大学女子サッカーを振り返る「人間力なくして技術の向上なし」 AC長野・肝付萌選手と鈴木日奈子選手の #女子サカ旅
今回は、山梨学院大学出身の二人の選手に、大学時代を振り返っていただきます。記事の後半ではAC長野パルセイロ・レディースの見どころを、最後は、お二人の思い出の場所をご紹介いただきます。
記事に登場するのはAC長野パルセイロ・レディースの若いプレーヤー肝付萌選手(2年目)と鈴木日奈子選手(1年目)。ご自身の失敗も含め、次世代のプレーヤーのために語ってくださりました。山梨学院大学の田代久美子監督の指導は、WEリーグ開幕を迎えるお二人の胸に、どのように刻み込まれているのでしょうか。
なお、鈴木日奈子選手は一般社団法人大学スポーツ協会が表彰する「UNIVAS AWARDS 2020−21」において、ウーマン・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。これは、文武両道を実践し、他の模範となる運動部女子学生を表彰するものです。

鈴木日奈子選手
—田代久美子監督は鈴木選手のことを「クレバーで戦術眼に長けた選手」と表現されていますね。
鈴木—自分では「戦術眼」というよりは「田代さん(田代久美子監督)が言ってくれたことを思い出しながらサッカーをしてきた」と思っています。大学で、一番成長できたのは「サッカーを理解する」こと。常に考えながらプレー意識してきました。だから、そう言ってもらえたのは嬉しいです。
肝付—タッシーさん(田代久美子監督)に頭を使ったサッカーを教わったおかげで、状況を考えてプレー選択するクセが身につきました。例えば「今はカウンターで早くいくべきなのか?それとも、ゆっくりと時間をかけながら攻撃をするべきなのか?」練習でも試合でもずっと言われてきました。
タッシーさんは主体性を持って動けと常に言っています。サッカー以外のところでも常に考えて行動するように言われ続けてきました。

肝付萌選手
課題を書き出し常に意識する生活
肝付—目標を達成するために何をするべきなのかを考えて書き出すように言われました。自分たちが何をすべきなのか、常に目に入る状態を作りながら大学生活をおくってきました。
鈴木—自分たちの代でもやりました。前年に書き出したことを一年後に見て振り返ると、自分の成長を感じられるので、書き留めておくことが大切だと思いました。
肝付—私の現在のポジションは、サイドバックなのでボールの配球やクロスの質が求められます。自分に足りない部分を自分で考えて練習してきました。AC長野パルセイロ・レディースに入ってからも、常に自分で、何が足りなくて、何をやるべきなのかを考えてトレーニングに励んでいます。自分の考えがまとまらないときは、ノートに書き出して、頭の中を整理しています。
鈴木—自分も上手くいかないことが多かったので、サッカーノートを書いて、自分が何をするべきかを整理する時間を取りました。大学での経験は、今も、凄く活きています。
自分の場合は(1年目で)大学生とプロのサッカーレベルやプレースピードの違いに戸惑いました。プレースピードが速いと、自分にかかってくるプレッシャーの強さが変わりますし、より速い判断が求められます。ある程度は事前に考え「もし、こうなったら、次はこうなる」と自分に言い聞かせて練習しました。

鈴木日奈子選手
タッシーさんが最後に背中を押してくれた
—田代監督に褒められ覚えていることはありますか?
肝付—私は手のかかる選手だったのですが、タッシーさんが真正面からぶつかってくれました。タッシーさんが「チャレンジしてみれば?」と、最後に背中を押してくれたから、自分はここ(AC長野パルセイロ・レディース)にいてサッカーが出来ています。
鈴木—「社会に出たときに困らないように学ぶ」指導をしてくださりました。大学で学んできて良かったと思いました。それと、田代さんが(肝付)萌さんを「一番、人間的に成長した」と言っていました(笑)。
肝付—大学に入るまでは、ここまで怒られると思っていなかったので、何度、サッカーをやめたいと思ったか……先輩から後輩にまで、幅広く迷惑をかけたと思います。
ある日の夜に寮を抜けて実家に帰りました。「部活をやめたいです。もう実家にいるので部活には行かないです」と、実家からタッシーさんに電話をしました。すると、タッシーさんに「いいから始発で帰って来い」と言われました……「タッシーさんに、そう言われたら帰らなきゃ」と思い始発で寮に帰ってきました、実家に帰ったくせに(笑)。寮に帰った日が「走り(ピッチを何度も走る練習)」だったので「走れなかったらやめよう」と思いました。でも、その「走り」も意外と走れてしまって(笑)「まだ続けろということなのかな」と思いました。

肝付萌選手
相談に乗ってくれる仲間がいてくれたからサッカーをやり続けられた
–やめようと思ってもやめなかった理由は何でしょう?
肝付—今、思うと、自分は逃げる理由を見つけようとしていました。弱い自分は、サッカーをやめる理由を探そうとしていました。でも、そのとき、同期、先輩、後輩が止めてくれて、正面からぶつかってくれるタッシーさんがいて「もう一回、チャレンジしよう」と思えました。大学では恵まれた4年間だったと思っています。ぶつかってくれる、相談に乗ってくれる仲間がいてくれたから、サッカーをやり続けられたと思います。
大学3年生のときに自分が変わるきっかけがありました。そして、そのシーズンから先発出場が増えました。「この調子で頑張っていこう」と思った4年生では、より「自分たちが作ってきたもの」を表現できるようになりました。最後の一年で、同期と力を合わせて、自分たちらしさ、自分たちの色を出せましたね。
—ご自身にとって、山梨学院大学の4年間は、どのような時間でしたか?
鈴木—凄く楽しかったです。最高の仲間に巡り会えたのが一番良かったことです。
肝付—「人間力なくして技術の向上なし」とタッシーさんによく言われました。その一言に尽きます。自分の人間力が上がったときにプレーの質が上がりました。

肝付萌選手
「負けん気が強い」けど「ビビり」!?田代久美子監督からの、厳しくて温かいメッセージ
山梨学院大学カレッジスポーツセンター 女子サッカー部の田代久美子監督に、肝付萌選手と鈴木日奈子選手のこと、AC長野パルセイロ・レディースのことをうかがいました。
—2人の選手について
田代—2人に共通して言えるのは、「負けん気が強い」けど「ビビり」なところですかね(笑)。萌は、一見チャラいですが、意外と真面目ですね。というか真面目になりました!(笑)。アスリートとして良い心身のバランスを持っていると思います。だからこそ、いつでも自信を持ってトライして欲しいです。
日奈子は、サッカーに対してとにかく真面目でストイックです。考えすぎて煮詰まることも多いと思いますが、決して逃げることなく自分自身と向き合う強さを持っています。肩の力を抜いて、サッカーを思いっきり楽しんで欲しいです。
—AC長野パルセイロ・レディースはどのようなチームと感じますか?
田代—地域に密着した地元に人たちに愛されているクラブだと思います。そこには、さまざまな企業努力があると思うのですが、選手として多くの方々に応援され、戦うことは何にも変え難い幸せです。そんな幸せな環境がある素敵なクラブです。レディースチームは、若い選手が多いと思うのでチームとしての伸び代は計り知れないと思っています。リーグを通した成長に期待しています。
—WEリーグへの期待について教えてください
田代—女子サッカー選手がプロとして活躍できる環境が整ったことは大変嬉しく思っていますが、プロの世界はあくまで興行だと考えると、ここからが、また女子サッカーの正念場だと感じています。選手にはここに至るまでの経緯をしっかりと理解した上で、大きな責任と覚悟を持って、女子サッカーの更なる発展に尽力してほしいです。

鈴木日奈子選手
—
若いチームの成長を見てほしい
—AC長野パルセイロ・レディースの良いところは?
鈴木—若いチームなので成長するところが魅力だと思います。プレシーズンマッチを通して、試合を重ねるごとに成長してきましたから、みなさん、成長をたくさん見にきてください!
肝付—若いチームです。そして、ベテラン選手が引っ張ってくれます。若手が、ベテラン選手の背中を見て成長する、良い連鎖が起きています。そして、なんと言っても長野Uスタジアムの、スタンドからピッチまでの距離感や熱さもAC長野パルセイロ・レディースの良さです。熱狂的なファン・サポーターが多い。支えてくださる方々がいるからこそ、自分たちも練習に取り組めます。多くの方に、AC長野パルセイロ・レディースを見ていただきたいです。
鈴木—熱狂的なファン・サポーターの皆様の存在は凄く大きいです。自分の励みになりますし、頑張る原動力になります。その部分に魅力を感じて、自分はAC長野パルセイロ・レディースに加入させていただきました。

鈴木日奈子選手
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