世界は手の届く場所にある なでしこジャパン パリ五輪宿題の答え「主導権をとるための柔軟性が必要に」
怪我、発熱、延長戦……総力戦だったパリ五輪をなでしこジャパンが羽田空港で振り返り女子サッカーの未来を語る
パリ五輪準々決勝は強敵・アメリカ女子代表を相手に120分間を戦い惜敗となりました。勝てる試合だったかもしれないし、どうしても勝てない試合だったのかもしれません。残念ながら、メダル獲得はできませんでした。
2024年8月5日、羽田空港になでしこジャパン(日本女子代表)は帰ってきました。その表情には、全てを出し切った疲労感が滲んでいました。 池田太監督の就任で始まった五輪の旅は帰国をもって終わりました。
選手村で起こったアクシデント
相次ぐ怪我人、第2節を前にパリで選手村に入ったことで起きた体調不良(古賀塔子選手と谷川萌々子選手が発熱)等のアクシデントは、これまでに例を見ないほどチームマネジメントを難しくしました。再びパリで行われたアメリカ女子代表戦にあたっては選手村に入らずホテルでの宿泊に。こうした裏方の苦労や機転を効かせた決断も含め過酷な総力戦でした。池田監督はあらゆる準備をして大会に臨みましたが「少し想定よりも大きな影響がチームにありました」と振り返ります。
コンディションが万全ではない選手も個人で何をできるかを考えてコンディションを上げようと努力していました。全ての選手がチームのために戦いました。そのため池田監督は選手起用で「頭を悩ますこともありました」と話します。そして「選手を信頼して試合をできた。そういったところがチーム力の表れだった」と力を込めて話しました。
東京2020大会からパリ五輪までの道
3年間にわたる旅路でした。池田監督は2021年10月1日になでしこジャパン(日本女子代表)の監督に就任しました。就任時には「頂点を目指してチームをつくり世界一を奪還する」と目標を掲げ、「日本人の持っている器用さ、勤勉性、連動性、連携、そういったものをもっと突き詰めれば、新しいコンビネーションで相手を打ち負かすこともできると思っています」と強みを伸ばすことを宣言。これまでの日本の女子サッカーの常識を覆すスタイルを目指し指導をしてきました。
「奪う」は世界との距離を縮めるための挑戦だった
池田監督が就任する以前の日本の女子サッカーは、ブロックを敷き人数をかけてボール保持者を囲んでミスを誘発する守り方が主流でした。攻撃面では、ボールの近くに味方を集めショートパスで丁寧につなぐパスサッカーが特徴とされていました。 そして、世界との距離を引き離される危機感に包まれていました。
池田監督は就任直後から「奪う」をキーワードに、一対一で相手からボールを「奪う」守備、手数をかけず縦に速い攻撃で得点を「奪う」ことに磨きをかけました。池田監督が率いるなでしこジャパン(日本女子代表)の歩んだ道は、世界の女子サッカーの潮流に乗り直すためのチャレンジ・ロードでした。 同時に、この3年間で、多くの選手がより高いレベルの女子サッカーを目指して海を渡りました。攻守ともに個の強さを重視し直線的に相手ゴールに迫るサッカーを海外チームで経験し、池田監督の目指すサッカーとシンクロしていきました。
手応えの方が大きかったアメリカ女子代表戦
果たして世界の強豪チームとの距離は離れたのか近づいたのか……なでしこジャパン(日本女子代表)の現在地の把握は大切です。帰国直後に羽田空港で行われた会見では、まずは、主将の熊谷紗希選手(ASローマ)が疑問に答えてくれました。
「予選(グループステージ)は苦しみましたけれど、ある程度は想定内の苦しみでした。タフなグループリーグであることはわかっていました。アメリカ女子代表戦に関しては、チームとしてやれたこと、そして、手応えの方が大きかったです。」
1年前・羽田で語った宿題「変化への対応」に答えは出たのか?
FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023から帰国した際の熊谷選手は険しい表情でした。あの日、羽田空港での帰国会見で、このように話していました。
「(敗れた)スウェーデン女子代表戦の前半の中で自分たちが変えられたら……オプションを増やせたらまた違っていたのかなというところは、悔しさと共に自分たちの反省点でもあると思っている。」
「すごく成長したと思っています」と話した熊谷紗希選手
あれから1年を経て、同じ羽田空港で熊谷選手はチームの成長について話していました。 パリ五輪で、なでしこジャパン(日本女子代表)は試合の状況に合わせ自分たちの戦い方を変えることができたのでしょうか。
「いろいろなことを試してきました。チームで対応する力はついたと思います。
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