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あのときサッカー人生が終わった…谷口博之の内側から見たフロンターレ、マリノス、レイソル、サガン【サッカー、ときどきごはん】

 

神奈川の時代が続いている
2017年以降、Jリーグの覇者は神奈川の2チームしかいない
2022年も最後まで優勝を争った
横浜F・マリノスと川崎フロンターレだ

その両方のチームでプレーした選手がいる
古豪としての立場を確立しているチームと
近年急激に力をつけて台頭したチーム
谷口博之にその両者の違いとオススメのレストランを聞いた

 

■人生で一番影響を受けたのは寺田周平さん

僕は神奈川の横須賀に生まれて、マリノスのジュニアユース、ユースを経て川崎フロンターレでプロ選手になりました。自分がサッカーをやっててこれまでで一番つらかったのは、中学1年生のときでしたね。

自分で言うのも何ですけど、小学5、6年生のころは結構スーパーだったんですよ。同じ横須賀出身の先輩には石川直宏さん、後輩には小野裕二がいるんですけど、ちょうど彼らみたいなプレースタイルで。

ボールをもらったら全部ドリブルで仕掛けて、小学校のころは足も速かったんでスピードだけで抜いていけて。サッカーセンスみたいなものは磨かなくて、「ボールをもらう前に周りを見よう」と言われても「いや、相手にボールを取られなきゃいいでしょう」という考えの、ガキ大将みたいな感じです。

石川さんとか小野はそのままのプレースタイルでプロになりましたけど、僕は中学で横浜F・マリノスのジュニアユースに入ってからプレースタイルを変えざるを得なかったですね。中学1年のころは身長も大きくなかったし、プレーしてもうまくいかなくて周りの仲間からどんどん抜かれてって。それまで取られなかったボールも奪われるようになったし。

ケガもしたんです。小学校時代に朝も夜もコンクリートの上を走り回ってたツケが来て。成長痛だったのかもしれないですけど、ヒザがすごく痛くなって走るのに苦労しました。

プロになってから試合に出られないとかいろいろ苦しいときはありましたけど、でも、すっかり自信をなくして、サッカーもできなかったあの中学1年生のときが一番つらかったです。練習は月曜日と木曜日がオフで、そのとき友だちと遊ぶと「こっちのほうが楽しい」と思ったこともありましたし。

僕が乗り切れたのは、母子家庭で、ハングリー精神じゃないけど、「オレがここで辞めたらかあちゃんに迷惑かかる」と思ってたからですね。そのころには「絶対サッカー選手になってやろう」「サッカー選手ならなかったら何をして生きていくんだ」みたいな思い詰め方もして、ずっと耐えてたんです。

そのころ、今も連絡を取っているジュニアユースのときの監督さんが「ボールを貰う前に周りを見る」「パスの選択肢を増やして持つ」とか、そういうことを指導してくれました。まずそれが役に立ちました。

そして小学校を卒業するときに148センチだった身長もすごく伸びて、中学を卒業するときには175センチぐらいになったんですよ。中学2年ぐらいからは体のバランスもよくなって、思った通りではないにしろ普通にプレーが出来るようになりました。それで中学2年のときにはレギュラーを取れたんです。

そのころの僕を知っているマリノスの人と話をしたら「間違いなく一番練習してた」とは言ってもらいました。ユース監督だった安達亮さんに聞いても「練習はとんでもない量をやってた」と言ってもらえて、それには自信ありますね。

ただユースには上がれたんですけど、トップには上がれなかったんですよ。進路に大学も考えなきゃいけなくなったときも、やっぱり母親に迷惑をかけたくないという思いがあって迷ってるときに川崎フロンターレに拾ってもらいました。2004年ですね。

そのころのマリノスって、2003年に岡田武史監督が就任してファーストステージもセカンドステージも優勝という完全優勝を成し遂げてました。そしてフロンターレはまだJ2にいて、入ったときに先輩から偉そうにしてるという感じで思われてたんです。

でもそのとき横須賀の先輩の寺田周平さんがいろいろ面倒を見てくれたんですよ。もちろん強く言ったりしないで、優しく導いてくれる感じで。自分の人生の中で一番影響を受けたのは寺田さんだと思います。

ボランチの自分がポジションを空けて攻められてしまったときでもセンターバックの寺田さんは「自分だけでも守るのが責任」と言ってくれる人でした。そんな選手ってなかなかいないですよね。本当に育てられたと思いますし、人間としても大きくしてもらったと思いますね。

僕が入ったときのフロンターレは関塚隆監督で、中村憲剛さんとかジュニーニョさんがいたし、他も誰が出ても強かったなと思いますね。憲剛さんには「いいポジションを取っていれば必ずパスコースがある」とずっと言われてました。

 

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