WE Love 女子サッカーマガジン

検証WEリーグ(後篇) どのように共感を広げるか 女子サッカーの「自分ゴト」化に「理想」と「現実」

WEリーグには「理想」と「現実」のギャップを強く感じてしまう理由が存在する 

202324シーズンの日本の女子サッカーはFIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023の余韻から順風を受けたスタートとなりました。第2節のマイナビ仙台レディースvsINAC神戸レオネッサが5千306人のファン・サポーターを集めたように、熱気あふれるスタジアムが各地で実現しました。なでしこジャパン(日本女子代表)でプレーした選手の活躍もあり、ポジティブなニュースが多く流れました。

しかし、ウィンターブレイクが明け、怒涛の3月を迎えると、一転して、逆風が吹き荒れるニュースに接することが増えました。

検証WEリーグ(前篇) 女子サッカーの「自分ゴト」化に課題が積み残される

今回は検証WEリーグの後篇です。前篇では女子サッカーの「自分ゴト」化を実現するために積み残される課題を紹介しました。後篇では「理想」と「現実」についてお伝えしていきます。どうすれば、女子サッカーの「自分ゴト」化は加速できるのでしょうか。

新宿高島屋で開催されたWEリーグのイベント

せっかくの「WE ACTION」だが共感が思ったように広がらない

WEリーグは「WE ACTION」を展開しています。「WE ACTION」をこのように定義しています。

WEリーグに所属する選手、クラブ、そして、サポートするパートナー企業を始めとする様々な人が、リーグの理念「女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する。」の実現のために輪となり、私たちみんな(WE)で起こす行動(ACTION)です。

これは大変意義ある取り組みで、他のプロスポーツにはできないWEリーグの強みでもあります。そして、戦線から離脱している茨木美都葉選手(マイナビ仙台レディース)は「今の私のように怪我をしてピッチで活躍できない選手は、WE ACTION DAYやスタジアム外の活動が『自分の価値を証明できる機会』になります」と話します。

しかし、こうした活動への共感が女子サッカー界の外へ広がるスピードが加速しません。

WEリーグは選手が輝く環境を提供できているか?

「選手たちが輝くことが一番の理念じゃないですか?」 

アルビレックス新潟レディースの橋川和晃監督は、これまで、指導者としての仕事だけでなく、FC今治ではアカデミー・メソッドグループ執行役員兼グループ長としてクラブ経営に欠くことのできない重職を務めてきました。そんな橋川監督は「選手が輝くこと」が一番の理念の表現になると報道陣に訴えましました。

選手の輝きでWEリーグの素晴らしさを伝えたい橋川和晃監督(新潟L)

WEリーグでプレーする選手たちが輝き、憧れの対象になれば「ファン・サポーターがヒロインを見守るのではなく、ヒロインと同じ目線で連帯して進もうとする」ことにつながります。スタジアムに足を運ぶ人が増えますし「WE ACTION」への共感も広がることでしょう。 

「選手は私の思いを実現してくれる」「選手のように輝くために毎日の仕事を頑張ろう」「私もチャンスを掴めるはず」という「自分ゴト」が生まれるはずでした。

若い世代の来場が増えたWEリーグのスタジアム

描く「理想」と押し付けられたと感じる「現実」

しかし「現実」は違う方向にハンドルが切られアクセルが踏まれました。今シーズンは週末だけでなくミッドウィーク(平日)にも試合が組まれ選手は疲弊しました。メディアやSNSには、リーグから強いられたというニュアンスを含むコメントが溢れました。選手の立場は弱く、リーグの立場が強いとファン・サポーターは解釈したのです。

現場はコンディションの調整に苦慮しました。今シーズンも大きな怪我をする選手が続出しました。

大会カレンダー(スケジュール)が過密になった原因は「202324 WEリーグの開幕が11月だったこと」であり、三菱重工浦和レッズレディースの参加したACL2024プレ大会(AFC Women’s Club Championship 2023 – Invitational Tournament)のグループステージが11月6日から12日までチョンブリ(タイ)で集中開催されたこと、そして、2023-24WEリーグカップを先行開催したことにあります。

WEリーグの髙田春奈チェアは、2024年5月29日のメディアブリーフィングで、ACL2024プレ大会(AFC Women’s Club Championship 2023 – Invitational Tournament)の日程が、当初のWEリーグのカレンダー案決定後にAFCが決定されたという経緯を話し「浦和さんと他のクラブで話し合ってカレンダーを調整したというところがありますので、リーグが定めたというよりは、手続きを踏んで、皆で合意をして組んだカレンダーではありました」と強調しました。

現場から不満の声が噴出した3月以降

ところが、「現実」に目を向けると、そうしたWEリーグの説明する事情や合意形成のプロセスを受け入れているとは感じにくい現場の声が多くありました。

2024年3月31日に行われた202324 WEリーグ 第13節を終え、アルビレックス新潟レディースの橋川和晃監督は選手への賞賛とカレンダーの問題点を語りました。アルビレックス新潟レディースは、ホームゲーム、アウェイゲーム、ホームゲームと中3日の連戦の後、中2日でアウェイゲーム、さらに中2日でまたアウェイゲームを戦うという、Jリーグでもめったに見ない過酷な戦いを続けていました。

「選手は素晴らしい魂のこもったゲームしてくれました。内容どうのこうのじゃないですよ。5試合連続でもうボロボロですよ。それでもやってくれた。戦術どうのこうのじゃないです。」

それを受けて山下杏也加選手(INAC神戸レオネッサ)は「新潟Lの連戦は異常でしかない。」とポスト。これが64万インプレッションを超え大きな反響を起こしました。さらには、第16節の監督会見でINAC神戸レオネッサを率いるジョルディ・フェロン監督が、冒頭からカレンダーに対する不満と懸念点を長時間に渡って訴えました。INAC神戸レオネッサは3日前に行われた広島でのアウェイゲームを終え、相模原でのアウェイゲームに臨みました。その上、この試合の前週に時差の大きなアメリカ遠征(2024シービリーブスカップ)から帰国したばかりの選手が4人います。試合の収穫の一つとして「選手が怪我をしなかったのが良かった」と話しました。

第17節では、サンフレッチェ広島レジーナの中村伸監督が監督会見で自ら「前節はちょっと我々にとってアンフェアなスケジュールだった」と切り出しました。

202324 WEリーグは、「WE ACTION」で語る「理想」に対し、選手やスタッフを取り巻く「フェア」「平等」の「現実」が大きく乖離している印象の強まったシーズンだったといえます。

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