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「週イチ なでしこカフェ」から選ぶ「思い出の4人」 守口香織さんインタビュー

「週イチ なでしこカフェ」は毎週木曜日12時にYouTubeで配信されていた女子サッカー専門コンテンツ。2019822日に第1回の配信が行われ、以来、ゲストに、プレナスなでしこリーグの選手、指導者、関係者を迎え、20201126日の第26回で、その幕を閉じるまで、女子サッカーに関する多くの情報、選手の魅力を伝えてきました。

長谷川ゆうさんと2人でMCを務めたのが守口香織さん。驚くほどのサッカー好きだということを、皆さんはご存知でしょうか。今回は、守口香織さんのインタビューです。「週イチ なでしこカフェ」を振り返りながら、女子サッカーの魅力とは何か? 女子サッカーを伝えるメディアに求められることとは何か? をお伝えしていきます。まずは、守口香織さんが、なぜ、いわゆる「女子アナ」と呼ばれる職業に就いたのか? そして、どのような夢を抱いていたのか? その夢はどうなったのか? のお話から始まります。

提供:守口香織さん

野望の強い学生が夢を叶えるまで

守口–学生時代からサッカーが好きで「サッカーに携わる仕事をしたい」と思ってアナウンサーを目指していました。私は「いずれはワールドカップや五輪を取材したい」と思っている野望の強い学生でした。FIFAワールドカップ2006ドイツ大会でリポーターをやることを目指して、大学でも第二外国語はドイツ語を選んでいたのですが「女子アナ」は狭き門でキー局は受からず、2005年にRSK山陽放送(TBS系列)にアナウンサーとして入社しました。当時の岡山県はプロスポーツ不毛の地でした。「いずれはワールドカップや五輪を取材したい」という夢は諦めていたのですが2009年にファジアーノ岡山がJ2に昇格して岡山県にプロリーグのクラブが出来ることになりました。私が、以前から局内で「サッカーやりたい、サッカーやりたい」と言い続けていたのでファジアーノ岡山の試合の中継のリポーターに抜擢していただきました。それが、私のスポーツに関するキャリアのスタートです。20159月まで150試合くらいリポーターをやりました。それ以外には、岡山湯郷BelleFC吉備国際大学Charmeの試合の中継リポーター、マラソン、ラグビー等の中継リポーターをやらせていただきました。

ファジアーノ岡山の試合でのリポーター 提供:守口香織さん

守口–FIFA女子ワールドカップ2015カナダ大会の決勝戦の取材もしました。たまたま、そのとき、別件で、私が米国とバンクーバーの境目のようなところに派遣されていました。途中で、RSK山陽放送の会長から電話がかかってきて「なでしこジャパンがFIFA女子ワールドカップ2015カナダ大会の決勝戦に進んだから取材してこい」と言われて、急遽、チケットを取ってバンクーバーに向かいました。カメラを持っていなかったので、現地のTBS系列の記者にカメラを借りてSDカードを買って「宮間あや選手、福元美穂選手を応援するために岡山県から現地に行っている人がいるかもしれない」とスタジアムの外で取材をしていました。本当にいたんですよ! (宮間あや選手の)背番号8のサポーターが。「どこからいらっしゃったんですか?」と質問したら「美作市の湯郷温泉から」と答えが返ってきて「ホントですかーーー!」と感動しました。本当に、現地まで応援に来られる方がいるんです。そこまでされる女子サッカーは凄いと思いました。

—現地にいらしたサポーターも凄いですが、それを予測して守口さんを派遣した会長も凄いですね。

守口–無茶ですよね(笑)。あれはなかなかハードでした。現地の記者に合流する前はiPhoneで撮って「こちらではCNNがスタジオを組んで準備をしています」等のリポートの動画データを局に送っていました。図らずも、ここで「いずれはワールドカップや五輪を取材したい」という夢が叶った瞬間でもありました。

—すごい叶い方ですね。

守口–巡り合わせが凄かったです。あれはラッキーでした。

FIFA女子ワールドカップ2015カナダ大会決勝戦(トップ画像も同) 提供:守口香織さん

—ほんの少し遠回りしたけれど、学生時代の野望に向かって進んでいったのですね。なぜサッカーを好きになったのですか?

守口–なぜでしょうね。私が小さい頃にJリーグが開幕して、みんながヴェルディ川崎を大好きでした。ビスマルク選手とか武田選手とか、選手がキラキラしていて「こんな世界があるんだ」ってサッカーにハマりました。サッカーには人を元気にしてくれる力がありました。日本代表戦も、みんなが絶叫している時代だったので「あの場に立ちたい」「あの熱を伝えたい」「人を元気にしてくれる力を伝えたい」と思ったのが、多分、夢のスタートだと思います。

—サッカーの仕事が始まってから、始まる前とギャップを感じたことはありますか?

守口–当時のファジアーノ岡山は専用の練習グラウンドもクラブハウスもなくてアマチュアのような環境でやっているクラブでした。ですから、そこから自分も一緒に成長していったような感じがしました。当時のJ218クラブで3回戦総当たりで忙しくて、私がアップアップしている間にシーズンが終わりました。ファジアーノ岡山は51試合で8勝しかできませんでした。(勝ち点36、得失点差-44)ダントツの最下位でした。でも(プロリーグに参画する)プロクラブが岡山にできて街が盛り上がっていました。「プロのクラブができると、こんなに街が活気づく」ということを感じました。ずっとワクワクし続けて取材の面白さも学んだ感じがします。

「女子サッカーは難しい」と思っていました

守口–湯郷温泉までは岡山市から行くと1時間半くらいかかります。岡山湯郷Belleは地域に根ざしたチームです。当時の宮間あや選手はオーラが凄すぎて変なことを聞いてはいけないというムードでした。最初は苦手だったんです、女子サッカー。男子のサッカーは、女性リポーターが聞きにいったら喋ってくれるんです。リポーターはサッカーを解っていないだろうと思って、選手が丁寧に説明してくれるのですが、女性に対するインタビューは、そういう甘えが効かないです。「こちらが勉強して準備していかないと答えてもらえない」という私の先入観もありました。みどりさん(本田美登里監督)は気さくだったのですが、岡山湯郷Belleの選手は無駄口を叩かないし、いつもピリッとしていました。だから緊張して取材に行っていましたし「女子サッカーは難しい」と思っていました。2012プレナスなでしこリーグの岡山湯郷BelleINAC神戸レオネッサの試合(第1620121028日:岡山県美作ラグビーサッカー場 観客数4,942人)は満員御礼の賑わいで「ワールドカップに優勝するのは凄いことだ」と肌で感じたことを覚えています。

超満員の岡山県美作ラグビーサッカー場 提供:守口香織さん

開門前の待機列 提供:守口香織さん

—2019年に東京に来られて、YouTube番組「なでしこカフェ」が始まりますね。

守口–岡山湯郷Belleの選手たちは、私にとって、ちょっと遠い距離がある感じでした。さらに、私はFIFAワールドカップ2015カナダ大会で銀メダル獲得を見てしまったので、選手たちが、さらに遠い存在みたいになっていました。でも、「なでしこカフェ」を始めて選手の話を聞く機会が増えて、良い意味で「普通の女の子たちだ」と思い、身近に感じるようになりました。邪念なく、純粋にサッカーを楽しんでいることが伝わってきました。試合ではファールもほとんどなく試合はクリーン。どんどん魅力に取り憑かれていった感じがあります。Jリーガーは、もちろん凄いのですが「女子でそのポジションにいるのはもっと凄い」と思ったりしました。まず、プレナスなでしこリーグでプレーできる選手の人数が少ないじゃないですか。もの凄い「選ばれし者」です。身近に感じる反面、めちゃめちゃ凄い存在なのだと思いました。

—プレナスなでしこリーグの選手は、皆さん楽しそうに見えます。

守口–そうですね。皆さん、楽しそうでした。サッカーの話をしたら止まらないです。理論的に考えている人もいれば、感性でプレーしている人もいる。

—印象に残っているゲストを教えてください。

清水梨紗選手(日テレ)・田中美南選手(I神戸・当時日テレ)

守口–「週イチ なでしこカフェ」最初のゲストが清水梨紗選手と田中美南選手でした。田中美南選手は、見るからにFWというタイプ。見たままでかっこいいと思いました。清水梨紗選手が華奢で色白で可愛らしいのに日本女子代表というところにインパクトがありました。こんな普通の子が、あんなにピッチで戦っているという驚きがありました。岡山では「いわゆるサッカー選手」とばかり接してきたので、こんなに可愛らしい子がピッチで走って、倒れても立ち上がって、削られても走っているということにびっくりしました。プレナスなでしこリーグの選手名鑑で身長・体重を見ると小さい選手がたくさんいます。それでも、あのプレーを出来るのだから凄いですよね。

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