J論プレミアム

ヤケドしそうに熱いビッグスワンへ続く道(えのきどいちろう)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

ヤケドしそうに熱いビッグスワンへ続く道(えのきどいちろう)えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』九十段目

 

 

■色々な事情が交差するリーグ終盤

当コラムの締切は月末が基本なのだが、今回は特別に10月3日が設定された。編集部の思惑はもちろん「J2第39節の結果を入れ込みたい」だ。僕が追いかけているアルビレックス新潟は最短で39節、J1昇格の目があった。1日(土)アウェーの山形戦に勝利すれば「王手」がかかり、翌2日(日)3位岡山が負けるか引き分けるかすれば昇格が確定する。
まぁ、ライターとしては「他チームの結果待ち」というのはビミョーで、出来たら「決勝ゴールズドンッ、歓喜にわくスタジアム、サポーター涙の昇格決定!!」みたいなのが有難いんだけど、こればっかりは選べない。ぜいたく言ってる場合じゃない(連敗でもすれば勝ち点差なんか一気に詰まってしまう)から、僕も今回の入稿で昇格原稿が書きたかった。

そうしたら39節、アウェー山形戦は1対1で辛くもドローだった。「辛くも」というのは負け試合をどうにか追いついた苦しい展開だったからだ。よく言われる「ボクシングなら山形の判定勝ち」ってやつだ。モンテ強かった。球際の激しい好ゲームだ。本当に粘り強く守るんだよ。アルビのリズムは寸断され、自由にさせてもらえない。谷口海斗の強引にねじ込むゴールが貴重な勝ち点1をもたらしたが、NDスタを埋めた5千人超の大サポーターはずっとフラストレーションを抱えたままだった。

岡山の結果を待たず、今節の昇格はおあずけになった。意地を見せた山形はしてやったりというところだが、本音を言えば失った勝ち点2が痛恨だろう。山形自身、プレーオフ圏内を目指してラストスパートをかけてるのだ。逆に新潟は勝ち点1ゲットは一歩前進だ。残り試合が減るなかで勝ち点を積み上げられた。ことここに及んだら試合内容よりリアリズムだ。

 

■次節、最高の舞台へ

僕はサッカー原稿で山形を「友軍」と好んで書いてきた。雪国クラブ、モンテディオ山形にシンパシーを感じ、天皇杯ファイナリストをはじめとする勝負強さにリスペクトを抱いてきたからだ。39節のドローは悔しいから、この続きはぜひJ1でやりたい。ご武運を!

※あ、そうそう、僕の大学時代の親友がモンテのスポンサー企業の社長をやってて、今季、冠スポンサーデーの挨拶に立つことになった。で、朝っぱらLINEで「えのきど、悪いけど挨拶の文面を考えてくれよ」というのが来た。「いやだよ、自分で考えろよ」と返したら「そんな冷たいこと言うなよ、たのむよ」としぶとい。しょうがないから(ライター生活初めて)スポンサー挨拶文を書いたのだ。但し、そいつは直前に体調を崩し、当日は専務さんの挨拶になった。専務さんが僕のペーパーを読んだかどうか知らないが、断りがなかったからたぶんご自分で考えたんだと思う。岡山とのリ・マッチだった。デザインされたセットプレーでいきなり失点した例の試合。

で、ご存知の通り39節の2日目はJ2戦線の趨勢(すうせい)を決める動きがあった。3位岡山が金沢に敗れ、自動昇格圏への追撃がほぼ絶望的となったのだ。金沢はこの勝利でJ2残留を決めている。この日は他に上位勢の熊本、仙台が敗れ、トップ2の新潟、横浜FCはいよいよ昇格の歓喜に近づいた。

アルビレックス新潟はホームで昇格決定戦が戦える。しかも40節の相手は仙台だ。これはチケットが売れている。クラブにしたら願ったり叶ったりだ。いや、まだ何も叶ってないが、チケット収入の面では願ったり叶ったりだ。間違いなく今季最多の動員になるだろう。また現在のビッグスワンは声出しも解禁され、発する熱がハンパない。コロナ禍で無観客や声出し禁止が続いたせいで、選手らも3万オーバーのビッグスワンの熱は未経験だったりする。それはしびれる試合になるだろう。フロントスタッフは今季のJ2入場記録更新を狙っている。

※現在のJ2レコードはアルビが前回、J1昇格を果たした03年11月23日の大宮戦、42,223人である。

 

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