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パススピードとファーストディフェンダー 危機感漂うなでしこジャパン(日本女子代表)がスペイン女子代表戦に臨む

なでしこジャパン(日本女子代表)は強豪のスペイン女子代表(F I F Aランキング6位)と対戦します。N H K B S1で2022年11月16日()9時より録画中継会場されます。会場はエスタディオ・オリンピコ・セビージャ。過去にU E F Aカップ決勝戦で使用されたこともある陸上競技場です。 

イングランド女子代表に圧倒された90分間 

岩渕真奈選手(アーセナル)は「点をとらないと勝てないので全員で迫力を持っていけたらと思います」と語りました。キャプテンを務める熊谷紗希選手(F Cバイエルン・ミュンヘン)は「危機感しかないから、自チームでやるべきことはすごく多いと思う。皆で合わせながらやっていくしかないと思います。」と語りました。なでしこジャパン(日本女子代表)は強い危機感に包まれています。

岩渕真奈選手(アーセナル)

今回の欧州遠征の初戦はUEFA欧州女子選手権イングランド2022(ユーロ)を制したイングランド女子代表(F I F Aランキング4位)に0−4で完敗。ポゼッションは39.9%と試合のほとんどの時間帯を支配されました。10月の強化合宿から取り組んでいる3−4−3のシステムで試合に臨み多くの課題が露呈しました。中3日で迎えるスペイン女子代表戦を翌日に控え、監督、選手は、どのように試合を振り返り、何にトライしていくのでしょうか。お話をお聞きしました。

ファーストディフェンダーをもっとはっきりさせないといけない

岩渕選手はワントップに近いポジション。前線の3人は宮澤ひなた選手(マイ仙台)と長谷川唯選手(マンチェスター・シティ)がそれほど幅を取らず、典型的な3トップというよりも、いわゆるシャドーストライカーをイメージするポジションを取ることが多い布陣です。

守備に関してはイングランド女子代表がボールを保持した際に、プレスバックが不十分と感じられるシーンや、素早くサイドに展開されると両翼のウイングバックが一対一での対応を強いられる場面が目立ちました。

イングランド女子代表はスペースへのパスで立ち位置を動かしながら余裕を持って自陣でパスをつなぎました。左サイドをウイングバックの裏に突破されたと同時に右サイドをフリーランニングで振り切られたことで生まれた2失点目(53分)はこの日の試合を象徴しています。池田太監督は試合直後に、試合全体を通して「ファーストディフェンダーをもっとはっきりさせないといけない」とコメントしています。どのように考えれば良いでしょうか。

強度によって後ろの守備が決まってくる

池田監督は「守備者の位置」よりも「守備の強度」が不明瞭ではっきりしなかった課題を強調しました。「前線の守備のスイッチが曖昧ですと、後ろの選手が『どこまでの強度でプレスに行く』のか、『少しぼかしながら相手のボールの動かしに対応していく』のか迷いが生じてしまうことがある」という見解です。後の選手のプレスの連動性が思った通りにできなくなってしまい、イングランド女子代表に効果的なパスを通されてしまったというのです。スピードダウンさせることなくサイドに大きく展開されると、タッチライン際で数的不利な状況が生まれやすく、時間を重ねるごとに清水梨紗選手(ウエストハム・ユナイテッド)、遠藤純選手(エンジェル・シティF C)の守備の負担が大きくなっていきました。さらには、スピーディーにタッチライン際を突破された際に、3バックのスライドが間に合わないと大きなピンチを招きました。

猶本光選手(浦和)

この試合をベンチから見つめた猶本光選手(浦和)は、今回の遠征では主にボランチのポジションでトレーニングしています。

「まずは守備の部分で前線からのプレスを剥がされてピンチになる状況が多かったので、どうやってチームとして奪いにいくかを修正していけると思います。」

そして、ウィングバックが高い位置に出て守備をするやり方について課題が明確になったと捉えています。

「後ろにリスクがあると思いながらだと前に行きにくいと思うので、相手のフォワードに簡単に入らないようにパスコースを切り、ボールサイドにしっかりとマークに付くスライドが助けになると思います。」

スペースを与えず厳しい守備は日本の持ち味。守備の連携は日本の命綱です。

ボールに対してどうチャレンジするかも重要

熊谷選手は、2日間を経ても悔しさを滲ませます。まだ成果の現れない3−4−3ですが、今、諦めることはないと言います。

「相手のフォーメーションや特徴によって変えられることは大きいと思う。(3―4−3のオプションが)『やりやすい』『やりにくい』よりも、いかにみんなができるようにやるかが大事になると思います。そこにフォーカスして取り組んでいきたいと思います。」

ただ、サッカーはシステムだけでやるわけではありません。

「守備範囲を広くすることが一番重要。イングランド女子代表戦では、一人ひとりの守備範囲が狭すぎてパススピードや(相手の)立ち位置で解決されている部分がありました。チームとしてスペースを守ることは重要ですが、最後はボールに行くというところが、もっとあって良いのではないかというか『結局はボールに対して守る』ということを忘れてはならないと思います。」

熊谷紗希選手(F Cバイエルン・ミュンヘン)

極めて少ないファール数から浮かび上がる守備の消極性

ここまで圧倒された試合ですが、実は、なでしこジャパン(日本女子代表)が犯したファールは4つしかありません。

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