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WEリーグ再開のトレンド入りが物議!? #WEリーグ ツイッタープロモーション 宣伝会議オンラインニュースはなぜ惜しい事例と紹介したのか 【石井和裕の #女子サカマガ PKど真ん中】

ウィンターブレイクで休止していたWEリーグは2022年3月5日に後半戦を再開します。それに先立ち、WEリーグの公式ツイッターアカウントは2月15日にPR動画を公開。ツイッター等で再開を告知しました。これを多くの選手が引用リツイート等で拡散。「WEリーグ」がツイッターのトレンド入りし、多くの人の目に触れることになりました。

宣伝会議オンラインがフットボール・トライブの記事を紹介しました。タイトルは「WEリーグ再開のトレンド入りが物議!岩渕真奈ら選手の一斉告知に『リーグから指示が』」。記事で紹介したのは「トレンド入り」ではありません。選手による引用リツイートの多くが、ストレートに「WEリーグが再開します」「よろしくお願いします」というプロモーションツイートに見えたために起きた一部の反応についてです。

WEリーグ再開のトレンド入りが物議!岩渕真奈ら選手の一斉告知に「リーグから指示が…」

 

「スパム的な感じになっている…」、「正直うんざり」、「再開ツイートだけど、サポーターよりも選手や関係者ばっかり」、「リーグから指示があったのでは」という批判的な声が上がっている。(宣伝会議オンラインニュースが紹介したフットボール・トライブの記事より引用)

概ね成功を収めたツイッタープロモーション

今回の #WEリーグ ツイッタープロモーションは失敗だったのでしょうか。筆者は失敗だとは考えていません。大きな成功も収めていることを強調しておきたいです。ただ、今後に向けて難しい課題を残してしまったともいえます。そこで、今回は #WEリーグ ツイッタープロモーションの良かった点、惜しかった点を整理し、今後の課題を解決するために必要なことを提言します。

そして、今回の #WEリーグ ツイッタープロモーションは、とてつもない大きな発見を残してくれました。まずは、それを認識することから始めましょう。

その前に、宣伝会議オンラインニュースという媒体の説明をしましょう。宣伝会議オンラインを運営している株式会社宣伝会議は、広く産業界、そして社会に生きるマーケティング&クリエイティブの実践知を60年以上も提供してきた会社です。宣伝会議オンラインニュースは、株式会社宣伝会議が運営するオンラインメディア。多くの事例を掲載しています。日本国内の、広報・PR、広告、プロモーション、マーケティングの分野で活躍している人で、宣伝会議と接点を持ったことがない人は、おそらくいないでしょう。大きな影響力を持っています。

発見!WEリーグの選手が一斉にツイートすればトレンドに掲載される

大発見がありました。WEリーグの選手が一斉にツイートすればトレンドに掲載されるという発見です。このプロモーション期間の #WEリーグ を辿ってみると、ほとんどが選手によるツイートです。ファン・サポーターによるツイートはほとんどありません。リーグの外部に大きな拡散をしていなくてもトレンド入りするくらい、多くの選手がツイッターを使用しており、その選手が積極的に、WEリーグを盛り上げるためにネット上でも奮闘していることが証明されたのです。最近、人材を「人財」と書く場合があります。WEリーグの選手は、まさに財産。まとまれば、とてつもなく大きな発信力を持つ「人財」であることが大きな発見でした。

WEリーグの認知が向上したことは間違いない

今回の #WEリーグ ツイッタープロモーションの実施目的は認知の拡大です。3月5日に後半戦が再開すること。そして、WEリーグ自体の認知も向上しなければなりません。WEリーグの認知率は約26%だからです。

トレンドに掲載されて、WEリーグの5文字は多くの人の目に触れました。リーグ再開が近いことも示すことができました。これは、このツイッタープロモーションを実施し間違えなく良かったことです。

そして、もう一つ、WEリーグ全体で目標を達成したことも素晴らしいと思います。トレンド入りという結果は、参加した選手の皆さんの自信につながったと思います。

実施時期も適切

ここで、なぜ、この時期に実施されたかについて触れておきましょう。WEリーグの後半戦再開の約3週間前だからです。多くの人はレジャーの予定を概ね2週間前には決定します。それゆえに、WEリーグが再開される3月5日の2週間以上前に、WEリーグの再開をお知らせし、チケットを購入していただく必要があったのです。近年、Jリーグ各クラブのオフィシャルサイトでも、直近の試合ではなく約3週間先の試合の告知に力を入れているのは、これが理由です。

実施したことはもちろん良いことで、時期も適切。トレンドに掲載されるほど大きな露出をしたので、このプロモーションを機にWEリーグ再開が多くの人に認知され、ファン・サポーターがスタジアムに足を運ぶアクションにつながる効果が生まれているはずです。ただ、もし、今回の #WEリーグ ツイッタープロモーションに、ファン・サポーターや、これまでWEリーグへの関心が薄かった層まで参加したら、もっと大きな効果を生み出せたに違いありません。

積み残した大きな課題

その反面、今回の #WEリーグ ツイッタープロモーションは大きな課題を積み残しました。企業の広報・PRやプロモーションの担当者が、同じような過ちを犯しがちな手法だったので、宣伝会議オンラインニュースは惜しい事例として紹介したのでしょう。

まず、指摘しておきたいのは、宣伝会議オンラインニュースが紹介したフットボール・トライブの記事にある通り「スパム的な感じになっている…」という点です。

ツイッターが世の中に普及し始めた2010年にUCC上島珈琲が「ツイッターの特性を理解せずキャンペーンを行ってしまった。申し訳ない。」と謝罪して以来、良かれと思って展開したプロモーションツイートが大量すぎてスパムに認定され、ファンから批判を受けること、フォローを外されてしまうこと、ハッシュタグから人が離れていってしまう事件が多々ありました。

残念ながら、今回の大量のツイートの大半が「日にWEリーグ再開します」を伝える似た文章(しかも、セールストークに近い文章)だったため、何名もの選手をフォローしていた人には「同じようなセールスツイートが連続して届く」状況が起きました。それが、最も惜しかった事象です。

今回の #WEリーグ ツイッタープロモーションで #WEリーグ の存在は多くの人に知れ渡りました。しかし同時に「 #WEリーグ はセールスツイートのハッシュタグだよね」という印象も付けてしまいました。その印象が心に強く残った人は、敬遠し、もう #WEリーグ を見かけても踏んでくれないかもしれません。

そしてもう一つ、WEリーグの選手たちの、自由な発想を披露し挑戦し続ける素晴らしいブランドやキャラクターが棄損しかねないところも大きな課題の一つです。ピッチ上のプレーと相反し、今回の #WEリーグ ツイッタープロモーションの似通った表現から、選手たちはWEリーグ事務局の指示に従順に従ったように見えてしまいます。(実際には、どの選手も自分なりの表現でツイートされているはずなのですが結果として似た表現が多いため)自由な発想や挑戦と相反する印象を与えかねませんでした。それが、宣伝会議オンラインニュースが紹介したフットボール・トライブの記事にある「リーグから指示があったのでは」という反応です。

もし、羽生直剛さんのようなツイートが多数タイムラインに並んでいたら、印象は全く違っていたことでしょう。

 

しかし、今回の状況で、選手にそれを求めることは酷すぎます。今回の #WEリーグ ツイッタープロモーションを発案したWEリーグ関係者やWEリーグ事務局が、しっかりとプロモーションをプロデュースし、選手が具体的に何をツイートするとプロモーションがより効果的に拡散するのか、どうすればもっと自然に選手たちが個性を発揮したツイートをできるのかを規定してあげるべきでした。おそらく、実際は、目標設定し、とにかく実行することまでにしか気が回らなかったのでしょう。

ここまでの説明をまとめると、下記のようになります。

・トレンド入りという目標設定→とても良かった
・後半戦再開の認知拡大→とても良かった
・トレンド入りという目標を達成→とても良かった
・同じようなプロモーションメッセージが大量に届いた→良くなかった
・選手・関係者以外の参加が少なかった→良くなかった

何をツイートすれば良かったのか

全体をまとめてみると「良かったけれど惜しい」と筆者は考えます。では、どのようにすれば良かったのでしょうか。そして、次回はどのようにすれば良いイメージを拡散できるでしょうか。筆者なりのアイデアをご紹介します。

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