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「試合後のお菓子のお土産くらいしか男女のサッカーに違いはない」  WEリーグ アルビレックス新潟レディースを躍進させた「上限を定めないサッカー観」

悔しさを味わい来シーズンはスタートからビッグ3に挑むアルビレックス新潟レディース

アルビレックス新潟レディースは大きく躍進しました。202324 WEリーグでの最終順位は当初の目標に惜しくも届かなかった4位でした。シーズンを終えて程なく、2024年5月31日、アルビレックス新潟レディースは橋川監督が来シーズンも指揮を執ることを発表しました。次は、最初からタイトル獲得を目標とするシーズンとなります。

今回の記事では、躍進の理由を振り返りながら、来シーズンのアルビレックス新潟レディースの目指す姿を占います。202425 WEリーグカップは8月31日に開幕。202425 WEリーグは9月14日にスタートします。

試合終了直後にピッチからファン・サポーターに感謝を伝えるアルビレックス新潟レディースの選手たち 写真提供:WEリーグ TOP写真も

「本気でトップ3を目指す」から「本気でタイトルをとる」に変わった目標 

堅守速攻を磨き続けた2シーズン。もちろん、今のスタイルの礎を築くことにつながりましたが、選手たちは「もっとできるはず」と、自分たちの可能性を信じていました。昨年、そこに現れたのが橋川和晃監督でした。

橋川監督は202324シーズンをスタートするにあたり、選手たちに「本気でトップ3を目指さないか?」と問いかけました。202324 WEリーグカップで準優勝、その後、開幕した202324 WEリーグで勝ち点を積み上げるにつれ、選手たちは満足できる最低レベルを自ら上げていきました。

橋川和晃監督 写真提供:WEリーグ

自分たちで目標を変えていったと語る川澄奈穂美選手

2024年5月2日に味の素フィールド西が丘で行われた第18節・日テレ・東京ヴェルディベレーザ戦後に川澄奈穂美選手は話しました。

「『本気でトップ3を目指す』という目標から今シーズンは始まりました。WEリーグカップで決勝まで行けたことによって『自分たちも本当にタイトルを狙える』という感覚を持てたと思います。ただ、シーズンが始まると順位はどんどんと変動する。本当に自分たちらしくゲームを勝ちとっていくことによって、選手それぞれが『できるんだ』と感じていきました。シーズンの途中で『本気でトップ3を目指す』から『本気でタイトルをとる』に目標に変わりました。自分たちで目標を変えていったのだと思います。本当に今シーズン、大きく成長できたと思います。」

橋川監督は堅守を維持しながら速攻に遅攻を加え柔軟に使い分ける「堅守柔攻」のサッカーを目指しました。一時は首位争いを繰り広げました。

来シーズンにさらに躍進と予想する理由は「男女を区別しないサッカー観」「主役は選手」

筆者は202425シーズンのアルビレックス新潟レディースも、旋風を巻き起こし躍進するのではないかと予想しています。その理由の根底にあるのは「男女を区別しないサッカー観」と「主役は選手」という橋川監督の考え方です。

アルビレックス新潟レディースはWEリーグで唯一の日本海側を活動拠点としているチームで、アウェイ移動や冬のトレーニングにハンディを抱えます。しかし、選手たちは生き生きとプレーしトレーニングに臨みます。そのムードから、このチームにはやりがいがあるのだろうと感じます。そこに、持ち合わせた戦力以上の伸び代を感じるのです。従来からの女子サッカーチームの活動限界を超えた成長があるのではないか……そう感じさせてくれる魅力があります。

アルビレックス新潟レディースがトレーニングを行うアルビレッジ

「私は選手に基準を与えるだけ」……つまり上限は定まっていない

橋川監督は監督会見で「選手が主役」だと強調します。「私は選手に基準を与えるだけ」と話します。定義した基準の中で選手が判断し、良さを引き出せるように心がけてきました。

それを特に感じるのは「女子サッカーの面白さ」や「女子サッカーならでは」に関する質問を受けた際の回答です。橋川監督は、そうした質問に正面からは答えません。なぜなら、女子サッカー選手の多くは、パワーやスピードが男子の平均的な選手と違うだけで、テクニックや判断のところには違いがない……女子サッカーも同じサッカーだと考えているからです。

「選手たちとコミュニケーションをとりながら良さを引き出し、課題を一緒に克服していく。そういった意味でのマネジメントは何も変わらない。」

それが、アルビレックス新潟レディースで初めて女子サッカーチームの指揮を執った橋川監督の考え方です。グラスルーツまでを見渡せば、多くの監督が「男子のサッカーに対して女子のサッカーは」と女子サッカーの限界を前提としているのに対し、橋川監督は全く異なるアプローチを続けます。

性別の違いよりも選手の個性やチームの個性の違いとして捉える

以前、橋川監督はFC今治で指揮を執っていました。メンバーには駒野友一選手がいました。FIFAワールドカップ南アフリカ2010等で活躍したレジェンドです。橋川監督は「同じプレーの指導でも、駒野選手へのアドバイスと若手選手へのアドバイスの方法は違う。求めるプレーも違う」と話します。ですから、これを置き換えれば、FC今治とアルビレックス新潟レディースの違いを性別に求めるのではなく、選手の個性やチームの個性の違いとして捉えるのです。

「JリーグとWEリーグの違い」について質問を受けた際に、橋川監督は答えました。

「試合が終わった後にお菓子のお土産がいっぱある。それくらいしかないです。」

主役は「目指すサッカー」でも「監督」でも「リーグ」でも、もちろん「ジェンダー(性別)」でも「クラブ」でもない。あくまで「選手」なのです。

強度、競争、高め合う意識の強いトレーニング

筆者はアルビレックス新潟レディースのトレーニングを取材した際に、集中力を高める雰囲気、積極性、そして、そこから生まれる再現性の高さに驚きました。

ベテランから若手まで横一戦で競い合うアルビレックス新潟レディースのトレーニング

トレーニングの雰囲気が独特です。特に印象的だったのは、シュートが枠に飛ばない、リバウンドのボールがゴール前に溢れた際の反応です。一斉に選手から声が飛びます。そして、こぼれ球を我先にゴールに押し込もうと選手が飛び込み競い合います。あの雰囲気は当初からあったのか、途中から変わったのか、このチーム特有のものなのか橋川監督に聞いてみました。

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