WE Love 女子サッカーマガジン

検証WEリーグ(前篇) 女子サッカーの「自分ゴト」化に課題が積み残される

「フェア」「平等」で共感を生む『虎に翼』と何が違うのか?

202324 WEリーグは圧倒的な強さの三菱重工浦和レッズレディースが優勝し幕を閉じました。フットボール面ではリーグ全体に大きな伸びが見られ、日本の女子サッカーの未来は明るく輝いているように見えます。

最終節のセレモニーを終えて取材対応したWEリーグの髙田春奈チェアは、WEリーグの変化の一つとして競技力が向上していることを強調しました。

「例えば、ちふれASエルフェン埼玉はなでしこリーグ2部からWEリーグに参入し、これまで最下位でしたが、今回、上位に行けそうなところまで来られました。全体的な底上げが確実にあると思っています。それが、プロ化の目的の一つであったと思っています。」

各チームの集客活動とWEリーグの支援により平均入場者数は1千723人に増えました。昨シーズンの1戦401人と比較すると大幅な増加です。

髙田春奈チェアからWEリーグの変化の象徴としてコメントがあったちふれASエルフェン埼玉

WEリーグと近いテーマのドラマが大きな支持を集めている

NHK連続テレビ小説『虎に翼』が人気です。放送のたびにSNSに視聴者からのポストが流れます。『虎に翼』は女性法律家のさきがけ・三淵嘉子さんをモデルとする物語です。

フリーライターの田幸和歌子さんは「この作品に触発されて『私の話』をする人が続出している」とし「『寅子は私』と語りはじめた女性たち」をFRauに発表しました(https://gendai.media/articles/-/127745?media=frau)

描かれる「フェア」「平等」の物語 

『虎に翼』はエンターテイメント作品ですが、ここまでで描かれているのはジェンダー平等とは程遠かった過去の日本の出来事です。学校や職場で受けてきた男女差別や格差の話がいくつも出てきます。さらには、戦争の時代に、性別を問わず、苦しんだ人々の心情も描かれています。それを見た視聴者が自分の経験を「私も似たような境遇にあった」とドラマと重ね合わせて語ります。田幸さんは「視聴者がヒロインを見守るのではなく、ヒロインと同じ目線で連帯して進もうとする朝ドラは、過去に類を見ない。」と「『寅子は私』と語りはじめた女性たち」で表現しています。

このドラマのテーマは、WEリーグの「設立の意義」の最初に書かれている「日本の女性活躍社会を牽引する」と類似しています。つまり、多くの女性にとって「フェア」「平等」は関心の高いテーマなので語りはじめた女性たちは急増したのです。

サッカーが「自分ゴト」になる街・浦和

「自分ゴト」化が思うように進まないWEリーグ

一方で、残念ながら、3シーズン目を終えても、WEリーグによる女子サッカーの「自分ゴト」化が、まだ顕在化していないように見えます。 選手と同じ目線で連帯し「私の話」をしているファン・サポーターの増加はゆっくりとしたペースで進みます。『虎に翼』の「自分ゴト」化と何が違うのでしょうか。

そこに注視して2023−24 WEリーグを振り返ると、課題を積み残したシーズンだったと感じます。

「自分ゴト」化で日本のスポーツと社会を変えたJリーグ

少し古い話ですが、逆に、『虎に翼』の「自分ゴト」化と近い出来事が過去のサッカー界にありました。

31年目の1993年にJリーグがスタートしたとき「自分ゴト」化したファン・サポーターが日本中に出現したのです。企業の論理に振り回される会社員の境遇、大都市圏との格差に苦しむ地方の生活者……Jリーグが企業から市民にスポーツを取り戻し、多くの大企業の本社所在地である首都圏や関西圏を離れたホームタウン制を採用したことに触発されて『私の話』をする人が続出しました。

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