WE Love 女子サッカーマガジン

2022−23 YogiboWEリーグ チーム紹介と注目選手 現状維持ではない全11チームの見どころ

2022−23 YogiboWEリーグは2022年10月22日に開幕します。プロリーグ化の真価が問われる2年目のシーズンです。その前哨戦ともいえる2022−23 WEリーグカップでは、WEリーグ初代女王のINAC神戸レオネッサがグループステージで敗退。各チームの実力差は接近し、先行きの見通しができないシーズン幕開けとなりました。決勝戦では三菱重工浦和レッズレディースが日テレ・東京ヴェルディベレーザを下して初代のカップ・ウィナーになりました。

INAC神戸レオネッサ、三菱重工浦和レッズレディース、日テレ・東京ヴェルディベレーザの3強に割り込む力を発揮するのはどのチームでしょうか。どのような好勝負が繰り広げられるのでしょうか。期待のニュー・スターは誕生するのか……今回は、2022−23 WEリーグカップを振り返り、各チームの現状と注目選手を紹介します。

ちふれASエルフェン埼玉

昨シーズンのつなぐサッカーの良いところを引き継ぎながら、激しさと速さを加え魅力的なチームに仕上がりつつあります。昨シーズンは失点が最多(33失点)。その失点を減らすと同時に得点を増やすため、相手陣でボールを奪う守備の徹底を目指しており、奪った後は最低限の手数でディフェンスラインの裏に侵入することを試みます。両サイドに突破力が特徴の選手を配置し、ダイナミックにドリブルまたは裏抜けでの攻略を狙います。今シーズン開幕前に目立った補強はありませんでしたが、昨シーズンの途中で新戦力を獲得できていたのはアドバンテージ。三浦桃選手、西川明花選手がすでにフィットしており中央でプレー。速攻以外の攻撃のバリエーションも格段に増えました。

吉田莉胡選手

優れたテクニックを有するウイングプレーヤーです。主に、祐村ひかる選手と、両翼を受け持ちます。一度足下にボールを置いてから駆け引きで一対一を突破する技術は驚愕。スピードの変化で抜け出す方法、浮き球で交わす方法、等々、様々な技を見せてくれます。FIFA U-20女子ワールドカップ コスタリカ2022の準優勝メンバーですが、あまり出場機会を得ることができませんでした。しかし、悔しさから得られた経験は、ひとまわりスケールの大きな選手になるための後押しとなるはずです。ミッドフィルダーでプレーすることが多いですが、終盤にフォワードとしてプレーすることもあります。

ノジマステラ神奈川相模原

チーム立ち上げからなでしこリーグ時代に指揮した菅野将晃監督がG M兼任で復帰。チームを作り直しています。菅野監督といえば「走り輝く」サッカー。選手全員が走力で終盤に力を発揮するイメージがあります。2022−23 WEリーグカップ第4節のサンフレッチェ広島レジーナ戦は84分に先制。その後、得点を奪い合い90分+4分に同点に追いつき2−2で引き分けました。ゴールキーパーを途中交代する等、チームづくりの通過点の印象が強い試合が続き、まだ、どのような試合をリーグ戦で展開するのか予想がつきませんが、昨シーズンよりも低下したように見えたインテンシティが高まれば、チームは上昇気流に乗るでしょう。選手間の距離が近く、昨シーズンとは全く異なるサッカーになりそうです。

藤原加奈選手

なでしこリーグ2部の静岡SSUボニータから加入した新星。2022−23 WEリーグカップは全試合に先発出場しました。最大の見どころはトラップ。どのようなパスでも、的確な場所にボールを置き、素早く次のプレーに移ります。特に、縦パスを受けて反転するスピードには目を見張るものがあります。ボランチでプレーしてもワイドなポジションでプレーしてもチーム全体を動かす攻撃のスイッチとなり、すでに欠くことができない選手になっています。ミドルシュートに力があり2得点を記録しました。

大宮アルディージャVENTUS

昨シーズンは最多の9引き分けと、勝ち切れない試合が多かったため、AC長野パルセイロ・レディースの主将だった五嶋京香選手を獲得し、中盤の守備の強化を図りました。残念ながら五嶋選手は怪我で戦線を離脱し開幕に間に合いませんが、球際や対人のトレーニング等で勝負強いチームへの脱皮を図っています。その結果、全体のインテンシティはかなり高まり、前からボールを奪えるようになった印象で、守から攻への切り替えが生命線になりそうです。ベテラン選手に加え、攻守の切り替えが早い国際試合で経験を積んだ乗松瑠華選手、井上綾香選手、杉澤海星選手が、飛躍の可能性を秘めたチームを牽引します。

仲田歩夢選手

昨シーズンの大宮アルディージャVENTUSで最も伸びた選手。左でも右でもワイドなポジションで前にボールを運ぶ力が上がり、怖い選手になりました。特に、周囲の選手とパス交換の際に自分がリターンを受けやすい丁寧なパスを出すことが増えたため、ワンツーで突破するシーンが目立ちました。左サイドから美しい軌道のクロスを入れる印象が強い選手ですが、右サイドからの力強いミドルシュートも魅力です。2022−23 WEリーグカップ第1節の三菱重工浦和レッズレディース戦では、中央に走り込みスルーパスをワンタッチでゴールに流し込みました。ゴール前に顔を出すことも増え、プレーの幅が広がっています。

アルビレックス新潟レディース

道上彩花選手という絶対的なエースと、左サイドから攻撃を自在に操る北川ひかる選手を擁しながら、新型コロナウィルスや怪我により道上選手のパートナー候補が定まっておらず、まだ、新たな得点の型を見出せていない印象です。それゆえに、2022−23 WEリーグカップでU-18に所属する田中聖愛選手が活躍したように、伸び盛りの若い選手がレギュラーポジションを奪うかもしれません。戦術的にも進化の兆しがあります。昨シーズンとは違い、簡単に守備ブロック形成へと妥協せず、高い位置で守る選択が増えました。相手陣内でボールを奪い得点に結びつける、積極的な守備を型にして上位進出を狙います。

園田悠奈選手

J A北越後農業アンバサダーに就任したことでも話題になりました。昨シーズンはボランチでの起用が多かったですが、今シーズンは大学時代に慣れ親しんだワイドなポジションで起用され、得意のドリブルを何度も披露しています。豊富な運動量でバイタルエリアやディフェンスラインの裏に飛び出せるのが長所。スペースを見つけられる選手です。ハーフスペースに侵入し、何度も得点のチャンスを創ります。プレーエリアが左の場合は北川選手が外、園田選手が中を受け持つことが多くなりそうです。

AC長野パルセイロ・レディース

咋シーズンからボールを奪って素早く縦にボールを動かすチームでしたが、今シーズンは、守備の面で、その特徴をさらに際立たせた印象です。特徴的なのは、対戦相手が楔のパスを入れた際の厳しいアプローチ。パスの受け手を簡単に振り向かせないために、背後から一気に距離を詰めます。また、ディフェンスラインの押し上げスピードはWEリーグ随一と感じさせるシーンもあり、統率された守備だけでも一見の価値があります。攻守に舵取りをするのは肝付萌選手。山梨学院大学時代に恩師・田代久美子監督から託されていた、ボランチのポジションに戻りました。今シーズンにAC長野パルセイロ・レディースの監督に就任した田代監督の意図を大学時代からの経験で理解し、守備に攻撃に、タッチライン近くまで中盤の広域を受け持ちます。2022−23 WEリーグカップはグループステージ無敗。上位チームとも十分に勝負できる力を披露しました。

川船暁海選手

下部組織出身の新エース候補です。特徴はディフェンダーを振り切るスピード。しかも、ダッシュ力で瞬時に差をつけるのが特徴です。第5節のちふれASエルフェン埼玉戦では、浮き球のクロスの弾道を見ながら、ディフェンダーとの距離をとってサイドに流れ、ゴールの右側から逆サイドのサイドネットに流し込む技ありシュート。マックスに近いスピードで走りながらワンタッチで枠にコントロールするシュートテクニックが光りました。

サンフレッチェ広島レジーナ

2022−23 WEリーグカップでは全試合で得点しました。昨シーズン、無敗街道を走り優勝したINAC神戸レオネッサに初めて土をつけたチームです。ただ、パスをつなぐことにこだわるがゆえか、自陣でボールを奪われてピンチを招くことが目立ちました。今シーズンはボールの奪い合いで勝ち切ることを目指してきました。その成果は表れていますが、守備の意識が、まだ、攻撃面で思い切りを失わせているような気がします。明るい材料は増矢理花選手の復帰とAC長野パルセイロ・レディースから瀧澤千聖選手の加入。いずれも突破力のあるドリブルとパスセンスがチームの新たなアクセントとなる可能性を持っています。上野真実選手の決め切る力、中嶋淑乃選手の「ヌメヌメしている」ドリブルといったストロングポイントを有しているチームなので、守備の手応えが攻撃に好影響を与えれば、一気に浮上することも考えられます。

柳瀬楓菜選手

高校時代から巧い選手でしたが、中盤でのボール奪取力が増して、プレーに凄みが出てきました。サンフレッチェ広島レジーナが「パスをつなぐチーム」のイメージから脱却し「得点を強奪するチーム」になるための鍵を握ります。やや深めのポジションからでも、的確なパス選択と自らがパスを受けるポジショニングの秀逸さで攻撃スピードを加速する力を持っています。キープ力もあるので中央で自らボールを前に運ぶことでディフェンダーのマークをずらし、サンフレッチェ広島レジーナの特徴となるサイド攻撃を展開しやすくできそうです。

マイナビ仙台レディース

昨シーズンは途中まで優勝争いを演じ、テクニカルな面白いサッカーで注目を集めました。中央でゲームをコントロールしていた長野風花選手が海外移籍し、白木星選手(引退)、浜田遥(N相模原へ移籍)、池尻茉由選手(引退)が抜け、2022−23 WEリーグカップでは、ゴール前にボールを運ぶ推進力が影を潜めてしまい、後手を踏むプレーが目立ちます。しかし、中盤には実力者が揃います。

(残り 3333文字/全文: 7647文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ