女子サッカーAリーグ・ウィメン開幕 メルボルン・ヴィクトリーが大型補強 切り札は21試合31得点 脅威のなでしこストライカー
女子サッカーの大ブームに沸くオーストラリア。2023年10月14日にAリーグ・ウィメンが開幕します。ディフェンディングチャンピオンはシドニーFC。2020−21シーズン、2021−22シーズンのグランドファイナルを優勝したメルボルン・ヴィクトリーは2年ぶりのグランドファイナル優勝を目指します。
メルボルン・ヴィクトリーは多くの試合を収容人数が800名のホーム・オブ・マチルダズで開催しますが一部の試合は男女のチームでダブルヘッダー(15時キックオフと17時45分キックオフ)となり AAMI パークで開催されます。AAMI パークの収容人数は約3万人。FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023ではオーストラリ女子代表×カナダ女子代表等の会場となりました。あの熱狂が再び蘇るかもしれません。
そんな大舞台に足を踏み入れる日本人選手がいます。沖野くれあ選手です。メルボルンの女子サッカー界では話題の選手。メルボルン・ヴィクトリーが王座奪還をするための切り札になるのではないかと目されています。いわゆる「話題の大型補強」の話題の中心です。
沖野選手はWEリーグでのプレー経験がありません。伊賀FCくノ一三重での最後のシーズンとなった2022プレナスなでしこリーグ1部では10試合出場2得点。自分で満足できるプレーをほとんどできませんでした。それがなぜ、今、メルボルンで話題の選手になったのでしょうか。

提供:沖野くれあ選手
個人賞の四部門を独占した期待の新星
2023年9月5日、AAMI パークのあるメルボルン・パークの敷地内に建つコンベンション施設・センターピースのホールで NPLビクトリアのゴールドメダルナイトが開催されました。NPLはAリーグの一つ下のディビジョン。2部リーグに相当します。国土の広いオーストラリアでは2部リーグが地域ごとに開催されています。ゴールドメダルナイトは、そのリーグの表彰レセプションイベントです。

Football Victoria 2023 Senol Gold Medal Night CENTREPIECE at Melbourne Park 提供:沖野くれあ選手
華やかなムードに包まれたゴールドメダルナイトの最後に発表されたのはゴールドメダル(年間最優秀選手賞)。高らかに沖野選手の名前が読み上げられました。それだけではありません。21試合に出場し31得点という脅威の得点力で獲得したゴールデンブーツ(得点王)、メディアプレーヤー・オブ・ザ・イヤー(メディア投票による最優秀選手賞)、プレーヤーズ・プレーヤー(選手投票による最優秀選手賞)と併せ4部門を独占したのです。
日本からオーストラリアに渡り半年。初めて海外でプレーするシーズンとは思えない大活躍により、沖野選手はAリーグ・ウィメンの強豪・メルボルン・ヴィクトリーへの移籍を果たしました。
ドレスで参加したゴールドメダルナイト
— ゴールドメダルナイトは素晴らしい雰囲気でしたね?
沖野—こちらの選手の皆さんは気合が入っているというか、すごくセクシーな装いでした。ユニフォーム着をていないから誰が誰だか全然わからなくてチームメイトに質問しました。でも、やっぱりわからない(笑)。
来シーズンもNPLビクトリアでプレーする選手はお酒を飲んでいました。Aリーグ・ウィメンに移籍する選手は、すぐにトレーニングが本格化するのでソフトドリンクを飲んでいましたね。私もです。
自分がゴールデンブーツを受賞することは知っていたのですが、他の賞は誰が受賞するのか事前に発表されていませんでした。私はどのように選ばれるのかも知らずに会場に行きました。式が始まってからポイント制の賞があることに気がつきました。毎週、審判員や解説者がポイントを入れる賞もあったのです。もし、またNPLビクトリアでプレーすることになったら、もっと日頃からリスペクトしておいた方が良いですね(笑)。
—受賞は自信につながったのではないでしょうか?
沖野— 本当に自信になりました。でも4つも受賞したので、これから始まるAリーグ・ウィメンのファンからの期待が大きくなっていると思います。そのプレッシャーに押しつぶされることなく、楽しんで頑張りたいと思っています。

オーストラリアはカフェ大国 提供:沖野くれあ選手
要求することが重要だった
—ここまで活躍できた要因は何でしょうか?
沖野— 元々、スペースにボールを流してもらって、自分のスピードを生かしてシュートを決めることが得意です。NPLビクトリアは比較的ハイラインのチームが多いので、自分の得意なプレーを出しやすかったです。チームメイトには「私は裏に欲しい」と言い続けました。それがマッチしたのかもしれません。
—チームメイトに要求できるかどうかは日本人が海外でプレーできるかの重要なキーだと聞きますが、その要求は最初からできたのでしょうか?
沖野— 本当に英語を喋れない状態でチームに加わりました。練習の中で要求を伝えられたら一番良いのですが、最初はできず、練習が終わってからメールで「私はこういうのが得意だから、さっきみたいなときは裏に蹴って」と地道に伝えていました。
—オーストラリアに渡る前に、コミュニケーションに関するアドバイスを受けていたことはありますか?
沖野— メルボルンでプレーしている日本人女子サッカー選手が何人もいます。皆、別々のチームでプレーしているのですが仲間なので助け合って情報交換しています。「得意なプレーの説明を翻訳ソフトにかけて発音を覚えて、最初のトレーニングのときに繰り返し言ったほうが良いよ」と教えてもらったこともあります。

フリンダースストリート駅にて 提供:沖野くれあ選手
辛い時期を乗り越え掴んだ栄光
—改めてお聞きしますが、なぜオーストラリアでプレーすることになったのでしょうか?
沖野— 日本では、しばらく試合に出場できない時期がありました。辛くて悩んでいたのですが、チームメイトや他のチームの選手から「一緒に頑張ろう」と声をかけてもらったり、手紙をもらったりしていました。
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