WE Love 女子サッカーマガジン

三菱重工浦和レッズレディースが日本の女子サッカーの先頭を走り始めた WEリーグ・アジア二冠 6つの要因 選手・監督コメントから

日本を牽引する女子サッカーチームとなった三菱重工浦和レッズレディース

日本の女子サッカーには、その時代を牽引するチームがあります。長く、その存在として君臨し続けてきた日テレ・東京ヴェルディベレーザ、黄金期に圧倒的な強さを誇ったINAC神戸レオネッサ、そして古くは日興證券女子サッカー部ドリームレディース、プリマハムFCくノ一(現・伊賀FCくノ一三重)、清水第八スポーツクラブ、 F.C.ジンナン……。新たな時代が訪れると、その座は引き継がれてきました。

第20節まで1敗、圧倒的な強さで優勝を決めた202324 WEリーグ

今シーズンの三菱重工浦和レッズレディースは202324 WEリーグと女子ACLプレ大会『AFC Women’s Club Championship 2023 – Invitational Tournament (AWCCIT)』の二冠を達成。皇后杯 JFA第45回全日本女子サッカー選手権大会は準優勝です。202122シーズンにWEリーグがスタートして以来、日本国内には争われたタイトルが8つありますが、そのうち4つを獲得したことになります(2位が2つ)。

女子プロサッカーの時代が到来して以来、日本の女子サッカーは急ピッチで進歩しています。速く、激しく、面白く、世界標準を見据えた試合とトレーニングが続いています。そんな各チームの中でも、三菱重工浦和レッズレディースの成長は群を抜いて早い。なぜなのでしょう。

柴田華絵選手は、チームスタッフへの感謝を頻繁に言葉で示す

強さ、そしてスタンドを沸かせる秘訣は高い位置で奪い手数をかけずフィニッシュに至る「高速サッカー」

WEリーグの発表したスタッツには三菱重工浦和レッズレディースの特徴を示す項目があります。それは「シュート」?「枠内シュート」?……もちろん、そうした項目は三菱重工浦和レッズレディースの攻撃力の強さを物語っています。しかし、最も顕著に特徴を表しているのは「パス」です。

「パス」の本数が多い選手の上位5人にはINAC神戸レオネッサ、日テレ・東京ヴェルディベレーザ、サンフレッチェ広島レジーナの選手が並びました。いずれも最終ラインもしくは中盤の底でプレーする選手たちです。「パス」は攻撃に関する項目ですが、三菱重工浦和レッズレディースの選手の名前がそこにはないのです。

これは、三菱重工浦和レッズレディースが手数をかけることなく、スピーディーな仕掛けをできていることを示します。最終ライン付近でパス交換をする時間が短いのです。また、中盤やセンターバックに、特に重要なパスの経路が存在していないことの証明でもあります。

どこからでもスピーディーな攻撃を仕掛けてくる三菱重工浦和レッズレディースに、対戦チームは守備のマトを絞ることができず手を焼きました。

「叫んでしまうほど嬉しかった」と優勝決定の瞬間を話した清家貴子選手

清家選手が17得点という圧倒的な得点力を示しています。しかし、その得点パターンはさまざまです。そして、清家選手もアシストやクロスの本数がリーグトップ5に入っています。ポジションは中に、外に動きます。

なぜ、特別なストロングポイントから攻撃することに限定しない、全面攻撃が可能となったのでしょうか。この記事の結論は次のようになります。

「選手・監督・スタッフ全員が連覇に値する取り組みを続けてきた。」

今シーズンを振り返ると、数々の会見やミックスゾーン取材の言葉の端々に、強さを知る重要な鍵が潜んでいました。それらを6つの要因に整理してお伝えします。WE Love 女子サッカーマガジンが整理した6つの要因とは「浦和レッズの基準」「悔しさ」「浦和レッズでプレーする自覚」「女王の高い視点」「街の力」「憧れ」です。

怪我から完全復調した栗島朱里選手と成長が著しい角田楓佳選手 写真提供:WEリーグ

1 出場するためにクリアしなければならない「浦和レッズの基準」

「今回、優勝できたことは、ここにいる(柴田)華絵を中心に……また清家がね、本当に神がかり的に得点を重ねてくれて、サブのメンバーも試合になかなか絡めないメンバーも、一生懸命練習してくれて支えがありました。また、スタッフが分析したり準備したりしてくれました。アジアの決勝も時間がない中、運営スタッフも一生懸命夜中まで仕事をしてくれた。そういったことが今回の結果につながったと思っています。連勝できたのは、選手たちが一生懸命に身体を張った部分からだと思います。途中、猶本(光)と安藤(梢)がケガで離脱するというアクシデントもありましたけれども、若い選手も、年齢が上の選手も、そういうのも乗り越えました。」

楠瀬直木監督は選手、スタッフへの賞賛と感謝の言葉から三菱重工浦和レッズレディース 202324 WEリーグ 優勝記者会見を始めました。

選手からの信頼が厚い楠瀬直木監督

質問すればするほど答えをはぐらかす楠瀬監督

今シーズンの三菱重工浦和レッズレディースは、個々の選手が大きく成長を遂げました。当然、各試合後の監督会見では、報道陣が選手の成長について多数の質問をしました。楠瀬監督は選手を褒めます。讃えます。しかし、チーム全体の成長度合いの大きさを報道陣が質問すればするほど答えをはぐらかす楠瀬監督という構図が続きました。

例えば、若い選手の起用について、このような表現が強く印象に残っています。

「攻守において、しっかりと『ウチの基準』を示していかなきゃいけない」
「浦和レッズで試合に出るのはそう簡単なことではない」
「今日、試合に出ていない選手は今日のメンバーを差し置いてでも出れられる力をつけていかないといけない」
「ボーダーラインをしっかりと皆で決めている」

「ウチの基準」に達していれば出場できるという明確なボーダーラインがある

若い選手を起用したいけれど「ウチの基準」に達していない段階で起用して負けるわけにはいかない……そのようなニュアンスの楠瀬監督の表現には2つの意味が含まれているように感じます。

「チームとして負けるわけにはいかない」という意味と「基準に達していない選手を起用し、その選手のプレーが原因で負けると、その選手の今後の成長に響く」という両面です。

大事な場面で期待に応える活躍をした岡村來佳選手 写真提供:WEリーグ

一方で、アカデミー育ちや大卒の有力選手等の若い選手たちをできるだけ起用したい気持ちも言葉に残しました。

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