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4月29日(土) 千葉Lのホームゲームは市原開催 WEリーグ観戦に向かう道で高度経済成長期の痕跡を探す #女子サカ旅

ジェフユナイテッド市原・千葉レディースが2023年4月29日(土)にゼットエーオリプリスタジアムでホームゲームを開催します。対戦相手はちふれASエルフェン埼玉。4月24日にトレーニングが公開されましたので、お話をうかがいました。まず、トレーニングの印象ですが、とても大きな声が飛び交っていたことが強く印象に残りました。ウィンターブレイク頃とは、かなり雰囲気が違います。ジェフユナイテッド市原・千葉レディースの直近4試合の戦績は4戦負けなし(1勝3分け)。シーズン序盤に多かった失点も、この4試合では2に抑えています。守りの堅い「しぶといジェフ」が帰ってきました。

市瀬千里選手は、チームの雰囲気について、このように話してくれました。

スタメンスターティングメンバー入れ替わったりいろんな選手いろんなポジションやったりするので競争激しくなりよりも声を出すところもアピールポイントなるので、声が出ているのだと思います。」

ウィンターブレイク以降の試合で出場のチャンスが巡ってきた選手は、ピッチで積極的にチャレンジしています。トレーニングでも同様です。

トレーニングが少しでも止まると議論が始まる

前節に初ゴールを記録した今井裕里奈選手は「声を掛け合っ勝利だけ目指しいる」と話します。最近は、従来からのポジションだったボランチではなく、右のサイドハーフでの活躍が目覚ましい選手です。紅白戦でも、アグレッシブにボールを前に運ぶシーンが目につきました。

「(失点を)0抑えれるようしてなきゃいけないもちろんです勝つためには点をとなきゃいけない。そこ全員やっいきたいです勝負世界なので簡単に勝つ難しいです全員こだわっやっいかなきゃいけない思います。自分たち楽しくワクワクできるサッカーにしないてるも(楽しさが)伝わらない思うのでそういう部分見せられたらと思います。ている人は得点を見たい思うのでゴール迫っいくシーンシュートシーンもっと増やしいきたいです。

全員という熟語を多用しました。

今井裕里奈選手

前回のちふれASエルフェン埼玉とのアウェイでの対戦は1−3で敗れています。三上尚子監督は「相手速攻を警戒しっかりながら得点したい」とゲームプランを練ります。また、セットプレーの守備の見直しを行なっています。市原市出身の三上監督にとってゼットエーオリプリスタジアムでのホームゲームは、正真正銘の地元開催となります。そして、選手として、何度もプレーしたスタジアムでもあります。

ずっと、なでしこリーグ時代も、中学生のときも、あの競技場でやらせてもらいました。そういう意味では雰囲気よくやらもらっいるので、しっかりと、そこで勝ちたいと思っています。」

三上尚子監督

かつては市原臨海と呼ばれたゼットエーオリプリスタジアム

ゼットエーオリプリスタジアムは市原緑地運動公園内にあります。かつては市原緑地運動公園臨海競技場(市原臨海)と呼ばれていました。スタジアムに隣接する工場の向こう側は東京湾です。

ここからは最寄駅からゼットエーオリプリスタジアムに至るまでの街角に残る高度経済成長期の痕跡を眺める #女子サカ旅 をご紹介します。

市原市の味覚といえばジビエ料理

市原駅は叡山電鉄鞍馬線の駅。京都府京都市左京区にありますが……千葉県市原市にあるゼットエーオリプリスタジアムの最寄駅は五井駅です。市原市は1963年(昭和38年)5月に五井、市原、姉崎、市津、三和の5町が合併して誕生しました。千葉県で最も大きな面積の市です。臨海部は日本の高度経済成長期を支えた石油化学コンビナートを有する工業都市。大手企業が多数進出し、コンビナート群が形成・発展しました。内陸部はゴルフ場が多いことで知られています。また、水と緑豊かな里山の風景が広がり養老渓谷等の自然に恵まれた観光地でもあります。

五井駅の脇にあるこみなと待合室

五井駅と里山を結ぶ小湊鐵道は大正時代に生まれた私鉄です。2017年に創立100周年を迎えました。かつては小さな2階建ての高速バス乗車券発券所があった五井駅のすぐ脇に小湊鐵道直営によるカフェ・スペースが併設された待合室がオープンしたのは2021年のこと。その名をこみなと待合室といいます。コーヒー等のドリンクに加えて、小湊鐵道が走る市原市の内陸部で捕獲される鹿や猪等の肉を利用したジビエソーセージを味わうことができます。

こみなと待合室のジビエドッグ

公害と国体により整備されたスタジアム

ゼットエーオリプリスタジアムそのものが、高度経済成長期の痕跡といえます。スタジアムのある市原緑地運動公園は、公害が社会問題として盛んに報じられていた昭和43年に工業地帯から発生する大気汚染などの公害や災害を防ぐための緩衝緑地です。公害防止事業団により設置されました。この緑地を境に海側が工場地、陸側は住宅地となっています。

ゼットエーオリプリスタジアム

ゼットエーオリプリスタジアムは1973年に千葉県で開催された第28回国民体育大会(若潮国体)のサッカー会場として使用されました。市原市にとっては市政10周年の記念の年でした。高度経済成長期は国民体育大会の開催地になるとスポーツ施設が拡充され「国体道路」と呼ばれる地域インフラの整備も進むため激しい誘致合戦が繰り広げられました。また、国体を契機に、市原市内では中学校や高校に指導者が配置され、子どもたちが気軽にサッカーを楽しめる環境が整っていったと『広報いちはら 市原市とジェフの30年』は伝えています。国体は高度経済成長期の夢にあふれたスポーツイベントでした。デューク・エイセス&三矢恵子によるレコード『若潮国体音頭』も発売されました。

ゼットエーオリプリスタジアムの向こう側は工場地帯

高度経済成長期とは昭和30年(1955年)から昭和47年(1972年)にかけてのことをいいます。その頃の日本経済は右肩上がりで国民の所得は急増。社会は日々便利になっていきました。市原市は高度経済成長期に石油コンビナートで働くために住民が大量に流入し人口が急増しました。今、市原市は、その世代が一斉に後期高齢者となる2025年問題を抱えています。そして、高度経済成長期につくられたインフラは老朽化を迎えており、改修や修繕、取り壊しが進んでいます。

市原市に点在するスナックの看板から高度経済成長期を感じる

スナックという飲食店の業態が誕生したのは1964年の東京オリンピックの少し前だといわれています。「ママ」と呼ばれる女性店主や常連客同士の会話を求めて、働く男たちがスナックに集まりました。特に、大規模な石油コンビナートや製鉄所があった街には、無数のスナックがありました。今でも、君津市(千葉県)、鹿嶋市(茨城県)、北九州市(福岡県)を歩くと多くの看板が目に入ります。今から半世紀前の日本は、女性の専業主婦化が進み、性別役割分業体制が定着していった時代です。「男は仕事、女は家庭」という当時の常識が固まりゆく中で、スナックは、「ママ」が仕事を終えた男性の話を聞く飲食サービスという一面もありました(女性がオフィスで働くのが当たり前の環境となった今は、スナックの役割が当時と異なっています)。

五井駅からゼットエーオリプリスタジアムまでを歩くと、時代を感じるスナックの個性的な看板と出会うことができます。

レインボーカラーの『ピエロズ』

五井駅から五井大橋に向かう途中で見つけた典型的なスナック建物に印象的なレインボーカラーの看板がありました。もちろん、近年、レインボーカラーが象徴している多様性とは無関係だと思いますが……。この写真を撮影した時期は、まだまだ新型コロナウィルス感染症の脅威が大きかった頃。よく見ると「予約制」で営業していたことがわかります。飲食店には厳しい日々でしたね。

ピエロズ

平仮名で書くのがオシャレだった1980年代の痕跡『ぴあす』と『すなっく愛』

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