J論プレミアム

ザ・中位対決にもサッカーの醍醐味あり(海江田哲朗)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 


7連戦の6つ目で8試合ぶりの勝利。ようやく暗いトンネルを抜けた。

 

ザ・中位対決にもサッカーの醍醐味あり(海江田哲朗)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]八十九段目

 

■連戦ならではの発見

残暑の時期の7連戦は想像以上に過酷だった。

じめじめと蒸し暑く、ゲームで疲弊して心身ともに回復し切らないうちに次がくる。日程が詰まれば故障者が出るリスクは増し、新型コロナウイルスの影響も尾を引いていた。

これが勝てれば全然違ってくるのだ。チームの勢いが新たなエネルギーを創出し、マイナス要因をはね返せる可能性がある。

城福新体制となって以降、J1参入プレーオフ圏入りを現実的な目標として捉えていた東京ヴェルディだったが、7連戦の道のりは険しかった。徳島ヴォルティス、ロアッソ熊本、ツエーゲン金沢に3連敗し、大きく後退。18年ぶりに進出した天皇杯準々決勝も京都サンガF.C.に1‐2の惜敗を喫した。過去一度も勝ったことのない曺貴裁監督のサッカーにまたも退けられた。ここで一撃を見舞えれば、積年の悔しさを晴らしてお釣りがくるわと意気込んだが、そうそううまく事は運ばない。

9月21日、台風で延期となっていたJ2第31節の水戸ホーリーホック戦。12位の水戸と13位の東京Vによる、ザ・中位対決である。昇格争いにも残留争いにも絡まない、当事者以外にはあまり関心を持たれない一戦だ。

東京Vと同じく水戸も連戦とあって、メンバーを大幅に入れ替えている。背番号の大きい、今季の出場が10試合以下の選手が5人もいた。ゴールキーパーの中山開帆以外は、20歳前後の若手である。

とりわけ目立っていたのが、坊主頭の38番、唐山翔自。ガンバ大阪から期限付き移籍で加入したアタッカーだ。

ドリブルでサイドをえぐったと思ったら、次の場面では巧みにディフェンスの背後を取って裏に抜け出す。そして29分にはクロスに合わせて右足を振り、ゴールネットを揺らした。

今季初ゴール(しかもバースデイゴールとな)の喜びを全身で表し、ベンチ前の祝福の輪に飛び込む唐山。記者席の右手、水戸のメンバー外の選手が固まっているエリアは、やんややんやのお祭り騒ぎである。これほど周りが大はしゃぎしているのだからナイスガイに決まっている。ともに汗を流し、彼らしか知り得ない手柄を立てるまでの苦労があったのだろう。

水戸の番記者、佐藤拓也さんは「今季のベストパフォーマンス」と目を細めていた。たまたま試合に立ち会った僕は、どうしてこんなタレントが埋もれていたのかと不思議に思うが、起用が限られていたのはそれなりの理由があるに違いない。

 

■熱量がピッチに充満している

両チームの置かれる状況に加え、今季の戦いと並行して来季のチーム編成も視野に入れるこの時期は、こうしたラッキーに恵まれやすい。監督は未知数な部分の多い選手にチャンスを与え、選手は是が非でも成果を残してやろうと懸命にプレーする。

 

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