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田中陽子選手の #女子サカ旅 プロは自分の良さを出す戦い! 難しいからこそやりがいがあります

U-20女子日本代表、なでしこジャパン等で活躍された田中陽子選手は、スペインで女子プロサッカー選手2年目のシーズンを戦っています。田中陽子選手が所属するのは、スペイン女子1部リーグのスポルティング・ウエルバ。ウエルバの街はスペインの最南端・ジブラルタルの近く。セビージャやマラガと同じアンダルシア州にあります。温かな海に面し、ポルトガルとの国境に近い、コロンブスが初めて航海に出た港町です。

田中陽子選手によると、ウエルバの街はスペイン南端近くにあるため、スペイン全土への遠征の移動時間は長く、8時間や12時間も要することもあります。さらには、試合中のフィジカルコンタクトが強いので、コンディションが整っていないとパフォーマンスが安定しないそうです。田中陽子選手がスペインに来て、一番大切だと思っているのはコンディション調整だそうです。

女子プロサッカー選手って何だろう?

 さて、WEリーグが2021年にスタートします。今回は、一足早くスペインで女子プロサッカー選手として生活している田中陽子選手の言葉から「女子プロサッカー選手とは?」を探ります。田中陽子選手のインタビューを終えた直後に筆者が抱いている「女子プロサッカー選手とは?」の結論は「『自分を見せられる女子サッカー選手』が女子プロサッカー選手に相当する」。その結論に至った過程を、このインタビュー記事からご覧いただければと思います。

トップの美しい海の写真はどこだろう?

田中陽子選手の #女子サカ旅 は後半でご紹介します。バレンシア、バルセロナ……COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が拡大する前に、スペイン各地を旅した田中陽子選手が紹介してくださった思い出は、神秘的な地形の海です。このインタビュー記事のトップに掲載した田中陽子選手が提供してくださった写真は、どこで撮影されたものなのか、答えは・・・インタビュー記事を最後までご覧ください。

スタンドで女性も戦うスペイン女子サッカー、難しいからこそやりがいがあります!

田中–スタンドには女性の観客も多く、日本とは雰囲気が違うかもしれませんね。お母さん世代、選手の友達が友達を呼んだり「用事がないならスタジアムに応援しに行こう」みたいなノリでやって来ます。一番、日本と違うと思うのは、試合中に観客が声を発するところです。「レフリーに対して言う」「相手チームに対して言う」、盛り上げる「レッツゴーみたいな掛け声」とか……。選手が失敗しても「顔あげて!」みたいな呼び掛けとかが多いですね。女性(の迫力)も凄いです。20歳代の子もお母さん世代の人も、スタンドでウワァーって言いますね。みんな魂を込めていて、応援というよりも、観客が戦っていますね。

—日本だと「応援に参加する」みたいな感じもありますが、ちょっと違いますね。

田中–試合をテレビで見ているときでも、(見ている人は)試合の中に入り込んでいます。日本だとスポーツは「娯楽」の印象ですが、こちらは戦いです。

—練習環境はどうですか?

田中–私のチームは自前のクラブハウスがあるわけではないのですが、いつも同じ人工芝グラウンドを借りて練習しています。筋トレは、チーム練習のときは、みんなで、いつもの施設でやるのですが、個人的にやるときは提携しているジムやプールを使用できます。

—ワンシーズンを終えて2年目のシーズンですが、1年目は予想と比べてどうでしたか?

田中–予想以上に大変でしたね。スペインは華麗なテクニックやパスサッカーの印象が強いのですが、実際には色々なチームがあって……私のチームは結構(縦に大きく)蹴っていました。スペイン人はフィジカルが強いんですよ。来る前に自分が思っていたサッカーと、自分の加入したチームはやり方が違っていました。今回、監督が変わって新たなやり方に取り組んでいるのですが、前の監督のときはキツかったです。ボールが全部、自分の頭の上を通り越していく感じで……その中で自分の良さを出さなければいけないし、フィジカルの強さも身につけなければいけない。その上で言葉も出来ないから大変でした。日本だったら、自分はU-20日本女子代表のときに多くの人に知ってもらえたから「みんなが私のプレーを知っている」ところからスタートできました。今は誰にも知られていないゼロからのスタートなので、スタートラインが日本のときと全く違います。練習で出来ても試合で出来ないと、監督に次の試合で使ってもらえない。チームが上手くいかない中でも、自分の良さを出していかなければならないから難しいです。そして、難しいからこそやりがいがあります!これからが楽しみだと思っています。

戦いだから「言われたら言い返します!」

—難しいからこその自己主張の方法はありますか?

田中–監督に言われたときに理解していることをきちんと示して、でも自分で思っていることがあるならば、それも伝える。そうしないと「考えていない選手」と思われてしまいます。監督もチームメイトも外国籍選手には強く言いやすいじゃないですか。それに対してもプレーで示して、あとは……言い返します! ほんと、舐められるんです。スペイン人は口が凄いです。でも、相手に言われたことが間違っていたら(言われたままは)もったいないじゃないですか! だから、言い返すと、その人も言ってこなくなります。日本で同じような言い合いがあると、練習が終わってからも、ごちゃごちゃした感じが続くことがあるのですが、スペインではピッチ中のことは、外に出ると終わって切り替わるので「そのときだけ」です。引きづらないので気を遣わずに言えるかな。一つ難しいのは感情表現の方法。外国人は日本人と比べると感情の起伏を激しく表現すると思います。例えば、ミスした後に(自分自身に)声を発するとか、パスを出してくれなかった相手に強く言うとか。私も、そこでちゃんと表現しなきゃいけないと思います。声を出さないと「こいつ、何も考えていないな」と思われてしまいます。日本語でも良いので(笑)そこは頑張らなきゃって思います。やっぱり、ここも戦いだと思います。

 

田中陽子選手の口から何度も繰り出される「戦い」と言う単語。インタビューが始まった当初は、これをスペイン人の国民性だと思って聞いていました。しかし、インタビューが進むにつれて「どうやらそれだけではなさそうだ」と、筆者の気持ちが変わっていきます。田中陽子選手が強調する「戦い」とは何なのでしょうか。

—日本人の「輪を重んじる」とは違うのですね。

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