J論プレミアム

ブリオベッカ浦安のハッピーエンドのその後(えのきどいちろう)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

ブリオベッカ浦安のハッピーエンドのその後(えのきどいちろう)えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』百六段目

 

 

■「明暗分かれた」その後

日曜日、予定が空いてたので天皇杯を見に行こうと思った。1回戦だ。ついに県代表どうしの激突が始まる。Jリーグチームが参戦してからの(きわめてNHK-BS中継的な)「ジャイキリ待望目線」もいいのだが、僕はある1つのチームが県内を平定し、次に他県の領土を狙うという「信長の野望」的な、県代表決定戦(「○○県サッカー選手権大会」)→1回戦のあたりが好きだ。何年か前、旅先の長良川球技メドウで岐阜県決勝、FC岐阜SECOND-NK可児を見たとき、心の底から楽しかった。スタンドに異様に少年サッカーチームが多くて、あと意外に1人客もいて、遠くの山に岐阜城も見えて、すんごい解放感があったのだ。あれはたぶんJリーグのヒエラルキーからの解放感だったろう。

日程を調べ、1回戦、近場でどんなカードが組まれてるか確認した。気になったのは2試合、栃木県代表・栃木シティFCvs愛知県代表・FCマルヤス岡崎(栃木グリーン)、千葉県代表・ブリオベッカ浦安vs茨城県代表・筑波大(ゼットエーオリプリ)。このうち栃木シティーマルヤス岡崎戦は5月20日(土)開催で(アルビレックス新潟の鳥栖戦と重なってしまい)NGだった。必然的に21日(日)開催のゼットエー、ブリオベッカー筑波大戦に決まる。おお、久しぶりに市川臨海だ。これは嬉しい。

僕は栃木県に友人知人が多くて、「栃木ウーヴァFC」あらため栃木シティFCに注目してきた。岩舟町のシティ・フットボール・ステーションも見学に行ったくらいだ。で、思い返されるのが昨年(2022年シーズン)の全国地域チャンピオンズリーグだ。決勝ラウンドでFC刈谷に勝ち、沖縄SVとスコアレスドロー、最終第3戦は「勝てばもちろん、引き分けでもJFL昇格」という優位に立った。栃木のメディア関係者は沸き立っていた。

そこに立ちはだかったのがブリオベッカ浦安だった。3対1で栃木シティを破り、逆転優勝! 見事マクリを決め、JFL昇格を果たしたのだ。僕はネット配信でこの一部始終を見て、サッカーの怖ろしさを噛みしめた。栃木シティを縛ったプレッシャー、ブリオベッカ浦安の勢い。有利が不利になり、優位が劣位になる不思議さ。僕が天皇杯で見たいのはあのとき火花を散らして交錯し、今は関東サッカーリーグと日本フットボールリーグ(JFL)にカテゴリーが別れた2チームだった。いわば「明暗分かれた」その後。

「明暗分かれた」その後、は僕が子どもの頃からずーっと気になってるテーマだ。クラーク・ケントはメガネを外し、タイツスーツに着替えてスーパーマンになるわけだが、悪者を退治した後、一人アパートへ帰って何をしているだろうか。おなかが減って冷蔵庫を開けてみるだろうか。エンドマークが出た後も人生は続く。ハッピーエンドもバッドエンドも実は「つづき」がある。2つのサッカークラブが「明暗分かれた」その後もストーリーは続くのだ。それを見に行きたいと思った。

 

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