恩返し弾界のSSR。大当たりの味わいとは?(海江田哲朗)
『タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。
高木善朗と高木大輔は、2015年の途中から2017年まで東京ヴェルディに同時在籍した。
恩返し弾界のSSR。大当たりの味わいとは?(海江田哲朗)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]八十一段目
■ここまで来たら大当たりを見てみたい・・・
デンカビッグスワンスタジアムを最初に沸かせたのは、高木善朗のゴールだった。
5月8日のJ2第15節、アルビレックス新潟vs東京ヴェルディ。27分、高木善の鮮やかな反転シュートが決まり、新潟が先制する。新潟にとっては点を取るべき人が取った単なる先制点だったろうが、東京Vからするとより複雑な意味合いを持つゴールだ。
遡ること数週間前――。
4月17日、J2第10節のレノファ山口FC戦。東京Vは高木大輔にダメ押しのPKを決められ、1‐3で敗れている。
4月23日、J2第11節のジェフユナイテッド千葉戦は、高木俊幸にゴールを許した。結果は1‐1のドロー。
皆さんご存知、高木三兄弟。言わずもがな、東京Vのアカデミーが輩出した俊英である。今季、長男の高木俊がセレッソ大阪から千葉に移籍したことで、三者仲よくJ2で顔を揃えている。
このときから東京Vの周辺では、もしや3連発を食らうのではないかともっともらしくささやかれた。世間では「恩返し弾」とか言われている例のアレを。『フィーバー高木三兄弟』のスーパーリーチだ。かしましい音を鳴らし、ド派手な演出が頭のなかでグルグル回る。大きな声では言えないが、こうなったら大当たりを見てみたいという誘惑に駆られた。
■こちとら三兄弟ともヴェルディ育ち
で、実際に食らってみてどうだったか。
やられた~とのけ反るようなショック、ほぞを噛む思いは湧かなかった。痛恨の極みもまたそれはそれで味わい深い。麻薬性を帯びたサッカーのコクの一種である。
ほんとにあるんだな、こんなこと。てっきり冗談のつもりでいたのに。呆然とし、そう思っただけである。
恩返し的な奥ゆかしさは微塵も感じられない。高木大は3年ぶりのゴールに喜びを爆発させ、高木俊はうれしい今季初得点。高木善に至ってはしてやったりの顔である。順番も悪かった。三男、長男ときて、ラストの仕上げに最も勝負強い次男。流れに引き込まれ、逃れられない運命だったようにさえ思える。
それにしても、わずか1ヵ月未満で完結させるとは恐れ入った。電光石火の早業は俊足で名を馳せた元プロ野球選手の父親、高木豊さん譲りか。
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