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常識を覆すミドルシュートとボール奪取 FIFA U-17女子ワールドカップ インド2022から見える日本の女子サッカー育成年代の変化

インドのゴアは、美しいビーチが人気を集めるリゾート地。インド国民の大半はヒンドゥー教徒ですが、ゴアには大きなキリスト教会があります。西洋とインドの文化が融合した独特の文化を育む地域です。インドの気候は地域によって異なります。ゴアは熱帯モンスーン気候。プレーの障壁となる多湿が特徴です。

ペナルティエリアの外から得点を強奪する

ゴアでFIFA U-17女子ワールドカップ インド2022のグループステージを戦うリトルなでしこ(U-17日本女子代表)が躍動しています。グループDに入ったリトルなでしこ(U-17日本女子代表)はU-17タンザニア女子代表、U-17カナダ女子代表、U-17フランス女子代表と対戦。2連勝でグループステージを突破しました。体格に勝る対戦相手にも怯むことなく、高い位置でボールを奪い速攻からシュートに持ち込むシーンが印象的でした。

 U-17カナダ女子代表戦では9分に先制し、試合を優位に進めました。相手陣内で3人が囲みボールを奪うと久保田真生選手(藤枝順心高校)が右足を振り抜きゴールネットを揺らしました。ペナルティエリアの外からでも、躊躇なく得点を狙う久保田選手の特徴が見事に発揮された得点でした。

今大会のリトルなでしこ(U-17日本女子代表)はペナルティエリアの外から放つ強烈なミドルシュートが目立っています。37分の追加点もペナルティエリアの外から。白垣うの選手(セレッソ大阪堺レディース)が右サイドからシュートを狙い、ディフェンダーに当たったボールはスピードを落とすことなくゴールに吸い込まれました。

チームを率いる狩野倫久監督は、日本の女子サッカーは「寸分違わずパスを通すような精密な連携プレーをできる特徴」を持っていると考えています。オリンピックの陸上競技に例えれば「よーいドンでは100メートルを勝てないかもしれないけれど、バトンを繋ぐリレーで勝っていける」というのです。

しかし、今大会のU-17日本女子代表(U-17日本女子代表)は、そのような精密さに加えて、力強さでチーム力を向上しているように感じます。見る人に強いインパクトを与えているのは「強いシュートを放つ力」と「ボールを奪う力」です。いずれも、これまでは「日本の女子サッカーの弱点」であることが常識とされてきました。

ミドルシュートとボール奪取……常識は覆されました。日本の女子サッカーの育成年代は、いつの間に弱点を克服し、逆に強みに変えていったのでしょうか。

基準を世界に置き全国の「各チーム」が取り組んできた選手育成

J F Aテクニカルスタディグループは、F I FAの国際大会をはじめ多くの試合を分析。日本の女子サッカーが世界に追いつき追い越すために必要なことを全国の指導者に発信し続けています。

「ゴールに向かう意識が海外の選手に比べて低いデータが出ていました。なので、ゴールにアグレッシブに向かう、もしくはチャンスを逃さない、隙を見つけていくことを常に意識してトレーニングしています。選手たちがチャレンジしています。だからこそ筋力的にも向上し、しっかりと踏み込んでミートできる、力強くシュートを打てる選手が出てきていると思います。」

狩野監督は、U-17日本女子代表でのトレーニングについて、そのように説明しましたが、それに加えて「基準を世界に置き『各チーム』で取り組んでいます。」とも表現しました。

ではU-17日本女子代表チームでトレーニングする以前に「各チーム」では、どのような取り組みをしてきたのでしょうか。久保田選手をはじめ3人の選手がU-17日本女子代表(U-17日本女子代表)に選出されている藤枝順心高校の中村翔監督は日頃から全スタッフが、基準を世界に置く意識でトレーニングに取り組んでいると言います。

「ボールを保持しながらフィニッシュにいくことは男子含めて日本の良さとされてきましたが、全てのゲーム、時間において保持できるとは限りません。その中でいかに素早くボールを奪い取れるか、高い強度で持続できるかはとても大切な要素だと思います。

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