WE Love 女子サッカーマガジン

Jリーグのコールリーダーから見た女子サッカー V長崎コールリーダーみおうさん20歳

WEリーグにJリーグリーグと同じようなコアサポーターが定着するかは分かりません。しかし、Jリーグのコアサポーター、しかも若い世代の視点から「どうすればWEリーグの観客が増えるか」の意見をコールリーダーに聞かせてもらうことに意義があると思っていました。

誰に聞こうかと思い、すぐに思い浮かんだのが(福島美桜)みおうさんでした。みおうさんは2000年生まれ。15歳でV・ファーレン長崎の応援団体「ウルトラ長崎」に参加。2019年に、19歳でサポーターの応援を指揮するコールリーダーにデビューしたサポーターの新世代です。筆者は、以前にお話したことがあるみおうさんなら、WEリーグのファン拡大に役立つ話をしてくれると思い……調べてみると、なんと、みおうさんは応援しているだけではなく、自らも長崎大学サッカー部でプレーしていることがわかりました(副キャプテン!)。

そうなれば予定変更。「女子サッカーのプレー」と「スタンドでの応援」の関係について、お話を聞くことにしました。「若い世代×女子サッカープレーヤー×Jリーグクラブのコールリーダー」に該当する人物は、日本に何万人もいるサポーターの中で唯一、みおうさんしかいないでしょう。WEリーグのファンを広げていきたいとお考えの人には必見のインタビュー記事です。そして、もし、それほど女子サッカーに関心がない方でも、Jリーグサポーターの応援に関心のある方は興味深く読んでいただけると思います。

みおうさん

—みおうさんがV・ファーレン長崎の応援を始めたきっかけを教えてください。

小さい頃から親に連れられて、ずっとV・ファーレン長崎を応援してきました。物心が付いたときから「そこにいる」感じです。サッカーを応援に行くのが当たり前の環境で育ちました。

AKB48の尾上美月ちゃんとサッカーを始める(はずだった)

—みおうさんは長崎大学のサッカー部でプレーしているそうですが、プレーを始めたきっかけを教えてください。

みおう–プレーを始めたのは高校一年生です。高校に入学したら部活を決めるのですが、私は、週末はV・ファーレン長崎の試合に行きたくて、土日に活動がない写真部に入りたかったです(笑)。「写真部に入ります!」と写真部の先輩たちに言いに行きました。そうしたら、その後で、小学校からサッカーをしている2人の友達で、今はAKB48の尾上美月ちゃんともう一人の子が「V・ファーレン長崎を応援してるっちゃろ? サッカー部の見学に一緒に行かん?」と言われて3人で見学に行くことになりました。

私の入学した高校は女子サッカー部がなく、男子サッカー部しかありませんでした。それと「マネージャー禁止」という噂が流れていました。でも「ダメ元で行ってみようよ」と言われ、私は入部する気がなかったのですが、友達に連れられて一緒に行きました。顧問の先生から「マネージャーはとらないけれど、プレーヤーならばとる」と言われて……美月ちゃんは入らずに、私ともう一人の子は入部しました。

なんでですかぁ!?(笑)

みおう–美月ちゃんには、今でも、いつも言っています「あのとき何で入らんかったの、結局!?」って。私は初心者でサッカーをしたことがなかったので、最初は母親に「男子サッカーの中でできるわけないやろ!」と反対されました。最終的には父親と話し合って「やりたいならやってみろ」ということになりました。

お父様とは、どのような話し合いというかプレゼンをしたのですか?

みおう–「サポーターだからやってみたい」「サポーターならプレーヤーの気持ちが解った方が良い」という理由でやりたいと言いました。私は、スタジアムでV・ファーレン長崎を応援していたのに、実はルールを知らなくて、副審が旗を揚げる意味もわからず「みんな、何でどっちボールってわかるんやろ?」って思っていました(笑)。「ルールを理解するために」とも父親に説明しました。

現在も長崎大学女子サッカー部でプレーする 提供:みおうさん

みおう–女子の部員は私ともう一人の子の2人だけで、始めてみたらめっちゃ大変でした。実はもう一人の子はめちゃくちゃ上手いです。女子サッカー部がある高校から推薦入学の誘いが来るくらい上手い子だったので、私だけが初心者でした。

最初のうちは、ボールに触らず、一人で基礎練習をしていました。徐々にボールを使った練習に入れてもらったのですが、失敗してしまう。サッカーはチームスポーツだから、失敗したら別の子に迷惑をかけてしまう。だから「あぁ、今日も練習かぁ。自分はいいけれど迷惑かけるなぁ」という気分のときもありました。私だけが下手なので、男子の部員との間にも壁がありました。私が、もうちょっと上手かったら仲良くなれたんかなぁ。

長崎大学女子サッカー部では主にサイドバックでプレー 提供:みおうさん

転機到来、先生の紹介で女子チームへ

みおう–高校2年生のときに先生の紹介で長崎大学の女子サッカー部の練習にも参加するようになりました。高校では男子の中で練習していたのですが、今度は、チームメイトがみんな女子です。同じレベルの人も多い中で練習していたら、だんだん上手くなって行きました。長崎大学のサッカー部には高校生でも中学生でも入れるんです。前よりも自分のできることが増えたので、ミスが減って良いプレーをできるようになりました。だからサッカーが楽しくなりました。

長崎大学のサッカー部で習って身につけたことを、今度は高校のチームでプレーするときに男子を相手に試すということを繰り返しました。高校三年生のときに、ようやく男子と一緒にプレーしても負けないレベルになりました……ディフェンスだけですけどね。

—自分の力を発揮できるオープンなチームを紹介してもらえたのですね。

みおう–そうです。長崎大学のサッカー部を紹介してくれた先生に感謝しています。高校のサッカー部は部員が多くて80人くらいいたのですが、その中でも女子を特別扱いせずに平等に扱ってくれた良い先生で……合宿でも同じご飯のメニューを食べさせられました。初めて、食べ過ぎで死ぬかと思いました(笑)

—みおうさんは、どのポジションでプレーしているのですか?

みおう–サイドバックが多いのです。最近は……嫌なのですがトップをやらされます。

—凄いじゃないですか。

みおう–私はシュートが苦手でトップが面白くなくて……ボールを奪ったり、後ろから全体を見てコーチングしたりする方が楽しいです。私は足元の技術がないのでトップは……前からプレスするのは楽しいと思います(笑)。

—プレーを経験することで、Jリーグを観戦する上で役立ったことはありますか?

みおう–負けた選手の気持ちが解る。それが私の中で一番大きいです。私は、長崎大学のサッカー部で、高校3年生の最後の方で初めて公式戦に出場しました。県内の一番強いチームと初めての公式戦で当たってしまって「ここまで何もできなかったこと初めて」というくらい何もできませんでした。試合に負けて、不甲斐ないし、もっと練習すれば変わるのかなとか、いろいろな考えが頭の中でぐるぐると回って「V・ファーレン長崎の選手もこういう気持ちだったんだ」と思いました。

Jリーグなら、酔っ払ったおじさんとかが「お前らやる気あるのか!」と簡単に叫ぶシチュエーションですね。

みおう–ホントそうなんですよ! 私がプレーヤーだったら、そこらへんで酒飲んで気持ち良くなっているおじさんに「おーい!」とか言われたら「うるさい!」って言うと思います。よくスタンドで「頑張れ」という人もいるけれど「頑張れ」って言葉も上からの言葉なんですよ。自分は何もしていないのに「できるよ」「やってみなよ」「頑張れ」っていう。私は、自分も頑張っているからこそ応援をできると思っています。だからスタンドで90分間を全力で跳ぶ、歌って応援するんです……COVIDー19(新型コロナウイルス感染症)で今はできないけれど。

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