがちふれASエルフェン埼玉の特徴です。

(残り 2520文字/全文: 7059文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ