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J F A、大学生、WEリーガーが初連携 長野U開催なでしこジャパン国際親善試合を盛り上げる日本女子サッカー振興プロジェクト「W A K E  U P W―S O C C E R」 堀越大地さん(城西大学3年)、三谷沙也加選手(AC長野)の語る取り組み

なでしこジャパン(日本女子代表)が国際親善試合を行います。10月9日(日)14時55分キックオフのニュージーランド女子代表戦(M SA Dカップ2022)の会場は長野Uスタジアムです。

この試合開催を見据えて、9月末に一つのインスタグラム・アカウントが立ち上がりました。日本女子サッカー振興プロジェクト「W A K E U P W―S O C C E R」です。プロジェクトに参加する法政大学3年の松浦匠さんはコメントしています。

「今回のプロジェクトで女子サッカーの素晴らしさを1人でも多くの人に知っていただきたいです!よろしくお願いします!」

W A K E U P W―S O C C E R」インスタグラム・アカウントには、大学生、短大生、専門学生に限り、1名様を無料招待する「+1チケット」のご案内、なでしこジャパン(日本女子代表)のメンバー紹介、AC長野パルセイロ・レディースの選手がおすすめする長野の観光スポット等が掲載されています。

長野発これまでにない組織横断型(横連携)プロジェクト

実は、このプロジェクトには大きな意味があります。女子サッカー界では、これまでにない組織横断型(横連携)のプロジェクトなのです。なでしこジャパン(日本女子代表)の活動に大学のゼミとWEリーグチームの活動が連携するのは初めて。日本サッカー協会女子委員会は、今回の取り組みを通じて得られた経験を元に、今後も女子サッカーの普及発展に役立つ汎用性の高いコミュニケーションモデルを生み出すことを目指しています。

まず、このプロジェクトに関わる組織や人物をご紹介しましょう。

  • なでしこジャパン(日本女子代表)
    ●日本サッカー協会女子委員会
    ●AC長野パルセイロ・レディースをはじめとするWEリーグチームの有志選手
    ●法政大学 スポーツ健康学部
    ●城西大学 経営学部
    そして、試合開催日が近づくと参加の輪が自然発生で広がり、試合開催地の長野県にある信州大学の学生有志がネットでの告知活動を行なっています。

このプロジェクトのつなぎ役になっているのは城西大学経営学部 教授の山口理恵子先生です。山口先生は日本サッカー協会とWEリーグが共催する女性リーダーシップ・プログラムの講師を務めています。そして、以前より、法政大学スポーツ健康学部 准教授の伊藤真紀先生と女性スポーツに関する合同ゼミを開催しており、ゼミの一環として今回のプロジェクトを実施することになったのです。そこに試合の開催スタジアムである長野UスタジアムをホームスタジアムとするAC長野パルセイロ・レディースの選手有志が加わり、合同のオンラインミーティング、グループラインでの意見交換等を行いながらプロジェクトは進んできました。

目標を明確にしてたくさんのアイデアを検討

「(AC長野パルセイロ・レディースの選手と一緒にオンラインミーティングをして)選手の思いが強く伝わってきました。入場者数の目標を1万人にしたいと言われて驚きました。大学生は、今までの統計を踏まえて3千人くらいだと思っていたからです。1万人という具体的な目標が選手から大学生に伝わったので、その後は、たくさんのアイデアを大学生が出せるようになりました。」

堀越大地さんは城西大学経営学部の3年生。企業のマネジメントを学んでいます。堀越さんは、ジェンダー平等の学びからWEリーグに興味を持ちました。告知活動の規模を拡大するための広告展開、選手が考えたレシピでスタジアムグルメを提供したい……過去のなでしこジャパン(日本女子代表)の試合では行なっていない施策アイデアが、学生から、選手から次々に飛び出しました。

例えば、試合開催地をホームタウンとするAC長野パルセイロ・レディース選手が過去に対戦した経験談を盛り込んだなでしこジャパン(日本女子代表)メンバーの紹介動画や、大宮アルディージャVENTUS所属のなでしこジャパン(日本女子代表)メンバーによる自己紹介動画もありそうでなかった大学生によるアイデア。選手が自ら撮影し、大学生が編集しています。

堀越大地さん

AC長野パルセイロ・レディースの選手有志がアイデア出しから参加

三谷沙也加選手はAC長野パルセイロ・レディースの選手会長としてプロジェクトに参加する選手を募りました。このプロジェクトを女子サッカーや長野のスポーツの発展につなげていきたいと考えています。試合当日は、三谷選手を含めAC長野パルセイロ・レディースの選手も長野Uスタジアムに足を運ぶ予定です。

「これまで、集客方法をゼロから考えることはあまりありませんでした。どのようにすれば、皆さんの胸に響いてスタジアムに足を運んでくださるのか、不安と考える楽しさが入り混じってプロジェクトは始まりました。大学生と一緒にミーティングをすることで、自分の立場をお客様の立場に置き換えて考える経験を得ることができました。」

三谷沙也加選手

選手と大学生……同世代ではあるものの、全く異なる視点から意見を出し合う刺激的なミーティングが行われました。三谷選手はデジタルネイティブな大学生の検索能力、自由な発想や好む手法に驚くことがあったと言います。

「長野の観光名所をネットで案内するアイデアが出ました。大学生が長野のことを調べてくれて、住んでいる選手が知らない長野の観光地やご飯やさんまで教えてもらいました。観光で訪ねてみたい場所が、善光寺さんやお蕎麦だけではなく、自分たちとちょっと違う場所だったりもしましたね。」

そして、同世代ながら、全く異なるコミュニケーションの手法やビジュアルのトーンを求めていることにも気づきました。

「自分たちは(試合告知の)デザインにかっこよさを求めていたのですが『大学生には可愛さの方が人気ですよ』と教えてもらいました。選手が練習している間に、大学生の皆さんが、色々と調べてデータを挙げてくれたので、とても感謝しています。」

肝付萌選手、大久保舞選手、三谷沙也加選手

異なる視点をクロスすることで議論が活発に

WEリーグがスタートして1年が経ちました。プロ意識の浸透した選手の現場感覚が、プランをより確度の高いものにしていきました。オンラインミーティングが始まった当初は、大学生が「スタジアム内でファンに楽しんでいただくためのアイデア」をたくさん出していったそうです。しかし、ミーティングが進み三谷選手が挙手。「まず、スタジアムに来ていただくためのきっかけ作りをした方が良いのではないか」という発言から議論が一気に動きました。この一年のWEリーグでの経験が、発言につながったと三谷選手は言います。

WEリーグの入場者数目標は5千人でしたが、始まった当初はWEリーグを知らない人が多かったです。まず、試合の存在を知ってもらわないと集客のきっかけを作れないと思って発言しました。」

選手の経験談に大学生はターゲット分析で応えました。堀越さんは、そのときのことを振り返ります。

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