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病(やまい)に苦しむ人を孤立させない、アルビレックス新潟の病院ビューイング(えのきどいちろう)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

病(やまい)に苦しむ人を孤立させない、アルビレックス新潟の病院ビューイング(えのきどいちろう)えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』百二段目

 

 

■意外と知られていなかった新潟の病院ビューイング

今月、僕は浦議チャンネル「浦和レッズvsアルビレックス新潟」まったりプレビューLIVEに出演し、概ねご好評をいただいた(試合はやはり「アウェー浦和戦」の壁にはね返された。残念!)んじゃないかなぁと思うが、最後のほうに「面白いアルビレックス新潟の取り組みを紹介する」というコーナーがあり、「病院ビューイング」を取り上げたのだった。で、それがSNSではいちばん反響があった。「思わぬ反響」ってやつだ。新潟日報をはじめ、地元メディアでは何度も報じられ、僕としてはちょっとベタかなぁと思いつつ、取り上げたのだ。ニュアンスを言うと「まぁ、ご存知とは思いますが、これ、ホントに効果が上がってるんですよ」みたいなスタンス。

そうしたら浦議チャンネルで共演したUGさんをはじめ多くの方が完全に初耳らしかった。例えばツイッターに好意的な投稿をしてくれた「ぽろぷんてJリーグサッカーちゃんねる」さんが代表例だ。

 

 

僕はびっくり仰天だ。「過去最大級に共感」してくれたのは嬉しいけど、逆に言えばぜんぜん知られてない。やっぱり地方クラブは発信力が弱いんだなぁ。

というわけで、これを機会に「病院ビューイング」をしっかり書こうと決心した。これはスポーツの持つ力を示してくれる有意義な取り組みだと思っている。

 

■スポーツの一体感は患者さんやご家族を勇気づける

偶然だが、「病院ビューイング」の旗振り役を務めた中心メンバーの何人かは僕の親しいサポ仲間でもある。僕は09年シーズンからアルビレックス新潟のオフィシャルサイトでコラムを書くようになり、サポーターイベントを度々開催したりしているのだが、どうもサポーターにお医者さんがいるなぁと思っていたのだ。いわゆる「チームドクター」ではない。イベント後の懇親会で名刺交換し話し込むと、単なる熱心なサポーターで、職業がお医者さんだというだけだった。それが新潟市、長岡市、上越市…、と複数の病院にわたっているのだ。あぁ、これは何かユニークなことができるかもしれないなぁと思った。

で、僕の記憶が正しければ2014年だ。Kさんという「機関車タイプ」と評したい女性サポがいて、「病院ビューイング」実現へ向け猛然と動き出した。僕のところにも資料が送られてきて、一歩一歩実現に近づくたび、LINEで連絡をいただいた。Kさん自体は別に医療関係者じゃないんだけど、持ち前の熱意と交渉力・営業力で「病院ビューイング」を前へ進めていく。

最初は同年4月、新潟大学総合病院だった。Kさんが所属するサポーターグループ「えがお応援団」が中心となり、病院とクラブの連携によって、「病院ビューイング」が実現したのだ。入院されていてビッグスワンへ足を運べない患者さんに試合を体験してほしい。会場に大型のプロジェクターが用意され、キックオフ前に患者さんが集まった。皆さん、パジャマ姿だ。

ちょっと無理があるかもという懸念もあった。病気やケガで大学病院にいる人にサッカーを見せるのだ。見せようとするサポーターの側はサッカーが好きでサッカーが大事だろうけど、入院してる人はそうじゃない。うまく行くのだろうか??

それが大好評だった。いつも病室で見ているテレビと違って、「病院ビューイング」はひとつところにみんなが集まって、みんなでアルビを応援する。ゴールが決まればみんなで拍手する。クラブやサポーターグループも試合会場さながらの雰囲気づくりを心掛けた。マスコットのアルビくんや選手の等身大バナーが登場し、レプリカユニのサポが応援を教える。ハーフタイムには患者さんの身体が固まらないよう(ずっと同じ姿勢だ!)ストレッチ体操を実施した。試合後のアンケートには「楽しかった」「みんなで感情を共有することで一体感が生まれる」「またやってほしい」とポジティブな反応が相次いだ。

 

 

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