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「世界一のリーグ」を諦める理由はない WEリーグ 専務理事 野仲賢勝さん

写真提供:WEリーグ

12月に入り、WEリーグの公式ツイッターアカウントの雰囲気が変わったことが、ファン・サポーターの間で話題になりました。実は、運用体制はこれまでと変わっていないそうです。ただ、9月から駆け足で通り過ぎてきたWEリーグの開幕直後の時間は、前半戦終了をもって幕を閉じ、WEリーグが次のフェイズに入り始めていることは確かです。

ファン・サポーターの目の届かないところで、WEリーグは次のアクションを起こし始めています。例えば、ツイッター上で行われる議論にも目を通しながら、WEリーグは現状を理解し、ウィンターブレイクに行う施策を次の活力として、3月からの後半戦に備えます。

今回は、初めての年末を迎えたWEリーグの目指すところについて、2021年10月1日付でWEリーグ専務理事に就任された野仲賢勝さんに、お話をうかがいます。

野仲賢勝さんは1998年からサッカーの仕事をされています。日本サッカー協会(JFA)やJリーグ、なでしこリーグをはじめとした日本におけるサッカー団体のマーケティング(スポンサーシップや放送権)や大会運営などを担当。日本フットサルリーグ(Fリーグ)の立ち上げにも関わり、多くの経験をしました。2017年から約5年間は公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会へ出向。テストイベント担当部長および自転車ロード競技全体責任者(VGM)を担当しました。

サッカー界への復帰はWEリーグでした。つまり、他競技の現場も知る日本サッカー界のスペシャリストです。筆者が野仲さんと初めてお会いしたのは2006年。モックなでしこリーグの打ち合わせの場だったと思います。今回のインタビュー取材で感じたのは、今も、あの頃と変わらないパワフルさです。

極めて少人数で運営してきた2021−22Yogibo WEリーグを野仲さんは、どのように振り返るのでしょうか。そして、2022年、巻き返しの方針は定まっているのでしょうか?お話をお聞きしました。

10月に専務理事に就任するまで、外から見ていたWEリーグはどのような印象でしたか?

野仲「日本女子サッカーのプロリーグ構想」を記事で見たときに「いよいよ来たか」と思いました。それから、準備が進んでいたと思うのですが僕は過去に、女子サッカーの実務も経験していたので「どうやって進めていくのだろう」と気になりながら見ていました。

地域色を打ち出した各クラブのユニフォーム

2021年のWEリーグを振り返ってみていかがですか?

野仲コロナ禍のシーズンですので、クラブの方とリーグのメンバーが対面で打ち合わせることはほとんどありませんでした。これはお互いに不幸なことです。そういう環境の中で、少人数のメンバーでWEリーグをよく立ち上げられたと思います。

目標としている観客数をはじめ、私たちは明るい未来を思い描いています。ただ、いくつかの要因があり、目標に達していないという実感は、もちろんあります。ただ、それを前向きな話と捉えて、現状からどのようにステップアップしていくのかが、僕たちに課せられた使命だと思います。

僕は、Jリーグの立ち上げに関わることがありませんでした。木之本興三さんや川淵三郎さんらがプロリーグを築いていった頃の話を直に聞くこともありませんでした。今は「当時はどうでしたか?」と聞いてみたい気持ちです。Jリーグは良き先輩だと思っています。今のWEリーグが、どれくらい、あの頃のJリーグと同じなのか?違うのか?自分なりに理解したいと思っています。

いざ就任されたときの決意はどのようなものだったのでしょうか?

野仲まずは噂や「かもしれない」の声を聞くのをやめようと思いました。自分の目で見て耳で聞いて、確認していこうと思いました。就任が決まると、色々なところで「(冷やかし半分に)大変なところに行くね」と言われました。「大変」なのは、どこへ行っても同じです。ご存知の通り東京2020大会はとても大変でした。

就任前にWEリーグの理念を改めて読み、人の話を聞き、岡島喜久子チェアのインタビューを読み、関わる人の思いを感じるたびに、笑われても良いから「本気で世界一のリーグにしよう」と思いました。だから、今は、誰の前でも「世界一のリーグを作る」と言っています。「恥ずかしくないのか?」と言われるときもあるのですが「恥ずかしくないです」と答えています。だって狙えますよ「世界一のリーグ」。諦める理由は何もありません。たまたま、今は程遠いかもしれないけれど、残りは伸び代しかありません。だから、世界一を目指すために、皆さんには本気で応援してほしいです。

前半戦で予想以上に成果が出ていると捉えていることはありますか?

野仲僕らの両輪の一つといえる、ジェンダー問題の解消を含めたSDGsの取り組みについては、普通のスポーツ団体では言わなかったことを言うだけではなく体現してきたことが、一つの成果だと思います。「社会面」では一定の評価を得られることができました。

目線の新しさを感じて取り上げてくださったメディア、これまでスポーツとは縁が遠かった経済誌やファッション誌……予想以上の成果になっています。

WE ACTION DAY(理念推進日)活動

野仲逆に「サッカー面」で、もう少し大きく取り上げていただきたいと思っています。「社会面」ばかりが過ぎると……という問題点もあります。WEリーグは、バランスよく言っていく必要がある。「社会面」の言い方にも注意していく必要があると思います。

今、判明している課題を教えてください。

野仲一般の地上波やスポーツ紙では、思ったよりも取り上げていただけていないです。このウィンターブレイクに露出増に取り組んでいきます。日程の予告、試合の結果、ハイライトをDAZN以外でも色々なところで目にするようにしていきたいです。

プライベートな話で恐縮ですが、僕の実家は熊本にあります。母が一人で住んでいます。今までは、僕の仕事関係のことをテレビで見て、僕に教えてくれました。この秋から、WEリーグの仕事を始めると、母から「気をつけてWEリーグがニュースにならんか見とるけど、いっちょん見らん」と言われました。要は「一つも目に入ってこない」ということです。それは、ぐさりときました。母がターゲットかどうかは別にして、これも「民の声」です。少なくとも、(WEリーグのホームタウンではない熊本では)あまりニュースに流れていない。

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