三菱重工浦和レッズレディース 安定の強さで2022−23 YogiboWEリーグを制す 安藤梢選手と石川璃音選手の最強センターバックコンビが支えたシーズン
2シーン目のWEリーグは、三菱重工浦和レッズレディースが開幕から実力を発揮。2023年6月3日に行われた第21節さいたまダービーで大宮アルディージャVENTUSに4−0と完封勝利し優勝を決めました。今シーズンの浦和レッズにとっては2022−23 WEリーグカップ、A F Cチャンピオンズリーグ2022に続く3つ目のタイトル獲得です。
昨シーズンとは、メンバーもやり方も大きく異なるシーズンとなりました。センターバックの南萌華選手が開幕前の7月にA Sローマへ移籍を発表。同じくセンターバックの高橋はな選手が11月のなでしこジャパン(日本女子代表)活動中に右膝前十字靭帯損傷の重傷で戦線離脱。リハビリ中だった長船加奈選手は再び手術し復帰が遅れ、さらには、なでしこジャパン(日本女子代表)の活動中の6月に右膝前十字靭帯損傷したゴールキーパーの池田咲紀子選手もなかなか復帰することができず……楠瀬直木監督はメンバー構成に苦心しました。
それにもかかわらず、リーグ戦で落とした試合は2試合のみ。「40歳の新人センターバック」と「昨シーズンは出場試合数0の新鋭センターバック」がコンビを組み優勝の立役者になると、開幕前に誰が予想できたでしょうか。
優勝の立役者は「新人」と「新鋭」のセンターバックコンビ
高橋選手の怪我で急遽のコンバートとなった「40歳の新人センターバック」安藤梢選手は、何年もこのポジションでプレーし続けてきたかのような冷静なポジショニングで危機の芽を摘み続けました。かつて、FIFA女子ワールドカップ中国2007を前に、なでしこジャパン(日本女子代表)では右サイドバックにコンバートされ「得点力ある安藤梢をディフェンダーで起用すべきなのか」論争が巻き起こってから16年。今度はセンターバックで円熟のプレー見せ、ファン・サポーターから大きな拍手を浴び続けました。奪ってからの素早い縦への展開、相手の守備の組織を混乱に陥れるドリブルでの前への運びが効果的で、M V P候補の最有力です。
チャンスを掴んだ「昨シーズンは出場試合数0の新鋭センターバック」石川璃音選手は移籍した南萌華選手の穴を埋めるどころか、かつて赤いユニフォームで活躍した熊谷紗希選手を上回る強いインパクトを見る者に与えました。強さ、高さ、速さ、奪ってからのパス選択もセンスに溢れ、全てを兼ね備えた彼女を圧倒できる対戦相手のアタッカーは、WEリーグに存在しませんでした。安藤選手とのコンビは、長年に渡るベテランコンビのように円滑でした。
それに加えて、昨シーズンのリーグ戦は出場なしのゴールキーパー・福田史織選手が優れた技術と攻撃センスを披露。2020プレナスなでしこリーグ優勝の立役者だった栗島朱里選手が右膝前十字靭帯損傷から復帰。塩越柚歩選手はボランチで起用され続け、新境地を開きました。こうした、厚く充実したセンターラインが、三菱重工浦和レッズレディースの負けない試合運びを確固たるものとしていきました。
地力があるからこそ安定した試合運びで勝ち続けることができた
この優勝をひと言で表現すれば「安定」。良い意味で「ポジションごとの分業」が見事でした。振り返ってみれば、最後のなでしこリーグを森栄次監督の指揮で優勝。1年目のWEリーグも優勝候補に挙げられていましたが、森総監督と楠瀬監督によるダブル体制で「話し合いながら新しいことも取り入れる」やり方は、チームづくりの過渡期を感じさせ、惜しくも2位に終わりました。2022年5月に森総監督が退任し三菱重工浦和レッズレディース アカデミーダイレクター専任となり、今シーズンは楠瀬監督が首尾一貫して自らの色を打ち出した印象です。
「三菱重工浦和レッズレディースが今シーズンの中心になる」……そう感じさせたのは、2022年9月25日に熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で開催されたちふれASエルフェン埼玉との一戦でした。
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