「着られるサイズの服があまりない」ファッション業界を元女子サッカー選手と一緒にデジタルの力で変えるFＴＭ プロジェクト
高精緻なファッション３Ｄモデリングを中心としたアパレル業界向けテクノロジーサービスを提供する株式会社ＦＭＢは、元なでしこリーグの女子サッカー選手でＦＴＭ トランスジェンダー（女性の体で生まれ、男性として生きることを望む人）の3人組ユーチューバーのミュータントウェーブと共同で体型数値計測と研究を行うＦＴＭ プロジェクトを開始しました。
ＦＴＭに特化した体型数値計測と研究を行い、３ＤＣＧを利用しＦＴＭの服の悩みに応えるＹｏｕＴｕｂｅ企画を開始したのです。株式会社ＦＭＢは、このプロジェクトを進めることで、ＦＴＭの体型にフィットしカッコよく着心地のよい理想的なパターン研究を３ＤＣＧで行います。現在も体型数値計測に参加してくださるＦＴＭを募集しています。
お話を聞いてみると、このプロジェクトの実施目的はＦＴＭ向けに限定されていないことが判りました。鍛え上げた脚の太さから「着られるサイズの服があまりない」と困っていた女子サッカー選手も服の選択肢が増えるかもしれません。ファッションテクノロジーで「未来の標準」を生み出す可能性のあるプロジェクトです。
今回は株式会社ＦＭＢでプロジェクトを進めている中谷ひとみさん、代表取締役の市川雄司さん、そして、体型数値計測に協力しているミュータントウェーブのおおちゃん、まささん、あさひさんに集まっていただき、このプロジェクトの未来像を教えていただきました。
デジタルの力でファッション業界を変える
まず、最初に驚いたのは、ファッション業界は「製造した商品の半分以上を廃棄する産業」だということです。食品業界に次いで廃棄量が多い業界ともいわれています。株式会社ＦＭＢは、これをデジタルの力で変えようとしています。
これまで、人の手で作られてきたパターンと素材を精緻な３ＤＣＧにすることで、度重なる試作品製作のコストと無駄な材料を削減することができます。
今回、ご紹介するＦＴＭ プロジェクトは、そのような課題を解決するためのプロセスで生まれました。そして、そこに参加したのがミュータントウェーブだったのです。
ミュータントウェーブ あさひ・おおちゃん・まさの３人組ＹｏｕＴｕｂｅr
おおちゃん—私たちは、なでしこリーグのプレー経験があり、戸籍を女性から男性に変えた３人のグループです。一人ひとりの個性に気づくきっかけにトランスジェンダーがなれれば良いと思っています。
女子サッカーにはセクシャリティをオープンにしやすい環境がありました。チームメイトが深く聞いてくることはありません。
まさ—やっぱり、突っ込んでくる人がいなかったので、心地やすい環境でしたね。全員がカミングアウトする必要はありませんが、自分らしさを出して生きていけると良いと思います。
あさひ—女子サッカーにおいて「女子らしくしなさい」といわれたことがありません。個性を受け入れてくれる安心を常に感じていました。実際に体型数値を計測してもらうと、骨盤が広いことを感じました。今までも服のサイズが合わないことが多かったです。スーツは肩幅で合わせるとパンツをパツパツでしゃがむことができませんでした。パンツで合わせるとジャケットはダボダボでした。今回のプロジェクトの結果で選択肢が広がって、僕ではない誰かにも喜ばれることが生まれるとワクワクしています。
まさ—着たい服を着たい。ファッションは自分らしさの表現なので、人にあったサイズの服が３ＤＣＧでできるのは面白いと思います。
おおちゃん—今回のプロジェクトを始めると、自分たちと同じような悩みを抱えている人が見つかりました。「そもそも着られるサイズの服があまりない」という声が集まりました。これまで、服を選べる選択肢すらなかったのに、選べるようになるだけでも、困っている人の悩みが解決できると思います。
女子サッカー選手にも服の選択肢を広げる
中谷—ウラハラプロジェクト（裏原宿を活性化するプロジェクト）で、私がミュータントウェーブさんとお会いしたのがＦＴＭ プロジェクトの始まりです。すぐに社内で報告し、市川が加わってミュータントウェーブさんとミーティングをすることになりました。３ＤＣＧを使ったアバターを作ることになりました。
中谷ひとみさん
市川—ミュータントウェーブがＳＮＳや動画を配信し「困っている人も、もっと前に出てきていいんだよ」と発信しているところに共感しました。
我々は、様々な体型データを解析しています。アバターにデータ上で型紙を着せて不具合を修正しデザインを開発できるように、アパレルブランドに３ＤＣＧを提供するお仕事をしています。こうして開発された商品は、例えばネット通販での返品率を著しく下げられます。
体型データを色々なアパレルブランドやメーカーが欲しがっています。オーソドックスな体型データは多数存在しますが、大きなサイズ、小さなサイズの体型データはあまりありません。
市川雄司さん
—ＦＴＭの方は世の中の多くの人が思っているよりは人数が多いようです。とはいえ、全人口と比較すると極めて限られた人数です。それでも、このプロジェクトを進める意義は何でしょうか？
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