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90分後にキックオフ J1×なでしこリーグ1部の男女「ダブルヘッダー」はなぜ異例の平塚で実現したのか

三村ロンドさんはスタジアム・ナビゲーター(D J)界の匠。優しさ、温かさが滲む低音ボイスが魅力です。湘南ベルマーレ・スタジアム・ナビゲーターを20年も務めています。2023年5月13日(土)、レモンガススタジアム平塚で開催された第二試合で大和シルフィードの先制点に「ぐぉーーーーーる!」というゴール・アナウンスがこだましました。その美声は、つい先程まで同じピッチで繰り広げられていた第一試合で湘南ベルマーレが得点した際と全く遜色がありません。盛り上がるムード。メインスタンドでは、グリーンのユニフォーム姿、オレンジのユニフォーム姿のファン・サポーターが夜空に拳を突き上げていました。

極めて異例の「ダブルヘッダー」が開催されました。15時キックオフの2023明治安田生命J1リーグ第13節 湘南ベルマーレ×北海道コンサドーレ札幌の試合終了から約90分後の18時30分キックオフで大和シルフィード×日体大SMG横浜を開催したのです。

第一試合の素早い撤収に協力した湘南ベルマーレ・サポーター

この試合は3つの点で異例の開催でした。

1 J1となでしこリーグ1部の組み合わせであったこと
この2年間の多くの「ダブルヘッダー」はJリーグとWEリーグで開催されてきました。なでしこリーグはアマチュアリーグです。

2 ホームタウン外のスタジアムで開催されたこと
大和シルフィードのホームタウンは神奈川県大和市。大和駅から平塚駅までは乗り換えが必要で、電車に乗って45分程の移動を要する距離があります。

3 インターバルが90分間で行われたこと。
1990年代にはインターバル30分間で開催されたこともありますが、この2年間では120分以上を空けて開催することが定番化していました。

集客に一役買った湘南ベルマーレ自慢のスタジアムグルメ(大アジフライとしらす入りメンチ)

「健闘」に終わった大和シルフィードの「ダブルヘッダー」

この「ダブルヘッダー」の第二試合の入場者数は373人。決して多い数字ではありませんが、ここまでの大和シルフィードのホームゲームは平均入場者数が285人であり、ホームタウンから離れたスタジアムでの雨天開催だということを考えると「健闘」の域に達したのではないかと考えられます。では、大和シルフィードの「ダブルヘッダー」は、どのように行われたのでしょうか。

第一試合の開始前、ハーフタイム、終了後にチラシを配布する大和シルフィードの選手。

大和シルフィードで代表取締役を務める大多和亮介さんは「ダブルヘッダー」開催を前にして、自らのnote(https://note.com/ryosukeotawa/n/ne33fbc015dcc)にこのように綴りました。

「湘南ベルマーレの多大なる協力により、この日はベルマーレが誇る大人気キッチンカーが10台以上も残ってくれますし、告知や運営も最大限のサポートを頂いています。Jリーグの試合を見終わって、最高に美味しいキッチンカーでビール一杯飲んだら、もう女子のウォーミングアップ始まります。」

湘南ベルマーレフードパークにはグリーン、レッド、オレンジ、ブルーのユニフォームが混在した

湘南ベルマーレとサポーターの協力で成立したインターバル90分間

この日の「ダブルヘッダー」について時間を追って振り返ってみましょう。

第一試合は15時にキックオフし17時前に試合終了となり、湘南ベルマーレと北海道コンサドーレ札幌の多くのファン・サポーターは17時30分までに退出。帰路に着きます。ここで驚いたのは試合後の撤収の早さ。特に、両クラブのゴール裏に陣取るコアサポーターは素早く横断幕等をスタンドの外に運び出し、運営スタッフや作業スタッフが撤収業務をスムーズに行えるようスタンドを明け渡したのです。フットボールファミリーの連帯を感じる場面でした。湘南ベルマーレのスタッフのみならず、このようなファン・サポーターの協力があって90分間のインターバルでの「ダブルヘッダー」が成立します。

横断幕を規定の退場完了時刻よりも早くスタンド外に運び出した北海道コンサドーレサポーター。雨天で水を吸った横断幕は重く大変な作業。

Jリーグ屈指の評判・湘南ベルマーレフードパークで12店舗が第二試合開始時刻まで営業

雨具を着込んだファン・サポーターをスタジアム外で待ち受けるのが湘南ベルマーレフードパーク。この日はシャトルバス乗り場に向かう道沿いに12店舗のキッチンカーが18時30分まで営業。あいにくの雨と4失点の後味の悪い試合運びもあって足早に通過する人が多かったですが、フィンガーフードやスイーツのキッチンカーには列ができるところもありました。やはり質の高いスタグルの力は絶大です。ある販売事業者にお聞きしたところ、過去に実施した試合終了後の販売と比較すると、キッチンカーに足を止める人が多いのではないかとのことです。

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