WE Love 女子サッカーマガジン

ラグビー合宿のノウハウを活かし秋春制WEリーグのキャンプ地に名乗りを挙げた網走市 

ZOOMインタビュー取材は東京の気温が33度となる真夏の暑い日に行われました。網走市の気温を聞いてみると「こちらは20度くらいあります。暖かいです。」と回答があり、筆者はiMACの前でのけぞりました。「なるほど、WEリーグのチームが夏のトレーニング・キャンプを網走市で行うわけだ。」と納得しました。 

網走市では複数のWEリーグ・チームが夏のトレーニング・キャンプを行いました。2022年7月23日8月1日にジェフユナイテッド市原・千葉レディースが、7月19日724に大宮アルディージャVENTUSが実施。残念ながら7月29日から予定していたマイナビ仙台レディースは前日にチーム内に新型コロナウィルス感染症の陽性者が見つかり、トレーニング・キャンプを中止しました。しかし、WEリーグ11チームのうち3チームが網走市をトレーニング・キャンプの会場に選んだことになります。 

羽田からは1日5便、成田空港、関西空港とはLCCで結ばれる 

網走市は北海道の北東沿岸に位置しオホーツク海に面します。昔の人にとっては網走監獄のイメージが強い街です。『幸せの黄色いハンカチ』をはじめ、多くの昭和の名画の舞台となっています。今も網走監獄は観光名所ですが市内に見所は多く、冬な流氷、春から秋はネイチャークルーズ……四季を通して豊かな自然と食を目当てにした観光客を集めています。玄関口となる女満別空港は成田空港、関西空港とLCCで結ばれており、若い年代の観光客にも人気が広がり始めています。  

網走流氷観光砕氷船おーろら2 提供:網走市 

大滝麻未選手「思い切りサッカーをできました。」

ジェフユナイテッド市原・千葉レディースの大滝麻未選手は2022−23ジェフユナイテッド市原・千葉レディース新体制発表会見で、網走市でのトレーニング・キャンプについて、このように振り返りました。

「いつも通りに『必要なこと』を的確に用意してくださったことが大きいです。私には特に、こういう(お子さんを同伴する)状況で、ベッドのこと等で気を遣っていただきました。ありがたかったです。ピッチがたくさんありすごく綺麗でした。思い切りサッカーをできました。網走市は、いろいろなスポーツ団体が合宿に来るところだと思うので受け入れ態勢のノウハウがあると感じました。あとは、なんといっても涼しい気候が良かったです。」

WEリーグの岡島喜久子チェアは、網走市の協力について感謝のコメントをしています。

「網走市の方はWEリーグの試合を見に来てくださっています。積極的にサポートする姿勢を見せてくださる自治体があるのは、非常に嬉しいことです。」

天然芝7面!網走スポーツ・トレーニングフィールド 

網走市 社会教育部スポーツ課はスポーツ合宿、スポーツイベントの実施といった、網走市の外からスポーツを通じて人を受け入れる業務と、スポーツ教室や健康づくりのような市民向けのスポーツ活動推進の業務を行なっています。網走市は合宿受け入れだけではなく、各種大会の会場にもなっています。2022年は全国高校総体の予選を兼ねた北海道高校サッカー選手権大会が開催されました。北海道全域から男女の高校サッカー部が集まりました。 

なぜ、このような大会や合宿をできるかというと施設が充実しているからです。網走市が保有する網走スポーツ・トレーニングフィールドは網走湖近くに位置する良質な天然芝が魅力のスポーツ施設です。東京ドーム8.4個分(39.37ha)の広大な敷地内には天然芝フィールドが7面、全天候型テニスコート16、野球場、ソフトボール場、アーチェリー場、投てき競技専用の練習場、多目的屋内ドームを備えています。 

当初はラグビー合宿が盛んでした。日本のトップクラスのチームが7チーム、同時に合宿することもありました。しかし、秋〜冬で開催していたジャパンラグビー トップリーグが2020年に1月開幕になり、 NTTジャパンラグビー リーグワン2022も1月開幕となったので、夏のラグビー合宿が減少しました。そこで、秋春制で開幕するWEリーグのトレーニング・キャンプ誘致にシフトしたというわけです。 

今回は、各種競技の合宿誘致に力を入れている網走市 社会教育部スポーツ課の課長 大西広幸さんにお話をお聞きしました。 

網走市の雄大な景色

トレーニング・キャンプの受け入れ実績が豊富

大西–網走市の夏は涼しく、強化合宿に最適です。また、陸上競技の実業団のチームが夏に走り込むコースもあります。クルマの通行量が少ないので利用しやすいようです。 

宿泊施設はいかがですか? 

大西– ラグビー合宿を受け入れてきた地域なので、市内に大きなチームの受け入れ経験が豊かなホテルがあります。ラグビー合宿の場合は1チームで70人〜80人くらいの団体です。サッカーのトレーニング・キャンプは、ラグビー合宿よりも人数が少ないことが多いので十分に対応可能です。例えばホテルであれば、洗濯をする場所、洗濯物を干す場所の用意や食事についてもチームの要望を聞いて相談しながら検討を進めています。グラウンドであれば芝の長さ、水をどのように撒くか……チームから多くのご要望があります。各チームは事前に視察にいらっしゃいます。ホテル、グラウンド……複数をご覧になって条件の合うところをお選びいただいています。 

ラグビー合宿はグラウンドの脇で着替えることが多いのですが、そのままでは女子チームを受け入れる際に更衣室の問題が生じます。器具庫にしていた場所を改装して更衣室を新設したり、隣接するテニスコートの更衣室を使用できるようにしました。 

視察のご案内は網走市が対応されるのですか? 

大西– 自治体と民間が連携して受け入れます。事前のお問い合わせは網走市のスポーツ課にご連絡をいただくことが多いです。スポーツ課であらかじめご要望をお聞きし施設を紹介し、ホテルの視察にも網走市の職員が同行します。 

今夏はWEリーグのチームを3チームも受け入れることになりました。何が決め手になったのでしょうか? 

大西– 網走市は2016年に日本サッカー協会と「夢の教室(ユメセン)」実施に関わる協定を締結し、市内の全小学校で「夢の教室」を実施してきました。サッカー界とはつながりがあり、多くのWEリーグ参入クラブに合宿誘致のご案内をさせていただきました。その結果、2021年にマイナビ仙台レディースが初めてトレーニング・キャンプに来ていただきました。2022年は2チーム増えて3チームがトレーニング・キャンプを計画してくださいました。ありがたいです。 

(残り 1280文字/全文: 4393文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ