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【六川亨の視点】2023年4月16日 J2リーグ第10節 FC町田ゼルビアvs大分トリニータ

J2リーグ第10節 町田 3(3-0)1 大分
14:05キックオフ 町田GIONスタジアム 入場者数 6,215人
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立ち上がりの大分はけして悪くなかった。下平隆宏監督が「前々節のいわき戦、前節の山口戦と、前から来る相手をしっかり外すことができて、自信になって今日(の試合)に入った」と言ったように、GKと3BKにダブルボランチを加えた6人でていねいパスをつないで町田のプレスを無効なものにした。

しかし前半23分、ワンプレーが試合の明暗を分けた。MF平川悠のシュートから獲得した右CK、黒田剛監督が「先制点を取りたい。右CKがあったら使おうと決めていた」というデザインされたセットプレーで先制する。MF高橋大悟のショートCKを受けた左SB翁長聖は、普通ならクロスを上げるか高橋にリターンするところだが、ワンタッチで前方の狭いスペースにショートパス。するとそこに翁長を越すようにオーバーラップした平川はまったくのフリー。彼のマイナスのクロスをFW荒木俊太がこれまたフリーで押し込んで先制点を奪った。

青森山田高校時代から数々のトリックプレーを実践してきた黒田監督からすれば、「彼らならクオリティーが高いので、大丈夫だろうというセットプレーを選択」して練習したわけだ。そして下平監督は「セットプレーは要注意」だったにもかかわらず、「我々の上を行くトリッキーなセットプレー。自信を失う失点になった」と潔く脱帽した。

この1点で動揺した大分は、33分にも自陣ゴール前でのパスワークで、高橋のプレスと連動した荒木にパスカットを許し、致命的な2点目を奪われてしまう。大分にしてみれば「首位攻防ということで、何が何でも勝ちたかったゲーム」(下平監督)だったが、終わってみれば「相手にボールを握られるだろう」と想定しながらも、「怖がらずに前からプレスに行って相手のミスを誘う」という黒田監督のプランが物の見事にハマった首位攻防戦だった。

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。

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