フォルトゥナ・デュッセルドルフ女子トップチームが昇格 38歳で「海外組」デビュー 天野実咲選手が経験する新チーム立ち上げ ベガルタ仙台との違い
「女の子が主役の女子サッカーチームを作りたい」FIFA女子ワールドカップ経験者が挑む
天野実咲選手は、いつも私たちを驚かせてくれます。まずは、早稲田大学在学中に制定されたばかりの女子特別指定選手として浦和レッズレディース(現・三菱重工浦和レッズレディース)でプレーし注目を集めました。なでしこジャパン(日本女子代表)にも選出されています。出場こそありませんでしたがFIFA女子ワールドカップ中国2007では3人のゴールキーパーの1人として世界の舞台で戦いました。

天野実咲選手 Fotocredit: Sonja Stumpf
ベガルタ仙台レディースで引退後に2度の現役復帰
卒業後に東京電力女子サッカー部マリーゼに加入。東日本大震災でチームが活動休止に陥ると、選手を受け入れるために新設されたベガルタ仙台レディースに移籍。2013年に引退すると指導者に転じ、学生チームでの指導経験を経て2022年に三菱重工浦和レッズレディースのゴールキーパーアシスタントコーチに就任。登録選手に怪我人が出ており、9年ぶりに選手登録(コーチ兼任)もされました。
そして、今度はドイツへの渡航です。フォルトゥナ・デュッセルドルフが立ち上げることになった女子トップチームのオリジナルメンバーに選手として加わりました(スタッフも兼務)。38歳にして「海外組」デビューです。ブンデスリーガ2部で戦う田中碧選手ら日本人選手と同じクラブの所属選手になりました。
今回はデュッセルドルフで暮らす天野選手の声をお届けします。

両岸に高級ブランドショップやラグジュアリーホテルが並ぶケーニヒッスアレー
約6千人の日本人が暮らす美しい街での生活
—デュッセルドルフは日本人が多い街としても知られていますね。
天野–都会ですが公園も多く素敵な街です。私が日本人だとわかると、食べ物、アニメといった日本の話を振られることが多いです。日本に興味を持つ人がたくさんいると感じますね。
—2006年にワールドカップが開催されていた期間は、ライン川の堤防のところにビールを飲めるオープンエアの店が並び、とても賑わっていたことを記憶しています。
天野– デュッセルドルフの人はライン川が大好きですね。マルシェで食べ物を買って、好きなものをトッピングし、川沿いの芝生にビールやワインを持ち込んでピクニックしています。

デュッセルドルフを象徴するライン川の雄大な景観
ドイツに渡ってから知った新チームの立ち上げ
天野– 漠然と「女の子が主役の女子サッカーチームを作りたい」と思っていました。去年の春にドイツに渡りました。現地でフォルトゥナ ・デュッセルドルフの女子トップチームが始動すると知り「チャンスが欲しい」と私から猛プッシュしました。
フォルトゥナ ・デュッセルドルフのスタッフと相談し「選手としてチームメイトとコミュニケーションをとりながらドイツ語を学んでから、この先のことを考えよう」という提案を受けました。「君はまだ動ける」とも言われました。確かに、この先、ドイツで仕事をしていくために言語は重要なので、選手として参加することにしました。
チームメイトは16歳くらいのドイツ人が多く、娘みたいな年齢の選手たちとプレーしています。私は一番の長老ですが、英語もドイツ語も満足にできないから、多分、彼女たちの側から見るとコミュニケーションでは赤ちゃんですね。だから、すごく優しくしてくれます。助けてくれる。辛抱強く聞いてくれますね。ありがたい機会を本当にいただけたと思っています。
「当たり前だと思っていたことが当たり前ではない」現地の生活習慣に戸惑いながらの充実した毎日
—若いメンバーと一緒にプレーする充実感はいかがですか?
天野– 伸びしろしかないような選手たちばかりなので、私は元気では勝てないです。でも、技術や経験があるのでやれているところが大きいですね。
—「女の子が主役の女子サッカーチームを作りたい」と思っていた天野選手が、今、新しいチームの立ち上げに選手として参加しています。その面白さや難しさを感じることはありますか?
天野– 面白いのは「罰則や罰金が明文化されている」ところですね。グループチャットにPDFが送られてきたのですが、よく読んでみたらルールが書いてあり、違反すると何ユーロと書いてありました。
—ドイツ人は「ルールを作る」「ルールを守る」ことがお好きだと聞いたことがありますが(例えばビールのグラスには注ぐ高さの印がある)、チームでも、そのようなことがあるのですね。
天野– 私にとって「当たり前だと思っていたことが当たり前ではない」ということを知りました。この先、リーグ戦を勝ち抜いて昇格する過程で、チームには、もっと大人の年齢の選手やプレー経験が豊富な選手が加わってくると思います。これから、このチームとチームメイトが、どのようになっていくのかに興味が湧きますね。

伝統的な街並みと近代的な建築物が混在するデュッセルドルフ
—過去にベガルタ仙台レディースの新規立ち上げもご経験されていますが、そのときと今とでは、かなり違いがありそうですね。
天野– あのときは、ある意味(東京電力女子サッカー部マリーゼから)チームを新しくした再スタートでした(プレナスチャレンジリーグからスタート)。今回は状況も国も違います(フォルトゥナ・デュッセルドルフ女子トップチームは日本に当てはめると県リーグに相当するディビジョン・ KreisligaからBezirksligaに昇格)。デュッセルドルフで、とても良い経験をさせていただいています。

天野実咲選手 Fotocredit: Sonja Stumpf
男子トップチームが使用するアリーナ・スポーツパークでトレーニング
—フォルトゥナ ・デュッセルドルフ女子トップチームはど、どのような環境でトレーニングをされているのでしょうか?
天野– 去年は男子のユースアカデミーが使用する施設でトレーニングをしていました。今は男子トップチームがホームゲームに使用しているエスプリ・アリーナと同じ敷地にあるアリーナ・スポーツパークでトレーニングしています。
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