J論プレミアム

番記者人間模様(海江田哲朗)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

日本屈指の臨場感が味わえるヤマハスタジアム。またいつか。

 

番記者人間模様(海江田哲朗)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]百十七段目

 

■家族の次に一緒に過ごす時間が長い人たち

東名高速道路は渋滞していた。

10月28日のJ2第40節、東京ヴェルディは昇格を争っていたジュビロ磐田と一戦を交え、1‐1のドローに終わる。17時過ぎに仕事を終え、番記者仲間4人とクルマに乗ってヤマハスタジアムを出た。

僕らの間では珍しいことだった。その時々でタクシーに同乗したり、近くの駅まで送ってもらったりしたが、わざわざ示し合わせて行動することはない。歓送迎会やクラブオフィシャルの会食といった特別な日でもない限り、飲み会を開くこともない。

東京Vにとって16年ぶりのJ1が、一戦ごとに現実味を帯びてきていた。磐田戦の日は、ひとりがクルマを出すということで、どうせだったら帰りはみんなで一緒に帰ろうか、となったのだ。大一番のゲームで勝てればわいわい楽しいだろうし、仮に負けても誰かと話せれば気がまぎれる。シーズンの佳境を迎え、そんな気分だった。

つくづく、番記者仲間というのは不思議なつながりだと思う。利害関係が濃く、言ってみれば食い扶持を同じくする間柄だ。東京Vの取材キャリアはそれぞれで、フリーランス、会社員と働き方も異なる。各々の立場で少なくない時間と労力を費やしてきた。

東京Vが先制しながら追いつかれ、勝点1を分け合ったゲームとあって、車内の盛り上がりはいまいちだった。試合の振り返りの話はやがて尽き、最近のチームのことやサッカー界の動きが話題に出たあと、空白を埋めるように互いの身の上話になる。

「えっ、○○さんて、もうひとり弟いたの?」

「そんな青春時代を過ごしていたとは……」

練習取材や試合会場でしょっちゅう会い、僕にとっては家族の次に一緒に過ごす時間が長い人たちだ。そのわりには、互いのことをまったくと言っていいほど知らないことに驚かされる。いつもサッカーの話ばかりで、知ったところでそれがどうしたという気持ちもあった。ボールのある場所に集い、ああだこうだ言い合えれば、それで充分だ。

渋滞を抜け、サービスエリアでひと休みし、20時頃には東京に入った。

ひとくくりに番記者と言っても仕事のやり方や力点の置き方は違う。けれども、いまの心はひとつだ。宿願のJ1昇格を達成する東京Vを見たい。そして来年、J1に舞台を移すチームの続きを書きたい。「今年、できればヤマハにはもういきたくないなあ。あそこで戦うジュビロは手強すぎる」と僕。また来週クラブハウスで、とその日は解散した。

結局、僕たちは再びヤマハにいくことも、磐田と対戦することもなくなった。

 

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