J論プレミアム

拝啓、森保様。ブラジル戦では惨敗を。そして「このままではダメだ」と気づいてください

 

拝啓、森保一様

突然、このような手紙をしたためたご無礼をお許しください。しかしながら、グループEの大本命とされるドイツ、スペインにも確実に穴は存在します。問題は日本がそれに気づき、徹底して突いていけるかどうかです。さすがに日本を代表するチームなので、スタッフの方も含め重々承知かと思いますが、万が一ということもありますので僭越ながら記事という体裁で前編・後編にまとめさせていただきました。

前編はスペインとドイツの弱点と日本が準備すべき攻略法について、後編は貴殿の指揮継続の是非を含めた日本代表の停滞と改善の方法について、スペイン在住のジャーナリスト・木村浩嗣氏、ドイツ在住の指導者・中野吉之伴氏、サッカーライターの西部謙司氏の3名に忖度なしで議論していただきました。本大会での日本の良い結果を願う気持ちは同じです。どうかご高覧いただければ幸いです。

敬具

→前編「余計なお世話かもしれませんが、W杯でのスペインとドイツの倒し方お教えします

 

▼「日本はボールを奪いやすい」。このままではスペインのプレスの餌食に

――スペインにいて日本代表の試合はほとんど見られていないという木村さんですが、ざっくり日本の印象はどんな感じですか?

木村:一応ちょっとは見てるんですけど(笑)、あくまで印象で言うと、スペインからすれば多分日本代表のボールは奪いやすい。スペインはボールロストした後にプレスをかけるわけですけど、僕が見た試合での日本は近い人を使ってパスを繋ぐ傾向がある。だから、ボールの周辺に対してプレスをかければ停滞するような気がするんですよね。しかも関係性が2人とかなので、2人ぐらいの関係性だったら簡単に止められますよね。

――なるほど。

木村:スペインだと少なくとも3人は動いていて繋いでいくので相手のプレスをかわせるわけですけど、日本は近くの選手を使いたがるのと、ドリブルも使いたがる。何かしらドリブルを入れて引きつけた裏にもう1人が出てくる、ぐらいまでの2人の関係性で繋いでくるようなイメージなので、そこさえ押さえておけば奪いやすいし、奪えなくてもバックパスしてくれるような印象がある。

――数試合見ただけの木村さんの分析、西部さんどうでしょうか。

西部:日本のパスワークには基本的には構造がないです。

――構造ですか。

西部:何て言ったらいいんだろう。例えばスペインだったら、インテリオール(インサイドハーフ)、いわゆるSB、CB間のボランチ脇のポジションが最も有利なので、そこを簡単に捨てるってことはないんですよ。

木村:はい。

西部:まずそこを起点に動くということは約束事としてある。そこで受けられない時に近くに寄る。寄り過ぎた場合にはSBと代わるとか、そういう構造がもうはっきりしてる。日本は構造がなくて、あったとしても希薄。だから現象としてはみんながボールに寄って来る。

木村:だからプレスを非常にかけやすい。

西部:そうすると、相手はどんどん囲ってくるので、そこの隙間をいかに突破するかというところで川崎フロンターレ印の選手たちが割と重宝されている。それがアジアにはある程度は通用する。ただそのアジアでもちょっと怪しい。

――アジアでも怪しい。

西部:まあでも基本的には通用している。ワールドカップは、多分無理。

――無理。

西部:だからそこを突破できるようであれば、日本らしさというものを出しながら、世界で驚きを与えることはできるかもしれないけど、今の日本代表には多分そこまでの力はないと思う。日本サッカーのポテンシャルとしてはあるのかもしれないけれど…。

――そこはW杯のある11月までに何とかできたりはしないんでしょうか。

西部:構造がないのは、今さらどうにもならないです。ちょうど今日(5/20)、6月のキリンカップのメンバーが発表されましたよね。ほとんどアジア予選のメンバーのままで変わってないわけですよ。初選出が…

中野:伊藤洋輝。

西部:そう伊藤洋輝だけ、ですよね。

中野:あとは復帰組の何人かですね。

西部:ということは、あのアジアでやってたサッカーを基本的には継続していくことが濃厚なわけですよね。それでは到底通用しないというのは、自覚しなければいけないんだけど、メンバーの選び方を見てる限りは、ワールドカップ用に何かを変えていくぞという意思はあまり感じられない。

――川崎や元川崎のメンバーを中心にアップデートしていくという感じなんでしょうか。

西部:いや予選でもうアップデートは終わってます。アップデートしました…

――以上、終わり。

西部:はい、それでまだこのレベルです。

――では、どうすれば?

西部:さらに変えるんだったらメンバーを変えなきゃいけないんだけど変わってない。

 

▼「選手側からの発奮待ち」という日本代表の伝統芸。絶対にブラジル相手に善戦してはいけない

中野:あとは毎回そうですけど、選手側からの発奮待ちというところが日本代表の伝統になっていますよね。それは日本の良さなのかもしれないけれど、弱さでもある。

――指導者からではなく選手発の働きかけで何かを変える。

中野:そうです。これまでもずっとそうだったじゃないですか。上手くいかない時があって、選手ミーティングをして、「俺達が頑張んなきゃ」となって、少なからず成果を残す。もちろん、そういうのもありなんですけど、基本的な構造とかがあった上で、そういったカンフル要素が出てこないと、特に今回のような強者揃いのグループだとどうだろう。選手の発奮に希望を見出さなきゃいけないのは…。

――つらいですね。いずれにせよ、相手をしっかり分析をして、どうやって戦うかを突き詰めていかないと。

西部:いやそれは必ずやっているはずですよ。やった上でこのメンバーなのか、という感じはある。あんまり時間がないはずなんだよね。
中野:ワールドカップまでの調整期間って、この6月がラストチャンスですよね。

――たしかに海外組含めまとまって試合できる準備期間はもうほとんどなさそうです。

中野:本番に向けて何ができるかが一番大事な時期だと思うんですよ。

 

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