データで振り返るWEリーグ前半戦 データ数字の良い日テレ・東京ヴェルディベレーザが苦戦するのはなぜか?
2021−22 YogiboWEリーグは3月5日に後半戦をスタートします。長いウィンターブレイクが、もうすぐ終わります。そこで、スポーツの映像分析ソフトを扱うHudl社のたかばやしさん( #WEリーグ勝手にデータ部 )から提供された分析データを元に、2021−22 YogiboWEリーグの前半戦を振り返ります。今一度、前半戦終了までの各チームの戦いぶりを思い出してみましょう。
そして、数字に現れる各チームの特徴、数字に現れないサッカーの面白さをご覧ください。
日曜夜の #WEリーグ勝手にデータ部 です!
第10節の3試合目は、#ちふれASエルフェン埼玉
vs#三菱重工浦和レッズレディース
の試合をお届けします!レッズは攻めに攻めたものの、枠内シュート率30%以下で、勝点1を分け合う形に。#WEリーグ pic.twitter.com/Mik4Wsqcnx
— TKB84 | たかばやし@Hudl (@tkb84_hudl) November 28, 2021
得点とデータの傾向が一致しないこともある
まず、たかばやしさんの提供される分析データがどのようなものなのか、なでしこジャパン(日本女子代表)の試合結果をデータから見てみましょう。ご紹介するのは、ACF女子アジアカップのミャンマー女子代表戦です。
試合の流れを感じられるのは「ボールリカバリ位置」です。ミャンマー女子代表が保持するボールを、なでしこジャパンが、どの位置で奪回できているのかを示しています。前半は、大半を敵陣で奪っています。しかし、後半は中間エリアで奪っていることが分かります。なでしこジャパンの前からの守備が、やや綻び、ミャンマー女子代表にボールを前へ運ばれていることを示しています。
「ゴール」と「ゴール期待値(xG)」にも似た傾向が見られます。前半は2.57得点のゴール期待値がありましたが、後半は1.86得点のゴール期待値に下がっています。実際の得点は前半が1点で後半が4点なのですが、試合内容自体は前半の方が良く、得点が期待できたという分析データになっています。
この試合はグループステージの初戦です。コンディション調整の問題から、後半になって選手の動きが落ちたり、選手交代によるコンビネーションの問題が生じたのかもしれません。ただし、後半は1.86得点のゴール期待値であるのにもかかわらず、その倍以上の4得点してしまうのはさすがです。
対照的な両チーム ジェフユナイテッド市原・千葉レディースと三菱重工浦和レッズレディース
2021−22 YogiboWEリーグ前半戦の中から、両チームの特徴がよく出た試合を紹介します。第7節ジェフユナイテッド市原・千葉レディースと三菱重工浦和レッズレディースの対戦です。2−1でジェフユナイテッド市原・千葉レディースが勝利しています。ポゼッションだけを見ると67%対33%で三菱重工浦和レッズレディースが圧倒しているように感じられますが、枠内シュート数は同数でした。
特に特徴が表れているのは「シュートまで行ったポゼッション その中でのアクション数」です。三菱重工浦和レッズレディースは「多数のパスをつないでシュートまで持ち込む」「敵陣でボールを奪い手数をかけずにシュートまで持ち込む」2つのスタイルを兼ね備えていることが分かります。それに対してジェフユナイテッド市原・千葉レディースは「シュートまで行ったポゼッション その中のアクション数」が少なく、ボールを奪ったら一気にゴール前にボールを運ぶスタイルなのが分かります。
そして「ポゼッション開始位置」に現れた通り、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースは前からボールを奪いにいくサッカーをしていません。自陣に5バックのラインを設定し、対戦相手の侵入を待ち受けてボールを奪うのが持ち味です。最近は、ディフェンスラインを高い位置に設定して前からボールを奪うサッカーが全盛ですが、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースはトレンドに逆行するような守備戦術で上位に食い込んでいます。
このようにチームの個性が数字に現れます。では、こうした数字を前半戦の全試合で積み上げて、全チームで比較してみるとどうなるのでしょう。
ポゼッションデータ
「保持%」「45秒以上の保持回数」「パス本数」「前方へのパス」いずれも1位なのが日テレ・東京ヴェルディベレーザです。これだけみると、女王に相応しい数字なのですが、実際の順位は5位です。ただポゼッションするだけでは勝利に結びつかないという皮肉な結果を示しています。
ジェフユナイテッド市原・千葉レディースは「45秒以上の保持回数」が下から4番目の29。ここでも、堅守速攻なのが分かります。AC長野パルセイロ・レディースも堅守速攻が特徴です。
最下位のちふれASエルフェン埼玉は、ボールをつないで前に運ぶ意図が見えるサッカーを披露しています。よく「順位ほど悪いサッカーではない」という評判を聞きますが、データはその通り嘘をつきません。「45秒以上の保持回数」は6位です。
ボールロスト、リカバリ
優れた数字を緑、劣る数字をオレンジで示しています。「A―3rd(アタッキングサード)」は敵陣「D―3rd(ディフェンシブサード)」は自陣です。三菱重工浦和レッズレディースと日テレ・東京ヴェルディベレーザは自陣でボールを失うことが少なく、目指すゴールに近い敵陣でリカバリ(ボールを奪回)できていることが分かります。つまり、この2チームは敵陣に押し込んでプレーすることが多いということです。
データが、この2チームとは逆の傾向で、押し込まれているチーム状態を示しているのがサンフレッチェ広島レジーナとノジマステラ神奈川相模原です。
サンフレッチェ広島レジーナは自陣で「ロスト」と「リカバリ」することが多いとデータに出ています。しかし、一つ前のポゼッションデータを見るとパス本数は三菱重工浦和レッズレディースと近い数字です。自陣で行うパスを奪われて失点を重ねている可能性があります。華麗なパスサッカーが評判のサンフレッチェ広島レジーナが、今ひとつ波に乗れない理由は、このあたりにありそうです。
シュート、ゴール期待値
このデータで最も興味深いのは日テレ・東京ヴェルディベレーザの「ゴール」と「ゴール期待値(xG)」の比較です。圧倒的なポゼッション等により「ゴール期待値(xG)」19.7。これは、首位のINAC神戸レオネッサの実際の得点数よりも多く、より大量の得点をとれてもおかしくない数字です。しかし、現実には得点が12しかありません。何か、得点できない要因があるはずです。
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