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女子サッカーの美しい瞬間 ビジュアルレポート 日テレ・東京ヴェルディベレーザはパスをつないで遠回りしない 3−0で快勝し皇后杯準決勝に進出

カンセキスタジアムとちぎで行われた皇后杯 第44回JFA全日本女子サッカー選手権大会の準々決勝は日テレ・東京ヴェルディベレーザが3−0で勝利。2023年月22日にサンガスタジアム by K Y O C E R Aで開催される準決勝に進出を決めました。選手の表情を捉えた30枚の写真で、試合の模様をお届けます。

序盤はサンフレッチェ広島レジーナの厳しい守備に苦闘しますが、43分に小林里佳子選手が左サイドを突破。カットインからグラウンダーのクロスで折り返し。これを受けた植木理子選手が見事なボールコントロールでマークを外し、予想外の角度でシュートを放ちサイドネットを揺らしました。

2得点目は66分。自陣でインターセプトした木下桃香選手がドリブルでボールを運びハーフウェーライン上からグラウンダーでカーブをかけた丁寧なスルーパス。右サイドのディフェンスライン裏に送り込んだボールを藤野あおば選手が前に運び、遠い位置からファーサイドにコントロールしたグラウンダーのシュート。このボールもゴールキーパーの手に届かずサイドネットを揺らしました。

藤野あおば選手

3点目は77分に小林里歌子選手が自陣で奪ったボールを受けた木下選手が中央でディフェンスラインの裏にスルーパス。これを再び植木選手が左足で右のサイドネットへ。いずれのシュートも力強いボールが美しい弾道でサイドネットに飛んで行きました。2点目は奪って5秒、3点目は奪って3秒でラストパスをする素早い攻撃。今シーズンの日テレ・東京ヴェルディベレーザを象徴するような得点でした。パスをつないで遠回りしない、縦に速く直線的な攻撃による快勝です。

植木理子選手

日テレ・東京ヴェルディベレーザの竹本一彦監督は、試合後の記者会見で木下選手についてコメントしました。

「後半の得点は木下のスルーパスからですが、あの仕事が彼女の役目で、彼女にしかできない繊細なサッカー・センスだと思います。」

チャントが定着してきたサンフレッチェ広島レジーナのサポーター

縦パスの出し先を見つけ素早く攻める日テレ・東京ヴェルディベレーザ

前回の対戦は2022−23 YogiboWEリーグ第節。日テレ・東京ヴェルディベレーザはサンフレッチェ広島レジーナに縦パスを厳しく制限され0−1で敗れました。その試合を宇津木瑠美選手はこのように振り返っていました。

「パスの出しどころがちょっとなかったというか、ボールを持たされている時間が長かった印象でした。少しうまくいっていなかった。」

宇津木瑠美選手

あれから約1ヶ月、今度は敗れることになったサンフレッチェ広島レジーナの主将・近賀ゆかり選手は前半終了間際の失点が試合を大きく動かしたと感じていました。試合後に「こんなに悔しい負けは久しぶり」とコメントしました。先月の勝利で勝てる方法は見つかったはずだったが、今回は前半終了間際に失点してしまい、得点を奪いにいく必要が生じたため、その弊害でマークが少しずれてしまったといいます。

「前半は何本かチャンスがありました。悔しいです。入りは悪くなかったと思います。あの縦パスに対しては、リーグでも今日もうまく対応できていました。ただ(前半終了間際に)失点してしまって攻めに行かなければならなくなって、前にかける人数を増やしたり、センターバックがもう少しボールにチャレンジしたりしました。少しずつ横も縦も間が空いてきたところが、リーグ戦とは違うところでした。」

途中交代となった近賀ゆかり選手 

徐々に縦パスを防ぐことができなくなったサンフレッチェ広島レジーナ

 序盤は効果的だった、縦パスに対するサンフレッチェ広島レジーナの激しい守備は、なぜ、時間が進むにつれて力を失っていったのでしょうか。1点リードで迎えた後半は、ほとんどの時間帯で日テレ・東京ヴェルディベレーザがペースを握りました。サンフレッチェ広島レジーナの中村伸監督は、日テレ・東京ヴェルディベレーザの選手たちの工夫を感じていました。

「我々に対してボールの動かし方、立ち位置の工夫をしてきました。もう一手間をかけてプレーしてきました。人につられてしまったところがあります。」

日テレ・東京ヴェルディベレーザの竹本監督は、この試合のために、選手たちに相手の守備のプレッシャーの逆手を取るアクションの大切さを強調してきました。逆手を取るためには、相手の動きを見なければなりません。そして「練習してきたことが結果として出たので嬉しいです」とコメントしました。会心の勝利でした。

「ボールをもらう前の準備で周りを見て、誰がどこにいるか、ディフェンダーがどこにいるのかをしっかりと見ること、自分の身体の向き……頭の中が成長しなければ偶然のサッカーにしかなりませんから、皆でしっかりやろうという意識づけをしました。」

声出し応援のサポーターに勝利の報告

メンバーが揃った12月からの変化

昨シーズンの日テレ・東京ヴェルディベレーザは、中央でパスをつなぐ攻撃が多く、圧倒的なポゼッション率ながらも、その率に見合った決定的なチャンスをそれほど多くは作り出せないという課題がありました。

今シーズンの日テレ・東京ヴェルディベレーザは、選手の距離を従来のイメージよりも遠くし、一人ひとりがボールを前に運ぶサッカーを披露しています。国内での初戦は2022年8月27日に行われた2022−23WEリーグカップ グループステージ 第2節。ジェフユナイテッド市原・千葉レディース戦でした。4バックは左から宮川麻都選手、岩清水梓選手、村松智子選手、西川彩華選手。攻撃力に優れた清水梨沙選手が海外移籍し、やり方を一新しました。センターバックの経験が豊富な西川選手を右サイドバックに置くことで、ボール保持時は岩清水選手、村松選手、西川選手が残り、左サイドの宮川選手は高い位置へ。右サイドは前線で藤野あおば選手が幅をとり、突破を一人で担当する布陣でした。

宇津木瑠美選手

12月に入ると、多くの選手のコンディションが整い、先発起用する選手が代わっていきます。宮川選手は左サイドバックから右サイドバックにポジションを変更。代わって左サイドバックに入ったのはベテランの宇津木選手です。前回のサンフレッチェ広島レジーナ戦での敗戦を経てチームが大きく飛躍していきます。怪我から復帰した小林選手も先発メンバーに定着しました。

小林里歌子選手

ゴールキーパーの田中桃子選手は、ディフェンスラインと連携しゴールを守ってきました。

「チーム全体としてやりたいことをずっと共有してきていて、本来ならば誰が出場してもできるようにしたいですが、経験のある選手が入ってきて安定している部分はあります。」

2つのアシストで試合を決定づけた木下選手は手応えを感じています。そして、まだ、これからも攻撃の精度は上がってくと話します。

「今の形でやり始めたのは最近です。少しずつ発展させている途中です。まだまだできることがあると感じるので面白いですし、結果がついてきているので、すごく嬉しいです。」

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