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WEリーグを大切にしたいからこそ「1560人」について考える(えのきどいちろう)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

WEリーグを大切にしたいからこそ「1560人」について考える(えのきどいちろう)えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]八十二段目

 

 

■WEリーグ初年度の成果と課題

WEリーグの記念すべき1stシーズンが閉幕した。優勝は16勝2分2敗(勝ち点50)のINAC神戸だった。チームを率いた星川敬監督は今季限りの退任(2022年5月よりY.S.C.C.横浜の監督に就任)が報じられている。思えば去年2月の古巣復帰は神戸を「WEリーグ初代女王」に輝かせるミッションだったのかもしれない。それを成し遂げて次の目標へ向かう。何かちょっとスポーツマンガみたいな出来過ぎのストーリーだ。

WEリーグによると6月7日、ビルボードライブ東京にて「2021‐2022WEリーグアウォーズ」が開催され、優勝チーム、MVP、ベストイレブン、得点王等の表彰が行われる。ちなみに初代得点王は14ゴールの菅澤優衣(浦和)に決まった。最終節まで田中美南(神戸)とデッドヒートを繰り広げてのタイトル奪取だった。

5月22日最終節を終え、WEリーグ公式アカウントは「本日、YogiboWEリーグ開幕シーズンが終了しました。今季、WEリーガーが318名誕生し、全110試合の総来場者数は171,601人となりました(以下、略)」と万感の思いをツイートしたのだ。僕は去年9月のWEリーグ開幕時の広告を思い出した。

「今日、日本の女性の職業が一つ増えた。」

インパクトがあった。単に新しいプロサッカーリーグが創設されるというだけでなく、スポーツがジェンダーの壁を突破するような新しい価値、社会性を持ち得るんだという宣言に思えた。端的に言ってカッコよかった。1stシーズンを戦い抜いた「318名」のWEリーガー、スタッフ、関係者におつかれ様を言いたい。日本で初めてのことを成就させたのだ。その栄誉は計り知れないと思う。

ただ件(くだん)のツイートは課題も同時に語っている。「全110試合の総来場者数は171,601人となりました」ということは1試合の来場者数は平均1,560人だ。これはいくら1年目、種まきのシーズンとはいえ少なすぎるだろう。クラブを支えるチケット収入にダイレクトに響くし、いちばん担保したい公共性、社会性の面でもマイナスに作用する。WEリーグは「ウーマン・エンパワーメント・リーグ」の名称通り、社会的なメッセージを発したいのだ。それがコアな女子サッカーファンの範囲にしか届かず、世間に広まらないとしたらこんな残念なことはない。

 

■平均1,560人の理由を探る

僕の印象を率直に言うと「思ったよりJリーグのサポーターに広がらないんだなぁ」である。JリーグとWEリーグは兄妹の関係だし、理念的にも重なっているはずだが、案外つながりが薄かった。4月23日、味スタの「ヴェルディvsジェフ」「ベレーザvsジェフレディース」のダブルヘッダーが話題になったくらいだ。共同開催はもう一つ、5月8日、ビッグスワンの「アルビvsヴェルディ」「アルビレディースvsベレーザ」が行われた。

 

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