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女子サッカーの美しい瞬間 ビジュアルレポート 魔の2分間を見逃さない INAC神戸レオネッサが朴康造監督らしさを見せつけた粘りの2−1 浦和を下し皇后杯準決勝へ進出。

カンセキスタジアムとちぎで行われた皇后杯 第44回JFA全日本女子サッカー選手権大会の準々決勝第2試合はINAC神戸レオネッサが2−1で勝利。2023年1月22日にサンガスタジアム by K Y O C E R Aで開催される準決勝に進出を決めました。選手の表情を捉えた39枚の写真で、試合の模様をお届けます。

試合終了のホイッスルが鳴り対照的な両チームの選手

浦和の一瞬の隙を突く2分間に2得点

三菱重工浦和レッズレディースにとっては魔の2分間でした。これ以上はないといっても良いほどの見事な立ち上がりでINAC神戸レオネッサを圧倒。パス、ドリブル、全てが素早く正確で素早く、再三再四、INAC神戸レオネッサ陣内深くに攻め入りました。INAC神戸レオネッサは前から奪うことを試みるが無理だとなると両サイドを下げて5バックとし全てのレーンを塞ぎにかかりました。

寒さを忘れる熱を伝え続けた浦和サポーター

三菱重工浦和レッズレディースは、その好調さが裏目に出たのか前がかりとなり、ディフェンスラインの高さにずれが生じました。試合巧者のINAC神戸レオネッサは、それを見逃しません。21分に守屋都弥選手が、右サイドの空いたスペースにパスを要求。走り込むと、ロングボールが入り、三菱重工浦和レッズレディースの福田史織選手よりも早くボールに触れシュート。これがゴールラインに届く前に、長い距離を走りゴール前に現れた成宮唯選手が押し込み先制しました。

そして、その余韻が残る2分後の23分にボールを右に展開。またしても守屋選手が左足でクロスを入れ、大外で合わせた成宮選手が電光石火の追加点を奪いました。

歓喜が爆発する2ゴール

勝つことを証明できたINAC神戸レオネッサ

90分間を終えての試合結果は2−1でINAC神戸レオネッサの勝利。試合終了後、記者会見室に現れた三菱重工浦和レッズレディースの楠瀬直木監督は、まずこの言葉から試合を振り返りました。

「ひと言で言うと『悔しくてしょうがない』です。これだけやってなかなかゴールを割れず、あの2本でやられてしまいました。」

失点の場面では、最終ラインの押し上げで少しラインが崩れたかもしれません。逆に、INAC神戸レオネッサの朴康造監督は狙い通りの勝利に満足でした。

「(立ち上がりは)正直ヒヤヒヤした時間でした。浦和の前からのハイプレス、選手間の距離も良いです。もしかすると、ある程度は(主導権を)握られるかもしれないと予想していました。自分たちの狙いはロングカウンター、ショートカウンター、ミドルカウンター。サイドのスペースがポッカリと開くことは分析していたので、自分たちがボールを持ったらサイドチェンジを交えて早く攻めるところは狙い通りでした。」

INAC神戸レオネッサのゴールキーパーの山下杏也加選手は落ち着いた表情で試合を表現しました。

「どちらが勝ってもおかしくない試合です。でも、運ではなく実力で勝つことを証明できたのが今日の試合です。」

三菱重工浦和レッズレディースの1点は安藤梢選手

INAC神戸レオネッサは満身創痍で試合に臨みました。この2週間は紅白戦をするのにも困るチーム状況が続きました。トップチームの選手、スタッフに新型コロナウイルス感染症の陽性が出たため控え選手は5人。ツートップには高卒ルーキーの愛川陽菜選手とミッドフィルダーが本職の阪口萌乃選手が起用されました。最終ラインには、こちらもルーキの井手ひなた選手が出場。リーグ戦でも首位を争う強敵を相手に、どのような試合をできるのかを周囲は不安視していました。

フォワードで奮闘した阪口萌乃選手

2得点した成宮唯選手は、朴康造監督のチームづくりが、この試合の勝利を呼び込んだと言います。

「怪我人や体調不良者が出て難しい試合になると思っていました。チーム力で勝ち取った勝利だと思います。毎試合、レッズとは接戦です。レッズは良いチームですが、つけ入る隙はあると思っていました。良い形で2点入ったと思います。

去年に比べて、今年はチーム力が上だと思います。誰が出ても遜色なくプレーできるのが、今年のチームの良いところです。康造さんが、いろいろな選手を使いながら、その選手のモチベーションを上げています。選手にはそれぞれの良さがあります。皆の良さが生きるサッカーをできているときは良いゲームになります。」

朴康造監督も同様に、この試合を考えています。

「多くの選手を色々なポジションで起用していたことが今日の試合では活きたと思います。竹重選手を左のワイドなポジションで起用したのは初めてですが、三宅選手にアクシデントがあったときに迷いなく竹重選手を中央に起用できた。真ん中でプレーしていた伊藤選手を左に持っていくことができた。」

左から井手選手、三宅史織選手、土光真代選手でスタートした3バックは、試合終了時には井手選手、土光選手、竹重杏歌理選手、守屋選手の4枚となり、さらにその左外に伊藤美紀選手が下がり、三菱重工浦和レッズレディースの猛攻を耐えました。

少数精鋭のINAC神戸レオネッサ・サポーター

「粘り強い戦い」が信条の朴康造監督

三菱重工浦和レッズレディースに与えた直接フリーキックは16。反則になろうとも、勝ちにこだわる激しいサッカーを貫きました。朴康造監督は、これを「最後の最後までチームとして粘って闘って掴んだ勝利」と表現しました。

攻守にわたってチームを支えた伊藤美紀選手

朴康造監督は兵庫県尼崎市出身。兵庫県育ちのフットボーラーです。驚異的なスタミナとスピードを生かしヴィッセル神戸等で2012年までプレーしました。昨シーズンは2022年4月からINAC神戸レオネッサのアシスタントコーチに就任。今シーズンから監督として指揮を執っています。就任時には「自分のサッカー観を落とし込んでいきたい。より前から押し込んでいきたい。」と話しています。

朴康造監督のサッカー観とはどのようなものでしょう。そういえば、現役時代に、ヴィッセル神戸でJ1昇格を決めた試合の後も、このようなコメントを残していました。

「試合前に皆で『絶対粘ろう』と話した通り、みんなで粘り続けたことがひとつの結果として表れたのだと思います。」

朴康造監督の信条は「結果にとことんこだわる粘り強い戦い」です。現役時代の試合では、このようなシーンが強く筆者の記憶に残っています。

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