WE Love 女子サッカーマガジン

ノジマステラ神奈川相模原に活気 選手を「伸ばす」アカデミーも「伸ばす」小笠原唯志監督が2年目に挑むやりがい

テクニカルダイレクターから監督へ。小笠原唯志監督がノジマステラ神奈川相模原・クラブ全体の力を「伸ばす」

昨シーズンのノジマステラ神奈川相模原は、かつての高揚感を取り戻せずに全日程を終えました。今シーズンは、これまでと違う色で強みを「伸ばす」かもしれません。新たな歴史の一歩を踏みだすリスタートとなりそうです。

苦闘が続いた3シーズン

ここまでの3シーズンは苦闘が続きました。WEリーグ開幕の202122シーズンは、アグレッシブな一対一の守備を特徴とする北野誠監督のサッカーで挑みましたが10位。得点力向上にまで指導が及ばずシーズン半ばでシーズン終了後の任期満了が発表されました。202223シーズンは、初代監督だった 菅野将晃さんが2018年以来の監督復帰。しかし、成果はすぐに現れず9位に終わりました。202324シーズンは小笠原唯志さんがテクニカルダイレクターに就任。クラブマネジメントを強化しましたが第7節まで1分6敗。未勝利のまま菅野監督を解任し小笠原さんが第8節から監督代行に就任しました。 

注目が集まる今シーズンは、ノジマステラ神奈川相模原の生みの親ともいえる菅野さんがクラブアドバイザーを退任しクラブを離れました。小笠原さんが引き続き監督として指揮します。主将に指名されたのは川島はるな選手。2016年にノジマステラ神奈川相模原がなでしこリーグ1部に初昇格した際に躍進の原動力となったクラブのレジェンドです。

トレーニングの方針をわかりやすく説明する小笠原唯志監督

クラブとチームの強みを再確認する

秋春制のWEリーグは、真夏にチーム作りを行います。ノジマステラ神奈川相模原は2024年7月10日にノジマフットボールパーク(相模原市)でトレーニングを開始しました。

酷暑を避けるため、7月22日から7月28日まで北海道北見市でトレーニングキャンプを行っています。WE Love女子サッカーマガジンは、北見市に飛び立つ前の7月17日にノジマフットボールパークを訪ね取材しました。小笠原監督が、どのようなチーム作りをしようとしているのか、小笠原監督から見たノジマステラ神奈川相模原が「伸ばす」べき魅力とやりがいについて聞いてみました。

勝てなかった昨シーズン後半に感じたプレッシャーと得られたもの

昨シーズン、ノジマステラ神奈川相模原が初勝利を挙げたのは第17節。ホームスタジアム・相模原ギオンスタジアムでの初勝利は2024年5月19日に行われた第21節(ホーム最終戦)となりました。勝てない試合が続いても、ファン・サポーターは、最後まで温かな声援を送り続けていました。

小笠原応援してくださる皆さんの声援はありがたかったです。それでも、途中からは「勝たなあかん」みたいなプレッシャーが選手にかかっていました。あまりしかめっ面で硬くなってサッカーをやらないように言っていたのですが……でも、勝てなければ、どうしても硬くなりますよね。最後の方の試合は、やっとルーズボールを自分たちに引き込むことができるようになりました。

上手くいかないときは「こぼれ球を拾えない」とよく聞きます。どうすれば拾えるようになるのでしょうか?

小笠原 守備のときは、後ろに足を持っていくか一歩前へ行くかでルーズボールを拾えるかどうかが変わります。チャレンジしなければボールはこちらにこぼれてこない。チャレンジしないのは失敗。チャレンジし続けていれば失敗ではない。やらずにやめたら大失敗になると、今日のトレーニングでも言いました。

サッカーにはコンセプト・エラーがあります。コンセプト・エラーは監督の責任です。チームとしてやろうとしたことをやっても相手にやられてしまう場合は、選手には気にする必要はないと言っています。でも、プレー・エラーは選手が自分で修正しなければなりません。主体性を持って自分自身が変わらなければいけない。このチームは、その区別が明確ではなく、プレー全体が萎縮してしまうところがありました。

ポジティブなニュアンスの大きな声が響き渡りトレーニングの雰囲気は大きく変化した

小笠原 昨シーズンは、3バックにしたり4バックにしたり(ボールの保持・非保持で)可変にしたり、前から奪いにいったり下がって守ったり……いろいろなことをできるように指導しました。事件はグラウンドで起こるので、選手には『自分で判断してプレーしなさい』『ベンチに電話してもとらんよ』と言っています(笑)。

でも、勝つために何かに突出していく部分には手をつけられませんでした。昨シーズンに幅を広げたプレーのベースに、縦に突出していく部分をどのように加えていくかを考えています。

「サッカーはサッカーで改善したい」ボールを使って課題を顕在化するトレーニング

今シーズンは、選手が活発に声を出して活気あるトレーニングをされていると感じます。何で雰囲気が変わりましたか?

小笠原 このチームの選手は真面目なので、トレーニングを一生懸命にやります。黙々とやるのも大事だけど「元気よくやって!」と伝えています。雰囲気が暗くなったらトレーニングをしていても面白くない。練習中に「笑うな」という指導者もいますが、僕は「笑え」と言っています。冗談の一つを言えるくらいに力を抜いてやりたいです。

「特にメニューのラスト一本のときはもっと元気よくやろう。これがアディショナルタイムにつながるよ」と声をかけています。こうした日常の習慣が、試合のアディショナルタイムにチャンスを呼び込むことにつながってきます。

小笠原唯志監督

選手だけでなくスタッフも変わる

ポジティブな声がけには、特に気を使っておられるように聞こえましたがいかがですか?

小笠原 僕自身が勉強して変わっていかなければなりません。僕に限らず、アカデミーの指導者も勉強して変わった姿を選手に見せるべきだという思いはありますね。そうしないと自分が損をしますしチームが損をする。

今日のトレーニングでは小笠原さんの「とるよ!」と「とったボール!」の2つの声がとても多かったです。今シーズンは奪いにいく守備、前からの圧力を強調されてトレーニングを進めて行くのでしょうか?

小笠原 前から守備のプレッシャーをかけていきたいと思っています。ただ、今のチーム状況はスプリント能力に課題があり、最初は相手にプレッシャーをかけられますが、途中から圧力が落ちてくる。

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