再編成が進むドイツから見える欧州女子サッカーのプロ化最前線 ドイツ在住の中野吉之伴さんに聞く
欧州女子サッカーが目覚ましく進化しています。プロ化を進めるスペインではUEFA女子チャンピオンズリーグ準決勝に9万1648人が来場し、女子サッカーの入場者数世界記録が更新されました。イングランドでは2022年7月6日から31日までUEFA欧州女子選手権イングランド2022(ユーロ)を開催されました。大会前にウィリアム王子がイングランド女子代表合宿を訪問。「国全体が皆さんを応援しています。」と激励しました。各地の試合会場は多くの観客を集め、特に決勝戦は8万7192人の超満員。男子を含めユーロの最多入場者記録を打ち立て、ファン・サポーターがイングランド女子代表の初優勝を後押ししました。
ドイツ女子代表は延長戦で敗れましたが準優勝。8回の優勝を誇るサッカー大国として力強さを示しました。ドイツはプロ化の波に乗り遅れているといわれますが、ブンデスリーガ(男子)でお馴染みの女子チームがリーグを牽引しています。ここ10年間はVfLヴォルフスブルクとバイエルン・ミュンヘンが女子ブンデスリーガの優勝を争っています。バイエルン・ミュンヘンでは熊谷紗希選手がプレーしています。
Unsere 𝑻𝑶𝑷 𝟓 𝑻𝑶𝑹𝑬 der Saison 2021/2022! 🔴⚪
Wir starten mit diesem starken Kopfball von Saki #Kumagai! 🔥 Welches Tor aus der letzten Saison sollte eurer Meinung nach noch in die Top 5? #FCBayern #MiaSanMia pic.twitter.com/BYFydFzHgi
— FC Bayern Frauen (@FCBfrauen) June 14, 2022
再編成が進むドイツの女子サッカー
かつての名門・1.FFCフランクフルトが2021/22女子ブンデスリーガの3位に入りました。1.FFCフランクフルトは、これまでに、山木里恵選手、熊谷紗希選手、安藤梢選手、永里優季選手ら多くの日本人選手がプレー。7回の女子ブンデスリーガ優勝、さらにはUEFA女子チャンピオンズリーグでも優勝経験があります。2020年に、長谷部誠選手の所属するアイントラハト・フランクフルトと統合。現在は、アイントラハト・フランクフルトの女子部門として活動しています。ボルシア・ドルトムントも女子チームを結成する等、ドイツの女子サッカーは、巨大化しつつある女子サッカーの新時代に合わせた再編成が進んでいます。
今回はサッカー育成指導者でドイツ在住の中野吉之伴(なかのきちのすけ)さんに、お話をお聞きしました。ドイツからの視点で、女子サッカーのプロ化と魅力について考えます。
【指導論】国際コーチ会議から学ぶ正しい価値観を共有することの大切さ。DFBタレントサポートプログラム主任「多すぎる情報は選手にとってマイナスに作用」
中野–先日、本大会前にドイツ代表とイングランド代表が試合を行ったときに、ドイツ代表は、ドイツ女子代表のユニフォームを着用しました。そうすることで、UEFA欧州女子選手権イングランド2022(ユーロ)に出場するドイツ女子代表への興味を喚起しました。これは面白い試みでした。
女子のクラブチームがアリアンツ・アレーナで試合をするのは初めて
中野–通常の女子ブンデスリーガの試合ですと、入場者数が3千人を超えると「入ったな」という感じになります。バイエルン・ミュンヘンがUEFA女子チャンピオンズリーグ準々決勝のパリ・サンジェルマン戦をアリアンツ・アレーナで開催。1万人超えが目標でしたが約1万5千人が集まりました。そもそも、女子のクラブチームがアリアンツ・アレーナで試合を開催するのは初めてのことでしたから、バイエルン・ミュンヘンが女子サッカーに力を入れていく動きを感じます。
—いつもはホームゲームに使用しているFCバイエルン・キャンパス(アカデミーの施設)はキャパシティが2千500人。パリ・サンジェルマン戦に1万人以上が集まったのは大きなニュースだったのですね。
中野–そうですね。お客さんがいっぱい入ったのは大きなニュースでした。選手にとっても初めての体験なので、記者会見で「たくさんの観客が集まること」に質問が集中しました。ドイツの女子サッカーも、これまでとは違った環境になってきていますね。
—それもあってか、この試合の中継はアリアンツ・アレーナの空撮映像からでしたね。
中野–はい、女子サッカーも男子と同じように魅力を伝えていこうと動いています。中継をYouTubeで見られるような配慮をしています。全体的な流れの中で行われた決断だと思います。
欧州では女性の社会進出が大きなテーマ
—ドイツにおいても女子サッカーの変革のタイミングと感じることは多いですか?
中野–今の女子ブンデスリーガはドイツサッカー連盟傘下で活動しているのですが、ブンデスリーガ(男子)をDFL(ドイツ・フットボール・リーグ)が管轄しているように、女子サッカーのための管轄機構を作るべきだという動きが出てきました。スタッフ、選手、監督からも声が挙がって動き出す段階に来ています。
(残り 2122文字/全文: 4376文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ