J論プレミアム

サッカーも食も、アイデンティティーはとても面白い(えのきどいちろう)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

サッカーも食も、アイデンティティーはとても面白い(えのきどいちろう)えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』百三十八段目

 

■川崎のソウルフード

9月最後の週末、「金J」開催で行われたJ1第32節、川崎-新潟戦(Uvanceとどろきスタジアム)は散々な内容だった。5対1のワンサイドゲーム。アルビ担の筆者としては「帰り道、新丸子までが遠かった」と言わざるを得ない。この後、ルヴァンカップ準決勝で当たる相手にボコられたくはなかった。それにしてもここ3戦で11失点は多い。アルビ公式は「モバイルアルビレックスZ」(「モバアル」、「モバゼー」などと略称される)という動画&テキストの有料サービスを運営し、選手の素顔や練習風景、試合レポートなどを配信しているのだが、失点の多さにキレたサポがSNSで「モバアルでヘラヘラしないで守備練習しろ」と投稿し、第二の「金沢コーラ事件」勃発かと話題になっているくらいだ。

※金沢コーラ事件→2023年シーズン、成績不振のツエーゲンにキレたサポが「選手がコーラを飲んでいる」と驚きの通報を行い、全国区の話題になった。

もちろん僕も新潟の建て直しに思うところあり(ルヴァンカップを獲らせる気マンマンだ!)、大敗後のリバウンド・メンタリティーに期待するところ大だ。あとになって32節はいい勉強になったねと笑えるのが理想なのだが、あの日、等々力でもう一件、グウの音も出ないシーンを目撃したのだった。

元祖ニュータンタンメン本舗の出店である。

 

 

思わず食ってしまった。やられた。ニュータンタンメンがスタジアム出店していたとは。まぁ、フロサポさんからすると「それ、今言う?」だと思うのだが、何しろ僕は基本、年一でしか等々力にお邪魔しないアルビ担だ。そこは大目に見て欲しい。ニュータンタンメンは旨い。あのタマゴのふわふわ浮遊している感じが好きだ。今度から等々力に来たらニュータンタンメンだなと思う。

が、グウの音も出なかったのだ。ショックを受けた。これで名実ともに川崎のソウルフードはニュータンタンメンだなぁと思った。若い世代のフロサポ(あるいは子どものフロサポ)に強い刷り込みが行われるだろう。ニュータンタンメンは川崎だ。川崎はニュータンタンメンだ。不可分に結びついているetc.

唐突に言うのだが、僕は山田うどん派なのだ。以前は等々力に山田うどんが出店していた。スポンサーボードにも「山田うどん」の文字とかかしマークが入っていた。山田うどんは一般に「埼玉のソウルフード」と呼ばれ、埼玉スタジアム出店(広告ボードに唯一、「赤いかかしマーク」が入っていた)で知られていたのだ。それがコロナ禍の影響もあって、業態の変更・縮小を余儀なくされ、現在はサッカースタジアム出店をやめてしまった。

僕は北尾トロさんと共著で山田うどんの本を出すほどの「山田者」だ。一時は等々力でも埼スタでもホクホク顔できつねうどんを食べていた。思えば幸せな時代だった。J1の2スタジアムで山田うどんが食せたのだ。

 

▼埼玉のソウルフード

さて、読者は「埼玉のソウルフード」の山田が埼スタ出店していたことはわかるが、なぜ等々力にも力を入れていたのかと疑問に思われないだろうか。山田うどんの店舗は埼玉県だけでなく、関東一円に広がっているが、特段、川崎市が重点地区だったわけじゃない。労力を費やし、フロンターレ色を出していったのは謎だった。

 

※この続きは「サッカーパック」に登録すると読むことができます。

(残り 1549文字/全文: 3307文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ