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Jリーグ好き視点のジャパンラグビー・リーグONE観戦(えのきどいちろう)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

Jリーグ好き視点のジャパンラグビー・リーグONE観戦(えのきどいちろう)えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]七十四段目

 

 

■華々しいスタートのはずが・・・

2022年1月のスポーツ界のエポックはジャパンラグビー・リーグONEの旗揚げであった。2003年から18年続いたトップリーグに代わり、装いも新たにリーグONEが発足したのだ。W杯の大健闘で火がついたラグビー人気の受け皿として、関係者の期待は大きい。Jリーグにとっては強大なライバル出現と言えるかもしれない。

前回の当コラムで大晦日、熊谷に高校サッカー選手権の試合を見に行った話を書いたが、JR高崎線の駅を降りていちばん目についたのは「ラグビータウン熊谷」のディスプレーだった。W杯日本大会のベニューにもなった熊谷市を「埼玉パナソニックワイルドナイツ」が本拠地に据えたのだ。

トップリーグ最後のチャンピオンチームの(群馬からの)移転は地元から最大級の歓迎を受けていた。ワイルドナイツはスター軍団だ。リーグONEは1月7日、国立競技場の開幕戦に「クボタスピアーズ船橋・東京ベイvs埼玉パナソニックワイルドナイツ」を組んだ。これはJリーグで言えば1993年サントリーステージ開幕戦、ヴェルディ川崎vs横浜マリノスに匹敵する歴史的デモンストレーションマッチになる予定だった。

それがコロナ禍で吹っ飛ぶ。ワイルドナイツの選手9人が陽性判定を受け、残りの選手も濃厚接触者と認定されたのだ。2022年1月は国内で本格的にオミクロン株が拡大した時期だった。準備万端整っていた国立競技場にバラシが入る。1月の試合でわざわざナイターを組んだのは花火等、ショーアップに予算をかけたからだ。

というわけでリーグONEは非常に地味なスタートを切った。開幕戦が飛んで地上波の中継がなくなったのも大きい。Jスポーツがディビジョン1、ディビジョン2の中継を組んでいたが、これはJスポーツを契約していない人にとっては無いのと同じだ。これはつまり、元からラグビーのコアファンだった層にしかリーチしてないということだ。ディビジョン1は「1試合あたり1万5千人」の観客動員を目指し、2023年までに1万5千人以上収容のスタジアムを確保するよう努めることになっているが、(オミクロン株拡大の影響はあったにせよ)スタンドはガラガラ。はっきり言って苦戦している。

 

■現在地を知るべくディビジョン2を観戦

僕はラグビー自体も大好きで、毎年カテゴリーを問わず(下部リーグのトップイーストまで手を広げたりして)観戦してきたのだが、今月は新装「リーグONE」を可能なかぎりウォッチしてきた。それはJリーグ好きとしての目線だ。僕は2003年のラグビー・トップリーグ旗揚げも『週刊サッカーマガジン』の連載コラムで取り上げている。別の競技、別のリーグ運営、会場運営が興味深いからだ。比較対象があることで逆にJリーグの長所短所が見えてもくる。だからこの原稿は「Jリーグ好きの目を通して見たリーグONE」だと思ってほしい。

僕がリーグONE開幕節、見に行ったのは祝日の1月10日、秩父宮で行われた「三菱重工相模原ダイナボアーズvs花園近鉄ライナーズ」だ。ディビジョン2を選んだ。交通アクセスが良く、ラグビーが近い(陸上トラックのない)秩父宮の魅力は依然として突出している。それからもうひとつ、新リーグが何をしたいかディビジョン2の方がわかる気がしたのだ。

リーグ構想が立ち上がった2019年、当時、日本ラグビーフットボール協会副会長だった清宮克洋氏は「JリーグやBリーグのような地域密着のクラブを中心としたプロ化」という打ち出し方をしていた。全選手のプロ化である。(トップリーグ時代に流れが始まっていたが)海外のスター選手もどんどん呼び込むことになる。誰もがジーコやリネカーやリトバルスキーのいたJリーグ旗揚げ時を連想した。ついにラグビーが企業スポーツを脱するときが来た。

しかし、完全プロ化案はあっという間に骨抜きにされる。同年12月の新リーグ準備委員会で一部の参加予定クラブから不賛成、反対等の意見が出される。従来通り、プロアマ混在が維持されることになる。結局、リーグのプロ化、クラブの法人化も見送られ、選手も「社員兼務」可に落ち着く。妥協に妥協を重ねたような感じだ。正直言って外部からはどこが新しいのかよくわからない。

僕の見に行ったディビジョン2は全6チーム。上位3チームはディビジョン1との、下位3チームはディビジョン3との、それぞれ入れ替え戦にまわるという、何というか流動的な(?)リーグだ。ここはディビジョン1へ上がるつもりで強化費を組んだかどうかで、見え方がだいぶ違う。僕の真後ろの席に関西からライナーズを応援に来た女性(コアファン)が2人座って、ずっと愚痴を言いながら、それでも熱をもって応援していて、あぁ、近鉄はそんなにお金使えないんだなぁ(気持ちで補うんだなぁ)と微笑ましかった。ちなみにラグビーは観客席に応援チームのゾーニングがない。どのエリアでも敵味方混在、呉越同舟なので、こういう風に相手ファンの空気感が直にわかるのだ。

 

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