宮澤ひなた選手を輩出 「育てて美しく勝つ」女子サッカーチーム S E I S A O S Aレイア湘南FCが、今、なでしこリーグ昇格に挑む理由と大切にすること
関東女子サッカーリーグ1部を戦うS E I S A O S Aレイア湘南FCはなでしこリーグ昇格を目指しています。2023プレナスなでしこリーグ2 部入替戦予選大会を突破。2023年11月4日(土)または5日(日)に開幕する2023プレナスなでしこリーグ2 部入替戦に出場します。
2023プレナスなでしこリーグ2部入替戦は4チームで争われます。2023プレナスなでしこリーグ2部を10位で終えたノルディーア北海道に挑むのは、2023プレナスなでしこリーグ2部入替戦予選大会の上位となったSEISA OSAレイア湘南FC、ディオッサ出雲FC、FC今治レディースの3チーム。4チームにより行われる1回総当たりのリーグ戦上位3位までに入れば、悲願のなでしこリーグ2 部昇格が決まります。
星槎湘南大磯総合型スポーツクラブが運営する女子サッカーチーム
スローガンは「育てて美しく勝つ」。S E I S A O S Aレイア湘南FCとは、どのようなチームなのでしょうか。その活動、組織と歩みを振り返ってみましょう。
S E I S A O S Aレイア湘南FCは星槎湘南大磯総合型スポーツクラブが運営する女子サッカーチームです。星槎湘南大磯総合型スポーツクラブは星槎グループの学校施設を活動拠点とする総合型スポーツクラブを目指して2001年に活動を開始しています。キャプテンには1970年代から1980年代にブンデスリーガで活躍した「東洋のコンピューター」奥寺康彦さん、テクニカルアドバイザーには元西ドイツ代表のリトバルスキーさんが就任しクラブの運営を支援してきました。

大磯町 町長の池田東一郎さんと町議会議員の岡みゆきさんが2023プレナスなでしこリーグ2 部入替戦予選大会の激励に訪問 提供:S E I S A O S Aレイア湘南FC
中学生年代のプレー環境を創るところから活動をスタート
女子サッカーチームのS E I S A O S Aレイア湘南FCは、2006年に秦野市で中学生年代のプレー環境を創るところから活動をスタートしました。S E I S Aは星槎の英文。O S Aは奥寺スポーツアカデミーの意味。レイアはギリシャ神話で大地の女神の意味です。創設のきっかけは6人の女子中学生の「サッカーの試合がしたい」という声です。神奈川県西部地域には女子サッカーチームが少なく、プレーしたい女性たちの希望に応え続け、その対象年齢が高校生年代、そして社会人に広がっていきました。気が付けば海辺の街から山の里まで活動地域が広範囲になっていました。活動エリアは、大磯町、二宮町、中井町、大井町、小田原市、真鶴町、湯河原町、箱根町、南足柄市、山北町、開成町、松田町、秦野市。神奈川県の西部全域となっています。例えば、大磯町や二宮町は伊藤博文や吉田茂をはじめ明治期から昭和の政財界の重鎮が居を構えた海辺の別荘地。南足柄市は金太郎と天狗伝説で知られる山間の地域です。

伊豆半島を望む眺望(二宮町)
高校生年代は別組織となっており、同じグループの星槎国際高校湘南の女子サッカー部が担っています。例えば、南足柄市出身の宮澤ひなた選手(マンチェスター・ユナイテッド)は中学生時代にS E I S A O S Aレイア湘南FC U-15でプレー。星槎国際高校湘南に進学し入学当初からレギュラーとして活躍。全日本高等学校女子サッカー選手権大会に三度出場しました。在学中にFIFA U-17女子ワールドカップ ヨルダン2016に出場し準優勝。卒業前になでしこジャパン(日本女子代表)のトレーニングキャンプに招集されています。
宮澤ひなた選手は、ニュージーランドからの帰国後に星槎湘南スタジアムを訪れ、かつてプレーしたチームの後輩たちを励ましました。今も交流が続いています。

夕日の滝(南足柄市)
2023プレナスなでしこリーグ2部入替戦に臨む
S E I S A O S Aレイア湘南FCは2023プレナスなでしこリーグ2部入替戦予選大会Bグループを無失点の2勝0敗で突破。順位決定戦ではディオッサ出雲F Cを2−0と完封し1位で予選大会を通過しました。S E I S A O S Aレイア湘南FCは、どのように2023プレナスなでしこリーグ22部入替戦に臨み、何を目指していくのでしょうか。今回は、総監督を務める柄澤俊介さんにお聞きしました。
柄澤—去年は予選大会直前に怪我人が二人も出てしまいました。二人はなんとか出場したのですが、本来のパフォーマンスとは程遠かったです。グループリーグでは、あと1点が遠く敗退してしまいました。入替戦予選大会には独特の雰囲気があります。去年、一昨年に出場したので、やっと準備に慣れてきました。
—このような大会では経験が重要になるのですね。
柄澤—そうですね。初出場で突破することは難しいです。
—S E I S A O S Aレイア湘南FCのスタイルを教えてください。
柄澤—選手には、相手を見て、常に原理原則に基づいて必要なプレーを判断していくように言っています。例えばロングボールが多くなる試合もあれば、ショートパスが多くなる試合もある。特に攻撃に関しては相手次第でやり方が少し変わります。
—「自分たちがやりたいことをやる」のではなく、自分たちが「相手の手綱を握っておけば良い」のですね。
柄澤—そういうことです。もちろん、どこのスペースを重点的に使うかといった基本的なことは決めています。でも、今の日本では、どのようにやり方を隠しても、何らかの方法で対戦相手の映像を入手することができるので隠し切ることはできません。「自分たちがやりたいことをやる」だけでは勝てないと思います。だから相手のさらに上をいくのが本当の意味で「主導権を取る」ことになると思っています。
サッカーの勝負が運によって左右されるとは思っていません。パスが通るか通らないかは運ではなく実力で決まります。コースを見えているか見えていないかの違いです。面白いところを狙う決断、そして、難しければキャンセルする決断がサッカーをプレーして一番楽しいところだと思います。それを育成年代から経験できるように指導しています。
—選手の皆さんの間で、いろいろな会話が生まれてくるのではないでしょうか?
柄澤—ハーフタイムもゲーム中も会話が生まれます。「ここを狙っている」「このスペースは空くから少し見ておいてほしい」……そうした相手の裏を突くプレーが出ると「ウチっぽい」と思います。2023プレナスなでしこリーグ2 部入替戦予選大会・初戦のリリーウルフ.F石川戦は、前半に個の力で剥がしきれなかったので、後半はやり方を変えました。
—前半はシュートを8本も打たれましたが、後半は2本しか打たれませんでしたね。
柄澤—初戦だったので守備のリスクを考えて、相手と同じシステムで噛み合わせて様子を見ました。後半は4バックに変更し、ボールがよく動きました。
—そうやって選手の立ち位置を変えながら、相手を攻略していくサッカーが、日本の女子サッカーの4部で日常的に行われていることを、あまりご存知ない方が多いと思います。今シーズンは朝日インテック・ラブリッジ名古屋でプレーされた加藤もも選手が加入してプレーされていますが、大半の選手は育成年代からチームでプレーし続けていますね。
柄澤—チーム力を維持する方法として、下からしっかり選手育成をするというコンセプトがあります。(加藤)ももは、もともと、ウチ(星槎国際高校湘南)で育った選手です。女子サッカーの指導の本質として、選手を下から育てなければならないと思っています。
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