J論プレミアム

あちこちうらやましかった広島旅(海江田哲朗)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

噂以上の迫力だったエディオンピースウイング広島。城福浩監督は念願の約束を果たした。

 

あちこちうらやましかった広島旅(海江田哲朗)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]百三十一段目

 

■広島で起きた城福浩監督への拍手

試合前のチーム紹介で「監督、城福浩」とアナウンスされ、スタンドから万雷の拍手が沸き起こる。アウェー側の指揮官に対し、これまで僕が聞いたことのない盛大なものだった。

6月15日、エディオンピースウイング広島。J1第18節、東京ヴェルディはサンフレッチェ広島と対戦した。

東京Vは1‐4で敗れた。力の差をまざまざと見せつけられる完敗である。城福監督は遠く広島まで駆けつけた緑のサポーターに挨拶し、踵を返して逆側へと向かう。広島のゴール裏に深く一礼、そしてバックスタンド、メインスタンドにも頭を下げた。感極まった表情でスタンドを見つめ、足早に去った。

試合前、城福監督は次のように語っていた。

「(2018年から4年指揮を執った)広島への思いは特別です。最後は(事実上の解任となって)選手、スタッフ、サポーターにきちんとした挨拶ができず、東京に戻ることになりました。選手とは先日のルヴァンカップの際に何人かと話せましたが、何よりもサポーターに挨拶ができてないのが心残りなんです。僕にやれることは、あのスタジアムでいい試合をすること。そして、サポーターに挨拶をすること。絶対に彼らのところにいかなければならない。それが礼儀です。ただ、これは自分の思いですので、とにかくチームが最大値を出し、選手を躍動させ、悔いのない戦いをすることに集中したいと思います」

よそはよそ、うちはうち。隣の芝生は青く見えるもので、どのクラブにも美点と欠点、長所と短所がある。よって、僕は対戦相手のクラブをうらやましいと感じることはあまりないが、今回ばかりはその思いがふつふつと湧き上がった。

なぜ、味の素スタジアムで昔の監督を迎え、あのような惜しみない拍手が送られる時間に立ち会ったことがないのだろう。あったとすれば、自分はどうして記憶にとどめていないのだろう。

理由のひとつは、監督の就任期間の長さか。基本的に広島はひとりの監督が長期に渡ってチームを預かる。たとえば、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は5年と少し、次の森保一監督は5年半、城福監督は約4年、現在のミヒャエル・スキッベ監督は3年目に入っている。そうして長期的なスパンでチームづくりを行い、周囲との結びつきもまたじっくり時間をかけて築いたに違いない。

 

※この続きは「サッカーパック」に登録すると読むことができます。

(残り 1192文字/全文: 2656文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ