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ダービーチルドレンが生まれる。12年ぶりの東京ダービー(海江田哲朗)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

12年ぶりの東京ダービーに、アカデミーの選手も応援に駆けつける。
平日ナイトゲームの天皇杯にもかかわらず、1万7000人を超える観衆を集めた。

 

ダービーチルドレンが生まれる。12年ぶりの東京ダービー(海江田哲朗)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]百九段目

 

■12年ぶりの東京ダービー

飛田給駅は緑と青赤がごっちゃ混ぜになっていた。

7月12日、天皇杯3回戦で実現した東京ダービー。公式戦ではじつに12年ぶりの対戦である。

味の素スタジアムまでの一本道、僕の前を歩く集団は見知った顔だった。東京ヴェルディユースの選手たちである。口々に、メンバー入りしたチームメイトの白井亮丞のことを話していた。双方、アカデミーの選手たちが応援に駆けつける。特別な一戦ならではだ。

東京Vの先発メンバーには、12年前のダービーにボールパーソンとして立ち会っていた選手がいる。今季、国士舘大から加入したルーキーの綱島悠斗だ。2011年5月4日、J2第10節のFC東京戦(0‐0△)。綱島は当時10歳、東京Vジュニアに所属する小学5年生だった。

試合前から異様な熱気に包まれたゲームは、FC東京が先制する。20分、東京Vの守備の綻びを突いた塚川孝輝がミドルシュートを叩き込んだ。後半、FC東京の猛攻をしのいだ東京Vが反撃。70分、北島祐二のコーナーキックからヘディングシュートがネットを揺らす。誰が決めたんだと双眼鏡を覗くと42番の背中。なんとびっくり、高3の白井だった。ゴールを目撃したユースの仲間たちは、さぞ盛り上がったことだろう。次代を担うにふさわしい、新進気鋭のストライカーの出現だ。

後半に入り、綱島はセンターバックからアンカーへとポジションを1列前に上げた。そして、J1レベルのスピード感、ボディコンタクトにだんだん適応していくのが見て取れた。

90分では決着がつかず、ゲームは延長戦へ。延長前半、相手のエースであるディエゴ・オリヴェイラと対峙した綱島は、落ち着き払った対応で侵入を阻んでいる。

「相手はそれぞれ個人能力が高く、特にディエゴ選手はボールを隠すのが巧かったですね。前半は競り合った際にファールになっていたプレーが、試合を通じて修正できたのはよかったです。相手がJ1だろうと、やれる自信はありました。特に緊張することもなく、全員まとめて抑えてやるぞ、と」(綱島)

120分を戦い、1‐1の引き分け。天皇杯ラウンド16に進出する勝者はPK戦で決定される、綱島は7番目のキッカーに指名された。「散々、煽ってきた相手のサポーターを黙らせてやりたい。早く蹴りたいと、身体がうずうずしていました」と言ってのけるのだから、いい心臓をしている。順番が回ってきた綱島はヤクブ・スウォビィクの動きを冷静に見極め、ド真ん中にシュートを決めた。

9人目まで全員成功させたFC東京に対し、東京Vは千田海人のシュートがキーパーにストップされる。味スタは沸き上がる青と赤に支配された。

 

■ダービーの洗礼は一生もの

綱島は言った。

 

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