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横浜FCの一件はどう決着するのか?(えのきどいちろう)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

横浜FCの一件はどう決着するのか?(えのきどいちろう)えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』九十八段目

 

 

■クラブがコールリーダーを選ぶ時代へ

1月下旬、異様なツイートを目にして、ギョッとしたのだ。青いサムネに「NEWS/お知らせ」の文字とエンブレムが入っている。横浜FCの公式アカウントだ。タイトルは「応援をリードするコールリーダー・太鼓リーダーなどの中心メンバー募集のお知らせ」。これまで様々なクラブでスタッフやボランティアの募集告知は見たことがあったが、コールリーダー&太鼓リーダー募集は初めてだ。

これ、もしかして時給が発生するようなやつだろうか。Jリーグクラブが応援を仕切る中心メンバーを「公募」している。そんな例がこれまであっただろうか。とにかくクリックして文面を読み込んでみる。

と、明らかに「公募」だった。指定ウエアの着用など条件が並んでいて、応募者は登録フォームから申し込むようになっている。2023年2月3日(金)11時が締切。今季より「スタジアムの雰囲気や応援を広げていく中心地として、『オフィシャル応援エリア』と『コールリーダー、太鼓リーダー専用席』を設置」するそうだ。どうも時給には触れていない。

「これまでクラブの目指すスタジアムづくりにご賛同いただくために、ゴール裏応援団体へクラブの想いと趣旨をご説明し、2023シーズンの開幕へ向けて協議を重ねてきましたが、合意には至りませんでした。そのため、ゴール裏団体との協議結果や、HAMABLUE SESSIPN、サポーターミーティングでいただいたご意見をもとに、今回の募集を行わせていただくこととなりました。」(同横浜FC告知、抜粋)

あぁ、これ、サポーターグループと決裂したんだなぁと思う。どう協議し、どう合意に至らなかったのか経緯がわからないけれど、横浜FCはこれまでゴール裏を仕切っていたグループと袂を分かち、応援を刷新しようとしているらしい。

僕の率直な感想は「こんなことがあり得るのか!」であった。僕の理解ではサポーターはあくまで自律的な存在だ。応援はクラブ主導ではなく、自発的に生まれるものだと思っている。まさか応援を管理し、コントロールしようとするJリーグクラブが出現するとは思わなかった。これまでのサポーターグループはクラブ側の条件を受け入れなければゴール裏から排除されるのか。

 

■東北楽天ゴールデンイーグルスの場合は

僕はニッパツ三ツ沢球技場には年に一度、試合で行く程度なので、肌感覚がない。まったくの外野だ。サポーターグループとクラブ側の決裂も詳細がわからない。後日、BLUTIGRE YOKOHAMAのnote(「横浜FCゴール裏より共に応援する仲間へ」)が発表になり、経緯のアウトラインを知ることができたが、全体像がよくわからない。

サポーターグループとクラブ側はこれまでずっとギクシャクしてきたらしい。その軋轢は「チームを勝たせる」という共通の目標に吸収され、たぶん大事(おおごと)にはならずにすんできた。が、今回はクラブ側が大ナタを振るった。当然、サポーターグループは態度を硬化させる。

「クラブカラーで埋まるスタンド、観客の増加、一体感のある応援という理想像には大筋で異論はありません。ですが、今回のクラブの一方的な話しの進め方、新設されたルールによる強制と排除の理論については到底納得できないため、ルールの撤廃を求めます。」(同note「横浜FCゴール裏より共に応援する仲間へ」より、抜粋)

僕は外野だから何かを言う資格がない。横浜FCの未来はあくまで横浜FCに主体的に関わる人が決めるべきだ。でも、私情としては(もうこじれているのかもしれないが)これ以上、こじれてほしくない。どうかクラブとサポーターグループが前向きに歩み寄れますようにと祈る気持ちだ。僕の横浜FCへの思いは去年6月、当連載「これぞサッカーど真ん中!三ツ沢決戦」で書いた通りだ。あの日、愛するアルビレックス新潟は敗れたけれど、三ツ沢の雰囲気は最高だった。

 

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