ラオスへ移籍 女子ACLに挑む上野紗稀選手(ヤング・エレファンツウィメン) 「これはやばいぞ走らなきゃ」とマインドが切り替わったジェフ魂
まだ出会ったことがない新たな「感情」との出会いを求めラオスに旅立った上野紗稀選手(ヤング・エレファンツウィメン)の現在
2024年6月23日、SNSがラオスで賑わいました。ジェフユナイテッド市原・千葉レディースが上野紗稀選手の移籍先を発表したのです。発表されたチーム名はヤング・エレファンツウィメン。今シーズンから始まる女子ACL(AFC 女子チャンピオンズリーグ)のプレリミナリーステージ(日本では「プレーオフ」や「予備予選」と呼ばれることもある)に出場するラオスのチャンピオンチームです。しかし、それ以外に情報がありません。
その後、柳澤紗希選手(アルビレックス新潟レディース)、曽根七海選手(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)もヤング・エレファンツウィメン入りが発表され、俄然、ラオスとヤング・エレファンツウィメンに注目が集まりはじめました。
上野紗稀選手はnote( https://note.com/saaakiiincho )に最新情報を掲載しています。
すでに日本人男子選手が活躍しているラオスプレミアリーグ
ヤング・エレファンツウィメンが、なぜ3人の日本人選手を獲得したのか、ラオスのサッカー熱はどのようになっているのか、上野選手に直接お話を聞く前に、その疑問に答えてくれた人がいます。西原拓夢選手です。
ヤング・エレファンツのタイトル獲得に貢献した西原拓夢選手
西原選手は東南アジア各国やマルタでプレーしてきたプロサッカー選手。今シーズンからヤング・エレファンツ(男子チーム)に復帰してプレーしています。以前にもヤング・エレファンツでプレーしており(ヤング・エレファンツ初の外国籍選手)、 2020年にラオスプレミアリーグのベスト11を受賞。ヤング・エレファンツのラオスFAカップ優勝に貢献し大会MVPに輝いています。 現在、ラオスプレミアリーグでは複数の日本人選手が活躍しています。
「4年前に所属していたときから東南アジアのファンはJリーグを追いかけていました。日本人のファンがプレミアリーグを追いかけるような感じです。アジアの中でJリーグは特別な存在。今も、そのような位置づけだと感じます。僕に対しても『僕がいたら点をとってくれるだろう』みたいな期待をされる雰囲気はありますね。」
ACLの人気が女子サッカーにも波及した
西原選手は、自らのヤング・エレファンツへの復帰・移籍交渉をしている際に、クラブの首脳から『ヤング・エレファンツウィメンが日本人選手を3人獲得したいと考えている』という話を聞きました。
「今シーズンから女子ACLが始まります(昨シーズンはプレ大会)。『ヤング・エレファンツウィメンはグループステージに進出したいんだ!』という雰囲気がクラブの中にありますね。なかなか手が届かない大会ですが、女子はプレリミナリーステージに出場が決まり勝ち進むチャンスがあるので力を入れようとしている感じがします。」
東南アジア各国で開催される男子のACL(グループステージ)は入場者数が多く、大会の高い価値を感じます。女子の大会であっても、その価値は変わらず、期待が大きいのかもしれません。
女子ACLを目指し12人から始まった上野紗稀選手の進む道
リモート取材に応える上野選手は日本の気温が各地で40度を超えていることを知ると「こちらの方が涼しいかも知れない」と話しました。ラオスの日差しは突き刺すように鋭いときがありますが、湿気は少ないそうです。
—女子ACLの組み合わせについては、どの様な感想をお持ちですか?
上野–プレリミナリーステージを勝ち上がったときにグループステージで三菱重工浦和レッズレディースと対戦できる組になりたかったですね。そこだけは残念でした。
食事に問題はないが道がつながっていない……
—食事や生活で戸惑いはありませんか?
上野– スーパーマーケットで購入しても外食しても、食事の面では困ることはありませんね。ラオスには韓国料理や日本食のレストランもあります。
交通に関しては「日本と全てが違う」と言っても良いくらい違います。舗装されていない土の道も多いですし、片側2車線なのに、その中央を走っている車もいます。バイクで移動するのが一番早いです。そのため、こちらに来て、初めてバイクに乗るようにるようになりました。車に突っ込まれそうになったり、砂利道で転んだりすると危険なので安全運転を心がけています。
一番の衝撃は、グーグル・マップでは太い道がその先もつながっているのに実は行き止まりみたいな道があることです(笑)。
困難な状況を嘆くよりも前進を選ぶプロとしての自覚
—練習に合流して戸惑ったことはありますか?
上野–プレリミナリーステージは7日間で3試合の過密日程です。でも、初めて練習に合流したら選手が日本人3人を入れても12人しかいない。「これは高校生のとき以来のハードな大会になるぞ」と思いました。この状況で、どのようになっていくのだろう?と思いました。でも、やるしかないなと思い笑いが出てしまいました。
すると「やばい、これはやばいぞ走らなきゃ」とマインドが切り替わり、日本人3人は毎日の練習後に素走りを加えるようになりました。
—他の選手を補うぐらい3人が走らないと勝てないぞという気持ちで走り始めたのですか?
上野–そうですね。まさにそのような感じです。カバーは全部、私たちがやるみたいな感覚で練習を始めていました。その後、徐々にメンバーは増えてきました。
私たちは、練習前もグラウンドを走ったり、ストレッチをしたりしています。それを見て影響された選手が一緒に走ったり、ストレッチしたりするようになって、練習開始時刻の少し前に集まることが習慣づいてきました。合流した当初は練習開始時刻に集合できない選手が選手が何人もいたのですが、次第に、ほとんどの選手が練習開始時刻までに集合するようになりました。
サポーターの声で気がついたまだ触れたことのない「感情」の存在
—なぜ、ラオスに移籍しようと考えたのでしょうか?なでしこジャパン(日本女子代表)でのプレー経験もある上野選手が移籍した理由や経緯が気になります。
上野– 最後はジェフユナイテッド市原・千葉レディースで引退すると決めて、昨シーズンに三菱重工浦和レッズレディースからジェフユナイテッド市原・千葉レディースに移籍しました。リーグ通算150試合出場を目指して取り組んだシーズンでもありました。
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