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関西の女子サッカーを盛り上げるために必要なこと 空席が目立つ皇后杯決勝戦のスタンドから感じる地域格差【石井和裕の #女子サカマガ PKど真ん中】

皇后杯 第44回JFA全日本女子サッカー選手権大会決勝戦はヨドコウ桜スタジアムで開催され日テレ・東京ヴェルディベレーザが4−0とINAC神戸レオネッサを圧倒。最多16回目の優勝を果たしました。最終的には得点差が開いたもののハイレベルな攻防は「これぞ女子サッカーの新時代」を感じさせ、N H KB Sの中継を視聴し驚きの声を上げた方も多いかもしれません。

ただ、少し寂しかったのは観客席です。入場者数は1千939人。これはサンガスタジアム by K Y O C E R Aで開催された前回大会の1千375人を上回ったものの、前回大会は新型コロナウィルス感染症の対策真っ只中。なでしこジャパン(日本女子代表)が世界一になった2011年以降の大会記録を見ると、入場者数が2千人を切った決勝戦は、この2大会しかありません。

多くの大会が開催される関西だが

空席の目立つスタンドを見て「多くのファン・サポーターの前でプレーさせてあげたい。決勝戦は首都圏で開催すべきではないか。」「関西の女子サッカーを盛り上げる意義は理解するが、もう少し入場者数を増やすことはできないのか。」「天皇杯とは観客数の違いが歴然。」といった声が相次ぎました。

WE Love 女子サッカーマガジンが毎月末に開催している #女子サカマガ 編集会議 でも「なぜ、入場者数が少なかったのだろう」という疑問が話題となったため、筆者は、急遽、関係者への取材を試みました。

ネオン輝く大阪の街

関西で多数開催される全国大会や国際試合

まず、確認したいのが、なぜ、関西で決勝戦が開催されているのかについてです。関西の大都市圏である大阪府、京都府、兵庫県には数万人を収容するスタジアムが多数あり、その中には屋根付き専用スタジアムが含まれています。それもあって、各府県のサッカー協会が競い合うかのように、全国大会や国際試合を誘致しています。その努力の結果、多くのビッグマッチが関西で開催されています。女子サッカーでは、皇后杯 JFA全日本女子サッカー選手権大会の他に、全日本高等学校女子サッカー選手権大会が兵庫県で、全日本大学女子サッカー選手権大会の1回戦から準々決勝までが兵庫県三木市で開催されています。また、初開催となったJ F A U-18女子サッカーファイナルズ2022もサンガスタジアム by K Y O C E R Aが会場となりました

サンガスタジアム by K Y O C E R A

関西のあるサッカー関係者に聞くと、このようなお話をしてくれました。

「熱心に誘致している面もありますね。そのおかげで、関西では多くの女子の大会を開催できています。入場料収入は少ないのですが、各協会は大きな赤字が出ないよう、やりくりをして大会運営をしています。」

都道府県のサッカー協会が全国大会を誘致するメリットの一つに「地域のプレーヤーがハイレベルな大会に触れるチャンスを創出する」ということがあります。例えば、会場ボランティアに参加した地域のサッカー少女たちが大きな刺激を受けた話はよく聞きます。しかし、チーム単位でのスタンド観戦があまり多くないという現実もあります。

その理由として考えられるのは新型コロナウィルス感染症の影響です。集団観戦リスクが少なからずあるため、長時間の集団行動を伴う観戦(のための移動)を敬遠する感情が存在するのは致し方ないことです。ただ、理由はそれだけではないようです。WEリーグの試合数も少なく、プレーしない人にとって、エンターテイメントとしての馴染みが薄い競技といえるかもしれません。筆者は、大阪在住の知人にWEリーグについて質問した際に「関東の方でなんかやっている」と回答された経験があります。

また、関西のサッカー関係者にお話をお聞きすると、このような声もありました。

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