なでしこリーグは、なぜ加盟基準に常緑天然芝を求めるのか?女子サッカーのプレー環境を考える 【石井和裕の #女子サカマガ PKど真ん中】
2022年9月22日に開幕する2022プレナスなでしこリーグ2部入替戦予選大会の参加チームが発表になりました。北は北海道から、南は沖縄から、参加する8チームが2023プレナスなでしこリーグ2部への参戦を目指し、これを勝ち抜いた1位、2位、3位の計3チームが2022プレナスなでしこリーグ2部入替戦へ出場します。
1.北海道リラ・コンサドーレ(北海道)
2.SEISA OSAレイア湘南FC(神奈川)
3.FCふじざくら山梨(山梨)
4.ディオッサ出雲FC(島根)
5.レノファ山口FCレディース(山口)
6.FC今治レディース(愛媛)
7.ヴィアマテラス宮崎(宮崎)
8.エナジック琉球デイゴス(沖縄)
この出場チームの選考をめぐり「アマチュアリーグであるなでしこリーグのピッチ状況は常緑天然芝であるべきか、それとも人工芝を認めるべきか」ネットで話題が沸騰しました。「天然芝のグランド確保が困難であることが主な理由の一つ」で入替戦予選大会へ進出できなかったチームがあったからです。
読者の皆さんは、なでしこリーグを「常緑天然芝で開催すべきだとお考えでしょうか?」「人工芝で開催しても良いでしょうか?」また、少し質問を変えて「人工芝で開催すべきでしょうか?」。思えば、冬の平均気温が氷点下となる寒冷地で開催されたFIFA女子ワールドカップカナダ2015は人工芝のピッチで試合が行われましたし(ただし「女子選手を差別している」と主張する訴訟が起きました)、欧州のプロリーグの中には人工芝ピッチで試合を開催しているところもあります。しかし、なでしこリーグ1部は原則として常緑天然芝で開催されています(松島フットボールセンターでの開催等の例外あり)。
今回は「なでしこリーグの人工芝問題」について考えてみます。
「天然芝のグランド確保が困難であることが主な理由」で、入替戦予選大会へ進出できなかったチームがある
発端は一つのツイートでした。これが多くの女子サッカー関係者から引用リツイートされ話題を広げました。南葛SC WINGSの公式ツイッターアカウントのツイートです。南葛SC WINGSは2023年度なでしこリーグ2部加盟申請をしたのですが、書類及びヒアリングによる審査の結果「天然芝のグランド確保が困難であることが主な理由の一つ」で、入替戦予選大会へ進出できなかったのです。
なでしこリーグ2部加盟審査結果についてhttps://t.co/TpmofbXtnr
— 南葛SC WINGS (@wings_sc) August 15, 2022
南葛SC WINGSはサッカー漫画『キャプテン翼』の主人公・大空翼が所属するチームと同名の社会人サッカークラブ・南葛SCの女子チームです。関東女子サッカーリーグ1部で戦っています。トップチーム(男子)の南葛SCは関東サッカーリーグ1部で戦いJFL~Jリーグ昇格を目指しています。漫画の原作者である高橋陽一さんがクラブのオーナー兼代表を務め葛飾区及び東京都全域をホームタウンとして活動。トップチームには稲本潤一選手、今野泰幸選手ら著名な選手が所属し、全国的に注目を集めています。
株式会社TSUBASA代表取締役で南葛SC GMの岩本義弘さんは審査の結果について、ツイートで、このように補足しています。
なでしこ2部の規定では奥戸も水元もOKです。1部に上がった時には天然芝グラウンドがマストとなるので、そこだと思います。以前にチャレンジリーグ入替戦への出場がOKだったにもかかわらず、今回ダメだったのは、単純に、より条件を満たした8チームがいたからかと。とはいえショックは大きいですが…… https://t.co/p6vkiGpB6d
— 岩本義弘 (@ganpapa) August 16, 2022
加盟基準を満たしたチームの中から、より審査の評価が高い8チームが参加資格を取得した
「一般社団法人日本女子サッカーリーグ 加盟基準」は80項目で構成されています。PDFで公開されており、誰でも閲覧することができます。加盟申請をしたチームからの情報によると2022プレナスなでしこリーグ2部入替戦予選大会は、2023年度なでしこリーグ2部加盟申請書類審査とヒヤリングの審査を通過し、加盟基準を満たした8チームを参加チーム数の上限としています。今回は把握しただけで3チームが参加資格を得られなかったことを発表しています。先ほどツイートを紹介した岩本さんは「12チームの申請があった」と公表していますので、加盟基準を満たしたチームの中から、より審査の評価が高い8チームが2022プレナスなでしこリーグ2部入替戦予選大会への参加資格を得ていることになります。ちなみに、2021プレナスなでしこリーグ2部入替戦は加盟基準を満たしたチームが定数の8チームに達せず7チームで開催しました。
加盟基準に達したすべてのチームを参入とし11チームでスタートしたWEリーグとは考え方が異なるのです。
確保の難易度が高いゆえに関心事となった常緑天然芝グランドを加盟基準とする是非
加盟基準の中で常緑天然芝の確保は、チーム内の努力だけでは実現が難しく、スタジアムを保有する自治体等の協力が不可欠です。それゆえに、現役選手を含む多くの女子サッカー関係者が興味を持って引用リツイートをしたものと思われます。特に目立ったのは「なでしこリーグは天然芝で開催する必要があるのか?」という意見でした。
リーグ参入を目指してきた選手にとっては環境でチャンスがなくなるって本当に辛いよね。
天然芝のグラウンドの確保ってそう簡単にできる事じゃないし、天然芝である必要があるのかな。 https://t.co/tH65aHZXUs— tomoka⚽️ (@o_tomoka0412) August 16, 2022
「一般社団法人日本女子サッカーリーグ 加盟基準」のピッチ状況の欄には「なでしこリーグ1部:原則として常緑天然芝であること」「なでしこリーグ2部:常緑天然芝、もしくは人工芝(FIFA 芝品質コンセプト認証または JFAロングパイル人工芝公認)」と明記されています。
なでしこリーグ事務局は2023年度なでしこリーグ2部加盟申請書類審査とヒヤリングの審査に関する具体的な内容や詳細な結果について公表していません。ただ、今回、筆者はこのテーマで記事を書くことを決める以前、一般社団法人日本女子サッカーリーグ 専務理事の奥田泰久さんに「なぜ、なでしこリーグ1部は原則として常緑天然芝で2部は人工芝なのですか?」と聞いたことがあります。答えは具体的な説明が不要なほどシンプルでした。なぜなら、逆に、このように質問されたのです。
「石井さんは、常緑天然芝と人工芝のどちらでプレーしたいですか?」
つまり、なでしこリーグ1部は、女子サッカー選手のための、より良いプレー環境の充実を目指しているのです。
(残り 1941文字/全文: 4607文字)
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