WE Love 女子サッカーマガジン

WEリーグ注目選手 宮澤ひなた選手(マイナビ仙台レディース) 良い選択肢を選び続ける選手になりたい(後篇) 乗り越えた「19歳の迷い」

2シーズン目のWEリーグが開幕しました。いち早く開幕を飾ったのはマイナビ仙台レディースでした。2022年10月22日13時5分にユアテックスタジアム仙台でキックオフされた開幕戦はマイナビ仙台レディースがちふれASエルフェン埼玉を3−1で下す快勝。第2節は長野Uスタジアムで2−1と逃げ切りの勝利。2試合とも宮澤ひなた選手はフル出場しました。

宮澤ひなた選手(マイナビ仙台レディース)のプロフェッショナルスピリッツ 2022−23 YogiboWEリーグに挑む(前篇) チーム成長の過程

今回は宮澤ひなた選手のインタビュー取材記事の後篇です。開幕直前に掲載した前篇では2022−23 YogiboWEリーグに向けた準備をお話しいただきました。今回の後篇では、宮澤選手が乗り越えてきた「19歳の迷い」を中心に、宮澤選手のプロフェッショナルなスピリッツのバックボーンがどこにあるのかを探求していきます。

良い選択肢を選び続ける選手になりたい

なでしこジャパン(日本女子代表)でプレーするのは楽しいですか?

宮澤楽しいです。海外の選手との対戦で、何かを掴みたいですし、自分が中心となってやりたいと思っています。2011年に世界一になった先輩方を見てきたので、今、自分がここに立っているのは、ちょっと不思議ですけれど、自分がその(2011年に世界一になった先輩方と同じ)立場にいるから「何をするか、何を発信できるかに、もっとこだわってやっていきたい気持ち」が、どんどんと強くなっています。

なでしこジャパン(日本女子代表)では中盤のポジションでの役割も多く求められていますが、いかがですか?

宮澤所属チームで求められることと代表チームで求められることが違うのは当然です。立ち位置がどうあれ、チームとして目指すのはゴールですし目の前の相手に負けないことを強く意識してプレーしています。

マイナビ仙台レディースではトップ下でプレーすることが多いですが、なでしこジャパン(日本女子代表)だと中盤のサイドでプレーすることもあります。見える角度が360度から180度に変わりますし、短期間でチームメイトに合わせる必要もあります。難しいところもありますが、難しさよりも「違った視点でゲームをできる」のは楽しいです。

ポジションによって魅せられるプレーが違います。ポジションによってプレーを変えていくことを意識しています。やりづらさを感じたことはないですね。チームのやり方を守りつつ、自分の持ち味を出していくバランスを保つことが大事だと思います。

トップ下だと相手が360度、いろいろなところにいるので、スペースを見つけながらパスを受けても、前を向くと相手が正面に立っていることが多く、味方を使う工夫が必要です。サイドの場合は、基本が一対一なので、一人を抜いたら味方がフリーで受けられます。中にポジションを動かした場合は味方の選手と関われる選択肢が増えてくると思いますが、自分のスピードを無駄にしてはいけないと思います。

「ひなたといえばスピードだよね」と言われますが、そのスピードのあるプレーができなくなった時期も過去にはありました。そうした経験を踏まえて「パスもあるし、スピードもあるし、どう対応したら良いのだろう?」と対戦相手に思われるくらい、いろいろな選択肢を持った選手になりたいです。そして良い選択肢を選び続ける選手になりたいです。

決断が遅くなり自分の持ち味を失った「19歳の迷い」

宮澤19歳のときにスピードのあるプレーができなくなりました。高校生のときから、ただ感覚的に仕掛け続けるプレーを繰り返していたのですが、対戦相手に対応され始めて「自分が突破するよりもパスを出して走った方がゴールに近いのではないか?」という考えが浮かんでいました。

その頃、永田(雅人)さんから選択肢の作り方というか、ボールの持ち方を学びました。「こうやって持ったら、ここが空く」「こういう持ち方もある」といったことを教わった時期で、初めて違った視点からサッカーを見ることができました。サッカーをより深く知ったことで「この選手を使える!」「こちらも見える!」「どうしよう!?」……選択肢が増えると決断が遅くなり、プレーに一瞬の迷いが生じるようになりました。その迷いのせいで相手に対応され、自分の持ち味が出なくなって試合に出場できない時期がありました。

パスを出せなかったことを後悔するんですよね「この選手もいたのに」とか……。トップスピードで走り込んでくれた選手を使うべきなのか、囮でも良いのか、一瞬で判断しなければなりません。迷った結果、バックパスしか選択肢が残らなくなっているときもありました。「気持ちが行き詰まっていた時期」でしたね。

「(最近)スピードないよね」と、高校生のときからの友人や親から言われることがありました。ずっと見ている人は気づくのだと思います。周囲からたくさんのアドバイスをいただきましたが、自分には失敗を重ねていくしか解決の方法がありませんでした。

そのような難しい時期を経て、今はパスで剥がすべきなのか、自分がドリブルで割っていくべきなのか、その使い分けを一瞬でできるようになったと思います。「ここにボールを置いたら、この選手を使えるしドリブルもできる」というボールの置き場所が身についてきていると感じます。相手が詰めてきても「これくらいのスペースがあれば大丈夫」という余裕を持てるようになったと思います。あの頃の苦しい経験があって、本当に良かったと思います。

(残り 1183文字/全文: 3431文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ